はむさんど

小説を書いて純文学新人賞に投稿し、落選している

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罰当たりの娘

文學界新人賞で一次落ちした小説です。

    • 罰当たりの娘 4(文學界一次落ち)

       美幸ちゃんに無視され、他のクラスメイトには触れない方がいい人として扱われるストレスを、梓は食べることで発散するようになった。学校帰りに買い込み、部屋でこっそりと食べる。もともと、太るからと我慢していたから、すぐに歯止めは効かなくなった。 「あずちゃん、ちょっとふっくらしたね」  ある日母は、リビングでくつろいでいた梓に言った。  梓は動揺した。動揺の後に襲ってきた感情は、梓の気持ちも知らずそんなことを口にする母への怒りだった。そういうこと言わないでよ、と言った声はうわ

      • 罰当たりの娘 3(文學界一次落ち)

         梓の進学した中学校は小学校からそのまま進学した子が多かったから、美幸ちゃんがいなくても孤立することはなかった。それなりに新しい友人もできた。部活には入らなかった。運動は苦手だし、絵を描くのも裁縫も得意じゃないし、楽器にも興味がなかった。毎日、ホームルームが終わって教室の掃除が始まり、部活に行く前の時間を持て余す生徒たちでごった返す廊下を抜け、真っ直ぐ家に帰った。  梓の母は梓が物心つく頃にはパートで、梓が大きくなってからはフルタイムで働いていた。母が帰ってくるまで、梓は毎

        • 罰当たりの娘 2(文學界一次落ち)

           岡田さんは朝から不穏だった。朝食後からずっと、しわくちゃの顔を歪ませ、おかあさん、おかあさん、と呼び続ける声が止まない。  数日前に同じ看護職員の谷増さんが辞表を出したと噂を聞いた。谷増さんは梓よりもずっと長く勤めているベテランの職員で、梓が働き始めた頃の指導担当だった。辞めていく職員は珍しくないのに、いつもその瞬間は驚く。しかし、どんなに重宝されている職員でも、辞めてしまえば不思議とそれなりに仕事は回っていく。辞めた後彼女がどうするのか、梓はもちろん知らない。梓はすぐに

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          罰当たりの娘 1(文學界一次落ち)

           子供の頃、走る車の窓からモナカアイスを捨てた。  その日は珍しく梓と父だけだった。梓は後部座席で、忙しなく流れていく窓の外の景色を眺めていた。日差しの強い、真夏の暑い日だった。アイス食べるか、と父が言ってコンビニに車を停め、梓はアイスケースの中から普段なら選ばないモナカアイスを選び、一口食べた瞬間にお腹がいっぱいなことに気づいて途方に暮れた。  食べられないこれをどうしようかと逡巡しているうち、アイスは手の中でじわじわと溶けていく。運転席の父は鼻歌を歌いながらフルーツ入

          罰当たりの娘 1(文學界一次落ち)

          すばる新人賞落選!

          という見出しを見て5人くらいはニヤニヤできるのだろうなあ。羨ましい。 落選しました。最終候補の電話がなかったので。そもそもそんなことに期待をしていたことが恥ずかしくなってくるわけだけど、期待していました。着信にドキドキしたり、小説の内容が職場に知れたら大丈夫だろうかなど心配してここ二週間を過ごしていました。 こんなことをもう何度も続けてきました。長いスランプを経て書き上げた前作が文學界新人賞の箸にも棒にも掛からなかった時は、もうそれはすごい落ち込みでした。でも何故でしょう。今

          すばる新人賞落選!