ベリーショートトリップ〜たまにどこかに行っている〜
18 春立ちて天狗に出会ふ(つづきのつづき)
一週間後、版画の下絵があがり、無心で板を彫っていた。
彫り作業は、何も考えずに、ただ手を動かし、木板に没入する。
机にかがみながら5時間ほど彫り続けると、首から肩腰がバキバキに硬直し、翌日にはひどい頭痛が起こる。像が現れるまでかなり時間を要するため、彫っている最中は自分が今何をしているのかわからない、そんな状態になっている。
3時間ぐらいを超えた頃、首が下向きに硬直したまま起こせなくなって我にかえった。彫りに夢中になっている間、