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脱サラ風俗業者爆誕③

 私がソープランドで働き出した次の日。出勤早々、店長がざわついている。どうやらもう一人の従業員が飛んだらしい。昨日、ほんの少ししか顔合わせしてないので、彼がどんな人間なのか全くわからない。店長の話によると彼はギャンブル癖があり、野球賭博にハマっていたそうだ。借金が500万くらいに膨らんだところ、ここで一発当ててやる、とデカイ勝負に挑んでみたものの、見事に負けてフライ・ハイ、といった状況である。後から知ったが野球賭博というのは言い値で賭けて後日精算だそうだ。だから飛ぶ奴が多いと。

──おいおい、休めねぇじゃねぇか。

 心の中でそう思ったのも束の間、店長の様子がおかしい。さっきから一人でブツブツ何か言ってるし、あまり呂律も回ってない。地元の同級生でもこんな症状のヤツが一人いた、薬物中毒者だった。店長も・・・恐らくそうだろう。

 不安の中、社長が店に現れた。

「おい、お前ちょっと来い」

 店長が呼ばれた。社長は何やら怒っている。そして店長と何かしら口論している。ヤバイ、何かヤバイぞ。すると、店長がいきなり財布を片手で持ち、店の外に歩き出した。

「オレ、辞めます」

 それだけ言うと、店長は瞬く間に我々の視界から消えた。

「ほ~、アイツ、辞めよったなー」

 超軽い反応で社長がつぶやいた。従業員も一人飛んで、店長も辞めてその反応?

「じゃ、今日からはーもが店長だな」
『えぇー!僕今日でまだ二日目ですよ!』
「冗談だよ。とりあえず今日は俺が店内に入る。明日からは系列からヘルプよこすよ。だから今日でひととおり仕事覚えてな」

 という事で、従業員と店長が飛び、まだ二日目の私一人になったこのお店。一体どうなるのか。そもそも社長が店内の仕事できるのか?と思ったら社長はどうやら叩き上げらしく、いち店員からオーナーに昇り詰めたとの事。これなら安心だと思ったのも束の間、現場を離れて長い社長の仕事っぷりはめちゃくちゃで、私はかなり振り回された。昨日の楽っぷりが嘘かのように忙しく、大量の汗をかいた。

 実際に店内業務に入って客と接してみると、客はどれも無理難題言ってくるムカつく奴らばかりだし、働く女の子もワガママだったり不思議ちゃんばかり。そして、捌いても捌いても客が大量に流れ込んでくる。溢れた客は他店に回さないといけない。これがソープランド。いや、この街のソープランドの実態か。

 いい意味で洗礼を受けた私は、徐々にこの風俗という仕事の魅力に取り憑かれていく。後にサラリーマンを辞め、本格的に風俗プレイヤーとなった。脱サラ風俗業者の闘いは、これから始まっていく。

(いつか続く)

にふぇーでーびる!このお金は大切に使います!