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波 紋

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今度こそ本当の波紋
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2021年6月の記事一覧

ベリーショーットトリップ〜たまにどこかに行っている〜

4 梅雨時に迷う感 (梅雨に入ったのだろうか)。 向かいの家には雨樋がなく、直接雨が側溝に滴り落ちる。ポチャポチャ、ピチャピチャ、絶妙な音を奏でていて聴きあきない。どこかに出かけようと考えていたが、どこも思い当たらず、軒先に椅子を出して座り、雨空を眺めていた。 上空にジェット機が一機、西へ向けて飛んで行く。 雨の中、アゲハ蝶が一頭飛んできて、伊予柑の鉢植えにとまった。 やはり、今日はどこにも出かける気がしない。それはどうも雨だからではないらしい。 そういえば、最近迷

学ぶのが先か、旅に出るのが先か

やっぱり新幹線はいい何年ぶりかに、新幹線に乗る。 夏の足音が大きくなるのとは逆に、近ごろ私の懐は寒風吹きすさぶので、移動手段はもっぱら、LCCあるいは、高速バスに慣れきっている。 昭和30年代生まれの父に、ZOOMという文明の利器はおそらく難しかったのであろう。 新幹線代を出すからと、条件付きで、実家の経営する会社の支社がある埼玉まで足を延ばすことになった。 鳴かず飛ばずのライター業なんてものを初めて、そろそろ2カ月。仙台と片田舎の往復にも慣れてきたが、やはり死活問題

ベリーショートトリップ〜たまにどこかに行っている〜

3 霧蛍 ホタルのシーズンは6月。 七十二侯の「腐草為螢(くされたるくさほたるとなる)」は6月10日から15日とあり、そろそろ出始めてもおかしくはない頃だ。 夏のイメージが強い蛍だが、小川などにたくさん乱舞する姿が見られるのは6月下旬の、しかも幾つか条件の整ったの数日でしかない。その日に出くわすかどうか、毎年機運を占うような気分で出かける。 ここのところ日中の気温が高く、もしや今年はその日が例年より早まるのではという予感が日に日に積もり、下旬を待たずして、もはや行ってみない

タラの芽

 春になったら、山菜を一回くらいは自分で採ってきて食べる。青臭くて、野性味があり、すごく美味しい。  自宅の駐車場の土手に、タラの木が二本生えているが、なぜかいつも一本は枯れている。  毎年、芽が出るのを楽しみにしているが、今年は気が付いた時には、伸びて葉っぱが広がり始めていた。もう棘が硬くなっていて食べれないなと思って諦めた。  次の日の夕方、仕事帰りにもう一度土手を眺めた。  棘の無い、僅かな節みたいな所を素手で強く抓み、木を引き寄せて、芽の棘がまだ硬くない事を確

ベリーショートトリップ〜たまにどこかに行っている〜

2 山中の悪行 自宅から車で10分ほどのところに標高200m足らずの低い山がある。その山中にトレッキングコースが敷かれていて、夜勤入りの日など、特に用のない日の午前中に行っては、約1時間ほど、ひとりただ歩いている。アップダウンが丁度よく、人知れず咲く山野草や木々の移ろいを愛でる楽しみとが相まって、この習慣はかれこれ数年続いている。 平日の山中をひとり歩くのは少し心細さもあるが、ある程度道が整備されており、手ぶらで気軽に歩けるから、トレッキングと言うほど大げさなものではない。