『B計画(ビー・プラン)〜彼の住む星〜』

『B計画(ビー・プラン)〜彼の住む星〜』作 すがの公

<あらすじ>宇野には計画があった。ただ妻との普通の幸せを願っていた。しかし、その完璧な計画は彼女の失踪により破綻した。彼女の消息を追い始めた宇野は一枚の絵を見つける。そこから繋がる、自称宇宙人たちの組織と"彼"と呼ばれる謎の人物の『B計画』。なぜ妻はそこにいたのか、計画とは何か、"彼"とは誰か。宇野は作りかけのマンションの一室で行われる彼らの集まりに潜入する。はじめは自称宇宙人たちの異常な行動に困惑するが、ある光景を目にしたことで宇野は激昂し強行手段に出る。彼らは一人、また一人とその重い口を開き始める。

■舞台

建設途中の3LDKマンションの一室。
403号室になるはずだった場所。
舞台はリビングになるはずの場所。
不安にさせる灯り。作業灯。建設資材。鉄筋、
タイガーボードの床材、断熱材、ベニヤ、コンパネ。
電動ドリル。カッター。足場、網。ブロック。転落防止ネット。
つり下げられた業務連絡用スピーカー。
その場所からさらに広がる空間。
上手に続く、ダイニングキッチンになるはずの場所。
下手に続く、寝室になるはずの場所。

■第1場僕の計画

書記、上手からで火のついたろうそくを持って登場する。
舞台前の男の前までゆっくりと歩いてゆく。
男の前に置き、退場。

ろうそくに照らされて、浮かび上がる宇野。
スーツに白ワイシャツ、ネクタイ。椅子に座っている。
ネクタイは緩み、胸元がはだけている。
無造作に捲られた袖。時計。結婚指輪。無精ヒゲ。
宇野、真剣にチェックシート(下敷きつき)をしている。

宇野:たまに作業に集中できない。
感情表現が苦手である。
動きが緩慢だといわれる。
仕事が遅いと言われた事がある。
大きな夢がある。
普段、人と話をしない日がある。
空想が好き。
生き生きとした表情をしている。
集団になじめないことがある。
突発的な状況の変化に対応できない。
自分は疑い深い方だ。
たまに支離滅裂なことを言う。
計画を立てるのが好きだ。
、、、、、、、計画、、。

宇野、手を止める。

いつの間にか聞こえている雨の音。
SE建設現場のビニールシートにあたる雨の音
サーーーーーーーーーーーーーーーッ

宇野:、、、、、。

薄ぐらい照明舞台全体を見せる。
誰もいない建設現場。

テーマ曲しずかに聞こえてくる。不思議な照明。
議長、女性、書記登場。顔は見えない。

議長:「彼の計画」をつぶそうと、ありとあらゆる手段を講じてきます。
宇野:そんな事僕には関係ない。
議長:我々はよく地球人が作るような新興宗教やオカルト集団の類いではありません。
この星に必要な「彼の計画」を進めるための組織です。
宇野:そんな事、僕の計画とは関係ない。
議長:忘れてください。
宇野:簡単に言わないでくださいよ。
議長:お引き取りを。
宇野:、、君はそれでいいのか。
女性:私は「彼」に従います。
宇野:出たよ、「彼」。
議長:これ以上「彼の計画」を妨害するようなら我々にも考えがあります。
宇野:僕だって同じだ。

宇野、ろうそくを持ち、立ち上がる。

宇野:僕の計画なんだ。

舞台正面を向く。

宇野:「彼」だかなんだか知らないけど。
君らの壮大な計画には、足元にも及ばないんだろうけど。
僕の完璧な計画なんだ。
、、彼女が必要なんだ。
僕の計画には彼女が必要なんだ。

ゆっくりと、ろうそくを上にあげ、降り降ろす。
その拍子に消えるろうそくの火。
テーマ曲、じょじょに上がり、照明変わる。
夜空に瞬く満天の星、広がる宇宙。彼女の空。
無くなった計画。
暗。

録音による宇野の声

『子供は2つ違いで二人。男の子でも女の子でも健康ならどっちでもいい。
名前も4つ用意してる。双子だったらまた考える。
今は共働きだけど彼女には子育てに専念して貰う。
週末は家族サービス。公園やキャンプやピクニック。
たまには会社に疲れた僕と育児に疲れた彼女の二人で温泉にでも行く。
子供はどちらかの両親に預ければいい。
月曜日。僕はまた家族のために会社へ行く。普通の幸せ。
僕を迎えるあったかい家庭。
僕の完璧な計画。
僕には計画がある。
僕には、誰にも負けない計画がある。
、、、、、、、、、、、、。
彼女に子供が出来た。
僕の計画通りだ。
、、、、、、、
ひとつだけ計画と違ったのは、
彼女が「宇宙人の子供が出来た」っていった事だ。』

曲消える。

■第2場ミイラ

舞台奥から探偵の声(探偵=書記もしくは議長)

探偵:潜入なんてバカな事やめた方いいですよ。

探偵の声でサス、宇野のみを照らす。
宇野、冒頭とは違い、スーツ上下ネクタイ。きちんと着ている。

探偵:あっちは新興宗教みたいなもんです。しかも宇宙人。
なめてかかるとえらい事になりますよ。
宇野:いざとなったら、僕も男です。
探偵:いやいや。そういう意味じゃありませんよ。
宇野:、、どういう意味ですか。
探偵:「気をつけないと呑まれる」という意味です。
宇野:呑まれる?
探偵:私も探偵という職業柄、そういう団体に潜り込んだりします。
その度思うんです。やつら言ってる事正しいんですよ。
宇野:頭のおかしい連中の言う事でしょう。
探偵:逆です。逆。あっちにしてみれば、頭がおかしいのは私らです。
あっちの言い分を理解できない私らが間違ってるんです。
宇野:そんなはずない。自分らを宇宙人だと思ってる連中だ。
探偵:いいですか?
「左の頬をぶたれたら、右の頬をさし出す」か、
「目には目を歯には歯を」とやり返すか、
それとも「相手を憐れんで愛してみようとつとめる」か。
まともな宗教比べたって、言ってる事バラバラなんです。
それでもたくさんの人がそれを正しいと思って信じてる。
本人は本人の考えのもとで自ら進んで呑まれてる。説得なんて無理です。
宇野:僕には説得できる自信があります。
僕なら、彼女を理解できる
探偵:理解しようとしたら呑まれます。正しいんですから。
宇野:僕はそんなものに騙されません。
探偵:知ってます?催眠術はかかるものかと思えば思うほどかかりやすくなるんですよ。
宇野:、、、、、、。
探偵:ミイラ取りがミイラになりますよ。
私の見たとこ、あなた呑まれやすいタイプだ。

■第3場宇宙人

書記、マッチをつける。
マッチの火、途中で消える。

宇野:あ。

作業灯による明転。
ろうそく、書記の席の回りに5、6個。鉄の受け皿。
近くにポリタンク。
書記の前に机のような物。舞台に宇野、書記。

書記:、、、、、、、、、、、。
宇野:、、、、、、、、、、。

書記、マッチをつける、ろうそくの所行く前に消える。
書記、マッチをつける。落とす。消火。

宇野:、、、、、。

書記、最後の一本。緊張。構える。

書記:、、、。

宇野、見てられなくなる。

宇野:僕やりましょうか!
書記:、、。
宇野:もうなんか見ていられなくて。
最後の一本じゃないですか。それ。

書記、マッチを渡す。

宇野:じゃ。
書記:、、、。
宇野:よし。

思い切りよく着火。失敗。

宇野:、、、、あ。
書記:、、、。
宇野:、、つけなきゃ駄目ですか、火。
書記:(凝視)
宇野:すみません。あ。

一本落ちてたマッチ発見。

宇野:本気で緊張しますねコレ。

着火。成功。ろうそくに灯る火。

宇野:よし!やりました!

ガッツポーズする宇野。無反応な書記。

宇野:、、、あ、そんな騒ぐ事じゃないですね。
書記:、、、、
宇野:全部、つけましょーか。
書記:、、、、、、
宇野:つけますね。

全てのろうそくに火を灯しはじめる宇野

宇野:しかしまた随分とおかしな場所に集まるもんですねぇ。
もうすぐ雪も降るってのに。
あ、雨に当たりませんでした?今日夜中から雨だそうですよ。
場合によっちゃ雪になるそうです。

書記、会話を無視し転がっていたポットを持って退場。

宇野:僕、初めてなんですよ。この集まり参加するの。
集まりって言うんですか?あ、会議?
夜中にろうそくなんてつけてると雰囲気ありますね。
あ、申し遅れました。僕、、、宇野って、、、。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、くそう。
逃げたか。、、無口な宇宙人め。

ポケットからメモ用紙。

宇野:、、、、ここだ。よりによって403号室。
明らかに不法侵入だし。
確信にせまってきたって感じだな。
あ、いまのうち。

内ポケットの中から録音機。

宇野:ばけの皮、剥いでくれるわ。録音開始。ピッと。
えー、11月11日夜11時
建設途中のマンション、403号室になるはずの部屋。
、、、、ろうそくが、5個。
えー、何かの儀式が行われる模様ー。
ふん。怪談話するわけじゃあるまいし。
十分明るいじゃないか。
おっ、なにやら書類のような物発見。

舞台上にある、書類のような物の束に手をかける。と、
作業灯消える。ろうそくの灯りのみとなる。

宇野:え?、、うわ、、、、停電?、、、参ったな。
えー、なんの前触れも無く、停電。
幸い、無口な宇宙人のろうそくにより、真っ暗闇ではない。
、、、まさか、予測ずみ。なにせ、相手は、、宇宙人だからな。
そんな事より、ろうそくの灯りが恐ろしい。
あのーーーーーーあのぉーーーーーさっきの人ー。
あのー、ブレーカーとか、、、。
これはもしや部外者を追い返そうとする作戦か?
なにせ、相手は、、宇宙人だからな。
、、、、正体がばれた?とか。
いやいやいやまだ何もしゃべってない。
!!はっ、、、しゃべってないのに、ばれた。とか。
なにせ、相手は、、宇宙人。心を、読まれた?
いやいや、あまり考えちゃ駄目だ。
深く考えると、こいつらに呑まれる。
あの探偵も言ってたじゃないか。のんきにいこう。
大丈夫大丈夫、歌でも歌おう。
*******歌**********
だめだ、こんなのしか思いつかない。でも、大丈夫。平常心。

SE足場を歩く音
カシャン、カシャン、カシャン、カシャン、、

宇野:恐い!恐いんですけど!

女性走って登場、ろうそくの灯りを全部消す。全暗。

女性:ふ!ふ!ふ!ふ!ふ!
宇野:ああ!なんて事!おまえ誰だ!誰だった?!
おまえ誰だったんですか!す、姿を現わせ!姿を!

女性、大きな懐中電灯で自分の手を照らす。

宇野:手!恐い!!手だけ!恐い!

女性、サーチライトのように照らしまくる

宇野:まぶしい!ごめんなさい!ごめんなさい!
ごめんなさい!まぶしい!とける!いやあ!恥ずかしい!

女性、自分にの顔に色々な角度からゆっくり照らしながら。

女性:新聞記者。探偵。警察。雑誌記者。ジャーナリスト。ノンフィクション作家。小説家。
宇野:こわいこわいこわいこわいこわい
女性:劇作家。まんが家。興味本位。野次馬。中高生。ルポライター。ネタに困った。
宇野:違います違います!なんですか中高生って。

明。作業灯。

宇野:あ。ついた。
女性:接触悪いみたいなんですよ。
宇野:ああ。そうなんですか。良かった。
女性:良かったデスネー。ジロリ。

明らかに疑いの眼の女性。

宇野:ギクリ
女性:疑ってなんかないですぅ。
宇野:明らかに疑いの眼(まなこ)ですよね。
女性:そんな事ないですぅ。
宇野:こころ、こもってねぇ。、、。あ、あのう。
女性:ハイーナンデしょー。
宇野:聞いてもいいですか?
女性:あ、質問やめてください。すいませーん。
宇野:え?
女性:どーもすいませーん。はいごめんごめーん。

女性退場。

宇野:なんで?
ここは、質問、しちゃだめなのか。は!

宇野、手帳を見る。

宇野:バレたくない人のための潜入心得。
一つ。「おかしなルールに慣れろ」
なるほど。経験者はかく語りき。頼りになるなぁ。あの探偵。
よし、手がかり探索。積極的に行こう。

さっきの書類に手を伸ばす。
と、書記が戻ってくる。
宇野、ごまかす。

宇野:あ!う〜〜〜〜ん。(伸び)あ〜疲れたまってんなぁ。目・肩・腰にきてんなぁ。あ〜。
書記:!?

書記、消えてるろうそくに気付く。
宇野をにらみつける。

宇野:え?
書記:、、、、。
宇野:あ、ろうそく?違います違います!僕じゃないです!
書記:ぼそぼそ。
宇野:はい?
書記:ぼそぼそぼそぼそ。
宇野:もっかい。
書記:ぼそぼそぼそぼそぼそぼそ。
宇野:、、、、、、、、、、。
書記:ぼそぼそぼそぼそ。

マッチがもう無いという説明。

宇野:、、、あー、はい。わかりました。はい。

マッチの空箱を地面にたたきつけ、退場。

宇野:!!、、すみませんでしたー。
、、、、、、、、。
はー。何言ってんだかさっぱりわからん。
やっぱ、おかしな人ばかりいるんだろうか。
早いとこ、手がかり見つけよう。

と、さっきの書類を手を取る。
女性登場、一喝。

女性:こら!
宇野:!!

ごまかす。

宇野:うーん。仕事仕事の毎日でなぁ〜。満員電車でゆられてるしなぁ〜あーしんどいなぁ〜。

女性、書類を取り返す。

女性:なにこれ。
宇野:、、、、ん?なんだそれ?わかんないっす。
女性:、、。チェックシートは?
宇野:あ、はい。やりました。

冒頭でやったチェックシートの紙を渡す。

女性:はい。じゃ、そこで待っててください。
宇野:あの、質問していいですか?
女性:駄目です。
宇野:わぁ。

女性、退場しようとする。途中で思いつき、

女性:あ。

書類の束を舞台のすみによせる。

宇野:、、、、。

女性。バリアーを張る。

女性:こっからこっちは入らない事。
宇野:、、、はい?
女性:バリアー。
宇野:、、。
女性:見えない奴。
宇野:、、、、、、、、、、。

女性退場。

宇野:、、、おかしな人だ。
、、なんか面白くなってきた。

書記登場。マッチ一本持ってる。マッチ箱を探す。

書記:、、、、。
宇野:お。あったんですか、マッチ。
書記:、、、、
宇野:何探してますか?
書記:ぼそぼそぼそ。
宇野:あーなるほど。聞こえない。
書記:ぼそぼそぼそぼそ。
宇野:あーでもわかりました。マッチ箱ですね。さっき自分で投げ捨てた。
はい、こちらに。こちらにございます。

書記、マッチをする。

宇野:お礼も言わずにすって、そして、

火つく。消える。
女性登場、様子を見ている。

宇野:無駄にする、そして、

床にマッチの空箱をたたきつける。

宇野:やつあたりー、にらみつけてー、退場ー。すみませーん。

書記退場。

宇野:うん。慣れてきた。

女性:ちょっと!何したんですか今!
宇野:あ、
女性:怒ってるじゃないですか?
宇野:あのさー。質問していい?
女性:駄目です!
宇野:なんで?
女性:質問されるとあたしアレなんです。
こっちの質問に答えてください!
宇野:やだ。フェアじゃないもん。
アレって何?質問したらなんなの?ここのルール?君だけ?
女性:そんなにいっぱい質問して!答えればいんですか?質問にあたしが!
答えるよ答える!答えりゃいんだべ?!
いーよわかったよじゃあ答えるよ!どうなってもしらないよ?
宇野:わかったから答えてくださいよ。
女性:わっかんねぇ奴だな。
パフェ袋に詰めて持って帰ってそれっきりだ。
女性:おめーにはヨーグルトとたくわんしかねぇのか!
宇野:、、、、、、え?
女性:だからァ〜!あんたが産まれたときにはとっくにAまで行ってたよ
ガーってかっこむよ。案外必死でかっこむよ。何もかも。
宇野:あの、、
女性:そんな目で見るなよ。だきしめんぞ?野グソ野郎。
すまん。謝る。この通りだ。ブタ。サル。トリ。ブタ。
お国のためだ。死んでこい。
死んでワカメになったれらホイ。もい。ぼい。
宇野:あのー。
女性:彼女はしばしば、支離滅裂な事を言う。
She often speak unreasonable(アンリーゾナブル)。リピート。
宇野:あ、シ、シーオッフンスピーク
女性:はいはいお世話様、あたしにはサングラスがお似合いですよ!
この前だってザラザラーって米つぶかけて来るからさぁ、
どっちがお姉ちゃんでどっちがお父さんですかったら
「さーさぁカカトで笛でも吹いたらどうですか」って、ばーか。
とっくの昔にやってます!あたしホネホネの産みの親だよ?
もーまるで数学。あたしバラだわ。ね?
宇野:あのー、
女性:ああああ(怒り)!また大事な奴あれだ!!
えい。ちっちゃいバリアー。

ちっちゃいバリアー張って女性退場。

宇野:、、、。
問題は、おかしな人ばかりで、
まともな人がいないって事だな。

議長登場。

宇野:あ。
議長:あ、どーもお待たせしてすみません。
宇野:お。
議長:寒いですか?
宇野:あ、いや大丈夫です。
議長:なんかねぇ、天気予報によると雨は夜更けすぎに雪へと変わるだろうって
宇野:ああ!はいっ!
議長:もうすぐ来ると思いますから楽にしててくださいね。
ま、最初だから緊張するでしょうけど。
あ、ほんと寒かったら言ってください。
でもこんなとこですからたいした暖房設備ないですけど。
宇野:あ、いえ、ありがとうございます。
議長:変わってるでしょう皆さん。
宇野:ええ。
議長:そのうち慣れますよ。
宇野:もう、だいぶ慣れました。
議長:私結構かかりましたけどねぇ。
おかしな人ばかりだから。
宇野:覚悟はしてきたので。
議長:頭おかしいだろうって?
宇野:あ、いや、そこまでは。
議長:あれ?灯油あったかな。

バリアーのなかのポリタンクに向かう議長。

議長:バリバリ!いって!
宇野:、、え
議長:誰だバリアー張ったのお!!おまえか!?
宇野:違います!
議長:誰だバリアー張ったのお!こんなとこにポンポン張るんじゃねぇよバリアー!
私じゃなかったら死んでるぞ!子供いたらどうすんだこれぇ!
ねぇ?!
宇野:はい!
議長:ったく。ガニメデさん!
宇野:?
議長:ガニメデさん!
宇野:がにめで?

書記、マッチ一本持って登場。

議長:やめてくださいよ危ないから。
書記:ぼそぼそ
議長:とぼけないでくださいよ。ガニメデさんでしょ?バリアー。
宇野:聞こえるんだ。
書記:ぼそぼそ
議長:得意でしょガニメデ星人!バリアー張るの!
火もおこせないくせに!
書記:ぼそぼそ
議長:だって他にいないでしょーが宇宙人。あの女まだ地球人だもの。
書記:ぼそぼそ
議長:聞こえない!
宇野:え?
議長:そやってぼそぼそしゃべるなよあんたは!
宇野:聞こえない時もあるんだ。
書記:ぼそぼそ
議長:それはわかる
書記:ぼそぼそ
議長:うん
書記:ぼそぼそ
議長:うんうん。
宇野:何しゃべってんだろう
書記:ぼそぼそ
議長:えええ?!
宇野:?
議長:まだ地球人なのに?!あの女?
宇野:?まだ?
書記:ぼそぼそ
議長:へー。ちょースゲー。そんなん赤飯じゃん!
あ、でもあまり褒めるとだめか。
地球人すぐ調子にのるもな?
書記:ぼそぼそ
議長:チョーうぜえよ。地球人。そう思いません?
議長:私、タイタン。土星の。行った事あります?
宇野:いえ。まだ。
議長:なんもないけど。空気がいいだけ。ド田舎で。夜まっくらよ。
書記:ぼそぼそ
議長:あー。ね。思ってたより都会だよね。地球。
地下鉄あるもんね。
宇野:あ、はい。
議長:で。星どこ?
宇野:星?
議長:うん。まさか地球人じゃないでしょ?その顔で。
宇野:え?
書記:ふっ。
宇野:あ。笑った。
議長:どこ?
宇野:、、、、、金星です。
議長:金星?
宇野:、、はい。、、、。

沈黙、緊張。

議長:近いじゃんー。
宇野:良かった!
議長:負けたねぇガニメデさん。一番近かったのにねぇ?水金地火木土。
宇野:や、やったぁ。
議長:この人ガニメデ人ね。木星の衛星。
バリアー得意。でも火おこせないけど。うえーい。
書記:ぼそぼそ
議長:金星結構でかいよねぇ。地下鉄走ってるもんねぇ。
私一度行きましたよ。どのへんですか?
宇野:え。、、えーと。
議長:うん
宇野:あの、、街の方です。

沈黙。緊張。

議長:金持ってんだー。家賃高そーだ金星。
あ、そろそろ準備しましょっか。歓迎式。
あ、あなたは座っててください。主役ですから。
宇野:あ、どうも。

書記、退場する。議長、退場しかける。

議長:寒かったら、言ってください。
議長:あ。金ちゃん。
宇野:え?
議長:金星だから。
宇野:あー。
議長:ここはどうやって知りました?
宇野:、、あの、「絵」です。
議長:あー、あの絵か。

議長退場間際にちっちゃいバリアーにかかる。

議長:バリバリ!いって!ちくしょ!ちっちゃいバリアー!
見えない奴張るな!なんでも出したら出しっぱなし!

議長退場。

宇野:、、、

■第4場2枚の絵

探偵の声。宇野に照明。

探偵:デジタル化された画像ってのは、だいたい他に情報をもってます。
例えば、作成日とか、どんなソフトで作ったかとか。
つまり、画像のなかに他の情報を埋め込む事も可能だって事です。
宇野:それがどうしたって言うんですか。
探偵:この絵、見覚えあります?
宇野:いや。
探偵:これ、なんて言ったっけなぁ、チョークみたいな奴で描く。クロッキーじゃないし、、。
宇野:、、パステル画。
探偵:それそれ。詳しいですねぇ。絵描かれるんですか?
宇野:昔の話しです。僕の話しはいいですから。
探偵:私描くのは駄目ですが、観るのは好きなんですよ。
黒髪の女性に羽が生えてる。頭に輪。これは天使です。
足元の丸いのはたぶん地球です。爆発してる。戦争かな。
ロケットで逃げ出して向かうのは宇宙。
これ土星ですかね。でも人間の目にも見える。
黒い天使から血が流れて大地におちて、その血から花が咲いてる。
その向こうには海。水平線には船。でもこれも軍艦です。大砲を撃ってる。
どうですか。その美的センスで観て。
宇野:どうって言われても。
探偵:思った事、言ってみてください。
宇野:、、、無機質というか
探偵:でしょう!?私もそう思ったんです。
なんというか、人間が描いた感じがしない。
少なくとも普通の主婦が見てて楽しい絵じゃない。
なのにこの画像、奥さんのパソコンから出てきました。
宇野:、、、、、、。

曲聞こえてくる。
舞台奥に浮かび上がる『天使の絵』

探偵:怪しいと思って。
長年探偵なんてやってるとハナが利くようになるって本当ですね。
解析にかけたら画像のなかにある情報が出てきたんですよ。
宇野:結論から言ってください。
探偵:秘密のホームページです。
宇野:ホームページ?
探偵:「自分は宇宙人だ」という人間の集まるオカルトサイト。
宇野:、、宇宙人。
探偵:東京本部、大阪支部、福岡仙台北海道。宇宙人は日本にこんなに居たんですねぇ。
まぁ、新興宗教みたいなもんですよ
さっきのメモ。

宇野、メモをポケットから出す。

宇野:11月11日午後11時11分。、、住所。
探偵:そいつらはその時間、その場所に集まるらしいですよ。
宇野:、、このマンション。
探偵:建設途中のマンションです。近いっちゃ近いですね。
宇野:、、ここで、何をしてる。そいつら。
探偵:会議ですよ。
宇野:会議?
探偵:宇宙人が、次のプランを考えるんですって。
宇野:、、プランって、なんの。
探偵:『B計画(ビープラン)』

曲あがり、
舞台奥に『天使の絵』とクロスフェードする『シルクハットの男の絵』
女性登場する。

深く息を吸い込み、大きな声で読み上げる。
女性、大仰に両手を広げる。

女性:安心してください。
怖がらないでください。
この場所で起こった出来事や
この場所で発言された全ての言葉がきっかけとなり、
日常生活であなたが不利益を受けたり
危害が加えられたりする事はありません。
安心してください。
あなたの秘密が他人に漏れることはありません。
あなたが忘れろと言えば忘れます。
あなたが覚えて欲しければそうします。
あなたを否定するものはありません。

聞き入っている宇野。
議長、書記、椅子5つ、ポットとマグカップを用意する。

宇野:あの、、ここは、、。
女性:ここは「彼の計画」を進めるための場所です。
議長:ようこそ。
女性:地球時間、11月11日午後11時11分。
議長:あなたはもう、この宇宙に独りじゃない。
宇野:独りじゃない?
議長:ええ、「彼の計画」さえあれば。
宇野:、、僕は、、僕は独りだ。

『天使の絵』残る。
曲上がり、4人、椅子の前に立つ。
左から、議長、宇野、一つ飛ばして女性、書記。
4人座ると『天使の絵』、消えて行く。

曲、SE足場を歩く音とクロスフェードする。
カシャン、カシャン、カシャン、、カシャン、、、、

3人、中央の椅子に視線。
それに気付き視線の先を見る宇野。
照らされる中央の椅子。
現われない「彼」。

■第5場会議。

議長、椅子から立ちあがり、バスタオルとクッションを配る。全明

議長:用意していただくのは2つです。バスタオルとクッション。
まずクッションをふくらはぎの下に置きます。
そしてバスタオルをつまさきにひっかけます。
そしてゆっくり体重をかけて、ひっぱる。だいたい10秒が目安です。
交互に。皆さんやってみましょう。
宇野:、、、、。
議長:どうですか。じんわりと筋肉が動いていくのがよくわかります。
リンパ液というのは血液のように自分で流れていきません。
ですから普段筋肉を動かしてやる事でリンパ液の循環をよくしてやる。
リンパ管というのは体の全体を張り巡らされています。
エネルギーを燃焼する過程に出る老廃物を
腎臓にまで送る大切な役割を果たしているわけです。
この働きが良くないと体じゅうに老廃物が蓄積され、
セルロースの原因となったりもするわけです。
疲れやすい、しびれる、だるいのような感覚がある方は、要注意です。
どうですか。
宇野:あ、はい。気をつけます。
議長:これで足先にたまったリンパ液が腎臓の方へ流れていきます。
クッションを置く事で重力がリンパ液を流れやすくさせているというのがミソですね。
女性:なるほどー。
議長:しかし。見てください。リンパ液はこのままではどうですか。
このままでは、どうですか?
宇野:あ、えーとこのままでは、ここに溜まります。
議長:その通り!ここままではここに溜まって腎臓には届きません。
ですからこうクッションの上にあぐらをかき、そして体を前に倒します。
宇野:あの、
議長:やってみましょう。さんっはい。

4人やる

議長:はいこれでこの腰の後ろの部分がほぐれます。そして駄目押し。
今度は股間接を伸ばしつつ、一気に溜まったリンパ液をながしましょう。
はい、今度は足をカエルさんのように。はい、そして、後ろに上体を倒します。
この時も、どうですか?クッションの?クッションのおかげで?
宇野:クッションの高低差のおかげで重力が利用できます。
議長:その通り!なかなか呑み込みが早いですねぇ。
宇野:この前「あるなんとか大辞典」で観ました。
議長:、、、、、、、、。

起き上がる議長。

議長:、、、、。観たの。
宇野:はい。
議長:、、、。
宇野:毎週録画してます。
議長:、、、、、、。
はいゆーーーっくり前からぁこれを3セットー。
議女性:1、2、3
宇野:すいませんっ
議長:ん?
宇野:すいません。なんかお忙しい所。
議長:あ、いやいや、何?
宇野:新参者なので、ちょっと疑問に思った点、いくつか質問させてもらっても、いいですか。
議長:どうぞどうぞ。
宇野:何してんですかこれっ
議長:ん?何って。
宇野:この、運動とか。
議長:大事にしてんだよ。リンパ。
宇野:それはわかります。
議長:大切なんだよ?リンパ。
宇野:それもわかります。観ましたから。大事だなぁって思いました。
議長:じゃ、ほら、毎日少しづつの努力の積み重ねだから。
宇野:いやあの。
議長:何ごとも実践実践。ね。
女性:はい。
宇野:僕やってるんで。
議長:え?
宇野:毎朝。それと寝る前。
議長:あ、やってるの?
宇野:はい。
議長:すげーなあなた。どして?
宇野:いや、同じだと思います動機は。観たから。
議長:あー、一本とられたね私ー。
女性:はい。ふふふ。
議長:さっ。リンパも大事にした事だし。
次は「足痩せ美人のなるためのスクワット」。
宇野:あの!
議長:はいキンちゃん。
宇野:その呼び方どうにかなりませんか。
議長:どしたのキンちゃん。
宇野:歓迎会って、これですか。
議長:いえいえ、事前に行うリフレッシュ運動です。言わば、
女性:アペリティフ
議長:そーう。食欲を促すために食前に出す酒。もう一杯行きましょう。
女性:はい。
宇野:なんのために。
議長:地球人の体ってのはもろいもんですから、
日常のメンテナンスを怠るとあっと言う間にガタが来ます。
これから我々は当然の宇宙からの電磁波をダイレクトに受けるわけですから、
ベストコンディションで望まねばいけません。
宇野:、、あの、参加者ってこれだけですか。
議長:いえ。まだまだたくさんいますよ。
今日はたまたまこの人数です。それと「彼」。
宇野:、、「彼」
女性:今日は来るでしょうか、「彼」。
議長:来るでしょう。
宇野:あの、その人の他にはもう来ないですか。
議長:おや、誰かお知り合いでも?あ、もしかしてその人の紹介ですか?
宇野:、、あ、ええ、まぁ。
議長:金星の方ですか。
宇野:、、あの、宇野、って言う、、
議長:ウノ。
宇野:はい。
議長:そんな惑星ありましたか?
書記:ぼそぼそ
議長:あー!オモス系のウノス!地球から45万光年離れたとこの。ウノス星。そりゃ遠いとこから。
宇野:あ、違います!宇野です。名前です。
議長:名前?
宇野:はい。
議長:なんの?
宇野:だから、その人の。で、下の名前が、
議長:いやいや。名前なんか。
宇野:は?
議長:ねぇ。
書女性:(笑う)
宇野:あのー、言ってる意味が、ちょっと。
議長:この会議に遅刻して良いのは「彼」だけです。
「彼」以外の方については、この場にいないという事はつまり今日は来ない。そういう事です。
宇野:、、、そうですか、来ないですか。
議長:どうしました?
宇野:あ、いえ、、。
議長:面白い顔して。
宇野:普通ですっ。普通の顔です。むしろ真面目な顔です。
議長:気さくな人だなぁ。
宇野:なんでそうなるんですか。
議長:いやいや、そんなに歓迎会がやってほしきゃやりますよ。
宇野:言って無いですそんなこと。
議長:やりゃあいいんでしょう。ねぇ
女性:はい。
宇野:言ってません。
議長:それでは、本人があまりにも歓迎会をしろと言うので始めたいと思います。
宇野:びっくりするなあこの人。
議長:えー自己紹介から。仕方が無いので。
宇野:しかもくどい。
議長:本日、「彼」が来るまでの間は本日の会議の議長代理をつとめさせていただきます。
土星の衛星、タイタンから来ました。
地球時間で2年に一度、路面状況のいい頃を見計らって里帰りしてます。
宇野:もうおどろかない。
議長:えー、地球歴は10年くらいです。(礼)
書女性:(拍手)
議長:はい、次。
宇野:あの。
議長:はい?
宇野:お名前は。
議長:え?ああ、名前なんか。はい、次。
書女性:(笑う)
宇野:名前なんか?
議長:ええ。地球の名前でしょ?
書記:ぼそぼそぼそぼそぼそぼそぼそ。
ぼそぼそぼそぼそぼそぼそぼそ。
ぼそぼそぼそぼそ
宇野:はい。
議長:はい?
宇野:聞こえないです。
議長:なんで?
宇野:え?聞こえるんですか?
女性:はい。
議長:あー、金星人の
お、目覚ましい進歩だね。
女性:ありがとうございます。
議長:あれあれー?地球人の女に負けてるぞー?
女性:よしてください。照れるじゃないですか。
議長:耳をすまして聞いてください。
書記:ぼそぼそぼそぼそ。ぼそぼそぼそぼそぼそぼそぼそぼそぼそ。
議長:どうですか?
宇野:、、、、、*******************?
議長:ぶー。全然違います。正解は、
女性:**。
議長:です。
宇野:もっとしゃべってたじゃないですか。
議長:ガニメデ人は超低速語だからね。
宇野:ていそく?
議長:超高速語ってあるのは知ってますよね?その逆です。
宇野:知りません。
議長:知らないんですか?
宇野:はい。
議長:君、超高速語は。
女性:超は無理ですけど。
議長:じゃ普通の高速語でいいや。
女性:*!
宇野:え?
女性:*!*!
議長:*!
女性:*!*!*!
議長:*!*!
女性:*!
議長:ワン!わわん!
女性:わん!きゃん!
議女性:わん!きゃん!
女議:わっはっはっはは。
宇野:無理です!
議長:え?!楽しい会話だったのに!
宇野:どこがですか。最後犬みたくなって
議長:こんなに笑顔がこぼれてるじゃないか。
宇野:はー。
議長:あんがい金星は遅れてるんだねぇ。
宇野:すいません。
議長:仕方ない通訳してあげて。ごめん、ガニメデさん、もっかい。
書記:ぼそぼそぼそぼそぼそぼそぼそぼそぼそぼそぼそぼおそ。ぼそそそ。
宇野:、、、長い。
書記:ぼそぼそぼそぼそぼそぼそぼそ。ぼそぼそぼそぼおそぼそぼそぼそぼおそ
女性:「書記をやります。」
宇野:超低速語だもんな。
議女性:(拍手)
議長:はい、君。
女性:地球人です。最近アドマイヤーになりました。性別は女です。
名前は、
議長:ちっ。名前なんか。
女性:あ。すいません。
議長:なかなか地球の癖が消えないね。
そんなんじゃいつまで経っても星の記憶なんか戻りゃしないよ?
女性:すみません。
宇野:、、。
議長:今日はオブザーバーとして、参加ですもんね。
宇野:あ、は、はい。えー、えーと。(手帳)
全ての参加者はオブザーバーとして始まり
そこから素質や貢献度によって
アドマイヤー、ポテンシャラー、キャパシッター、
サブリーダー、グループリーダーなどランクが上がっていくシステムでありまして、
オブザーバーとは傍聴人の事であります。
のではい。
議長:おお。勉強してるしてる。でもまぁ、金星人ならすぐだよ。
どっかの女と違って。じゃ、あなた。
宇野:え、あ、はい。(女性が気になる)
女性:、、、。
議長:どしたのきんちゃん。
宇野:あ、あの、きんちゃって呼び方なんとかなりませんか。
議長:いいじゃない。
宇野:ええと、金星から、来ました。
議長:地球歴は?
宇野:あ、ええーと25年です。
議長:長いねぇ。
宇野:はい。
議長:星の記憶を取り戻したのは?
宇野:え?
議長:星の記憶。いつから自分が金星人だと気付きました?
宇野:あ、えーと、さいきんです。
議長:突然ですか?
宇野:えっと、はい。
議長:やっぱりねぇ。あれ不思議だよねぇ。突然思い出すんだよねぇ。
自分がどこから来たんだか。
勉強になるだろう。
女性:、、はい。
議長:私たぶん君はただの地球人じゃないかなぁと思うよ。
バリアー張れるくらいじゃ、ねぇ。
宇野:、、
女性:あの、何か飲みますか。
議長:いいよ今そんな事ー。
女性:すみません。
議長:そんな事より謝ってほら。
女性:あ。
議長:聞けばこの女、自分と同じ地球人の男だと思って散々失礼したそうで。
宇野:あ、いや、全然。
議長:そういうわけにいかないんです。
このB計画に参加させてもらえるだけでも、
この女にとっては光栄な事なんですから。
女性:すいませんでした。
宇野:いや、僕はぜんぜん。
議長:ガツンと言った方いんですよ。
この女、質問に答えられやしないんだ。
地球人でも最低ランクですよ。Gランク。
ほら、謝って。
宇野:あの、、
女性:すみません。
宇野:いや。
女性:すみませんでした。
宇野:いやいや。あの。
女性:すみませんでした。
宇野:うん、あの。わかったから。
女性:ありがとうございます。
議長:良かったじゃないか。
他の星だったら殺されてるよ。地球人の女なんて。
宇野:ちょっと言いすぎじゃないですか。
議長:いやいや、この女のためですから。
さっ!許していただいた所で、歓迎会。続行しましょうか。

書記、立ち上がり、下手寝室になるはずの場所へ退場。

議長:おや。、、ほら。君のせいだよ。
女性:あ、あたし、謝ってきます。
議長:いいよそんな事ー。どうすんだよ歓迎会ー。
女性:、、すみません。
議長:ほんとなら君がケーキやらおかしやらわっか繋げたのやら用意するもんだろう。
女性:、、、、、、。
議長:飲み物も無い。これだから地球の女ってのは。
女性:ごめんなさい。今、用意します。
議長:いいよもお。そんな雰囲気じゃないよ。わかんないかなぁ。
女性:、、はい。
議長:こんな空気の中で歓迎されるきんちゃんの身にもなってよ。
女性:すみません。
宇野:いや、いいですあの、僕、十分歓迎されましたから。
議長:やさしーなぁ、きんちゃん。
宇野:あの。
議長:すみませんねぇ、こいつ。使えなくて。
宇野:宇野です。
議長:、え?
宇野:僕の名前、宇野です。
女性:、、、。
議長:はっはは、名前なんか
宇野:宇野、聡(さとし)です。
議長:、、金星人は名前なんか大事にするんですか。
宇野:はい。

沈黙。

議長:それじゃ、地球時間で10分休憩取りまして、会議にうつりましょか。
ガニメデさんもしかしたらアレだから、ちゃんとしといてね。
それとわかってるだろうけど、後で。
女性:、、はい。

上手のキッチンになるはずの場所へ退場。

■第7場質問したい。

宇野:、、、、あー、緊張した。
慣れない事するもんじゃないな、僕は。
女性:すいません。
宇野:いやほら僕、あまり人に意見する人じゃないっていうか。。
いやー強きだったなぁ。めずらしく。心臓バクバク。
もう2度と無いな。なんかおっかないもの。あの人。
女性:すみません。
宇野:いやいや。君が謝る事無い。
あの場合は、きっと、あの人言いすぎ。うん。
タイタン人だっけ。
女性:、、、、。

女性、気落ちしてる

宇野:聞いてもいい?
女性:、、ごめんなさい。
宇野:あ、そっか。質問したら駄目なのか。
地球人だから答えちゃいけないの?
女性:えっと、あの、
宇野:それともともとそうなの?
女性:あの、えっと、(焦り)
宇野:あ、ごめん。質問してる事になる?これ。
女性:あの
宇野:あ、質問しちゃった。
女性:あたしもともとハニスミダ。
宇野:あ。
女性:ぬるっとした魚とかバッグにいれて持ち歩く派なんです!
でも信用してください。安心と信頼のシンボルマークです、、。
宇野:、、、。

女性顔を覆う。

女性:ああ、大事なとこ、、、アレだ。
宇野:いや、あの、なんだか、
言ってる事めちゃめちゃだけど
なんとなく、なんとなく誠意は伝わった!
そういう人だって事だ。うん。
なるべく質問しないようにする。うん。
女性:すみません。
宇野:いや、いんだいんだ。うん。

沈黙。

女性:、、あの。
宇野:なになに。
女性:誰か探してるんですか。
宇野:あ、、、うん。君、ここ長いの?
女性:あ、えと、もうかれこれ全品20%オフです。
そうじゃない商品もあります。もはや百円均一とは言えません。
どこまで行けばランジェリー売り場は終わるんでしょうか。
文字化けで読めやしません。

女性、ゆっくりと顔を隠す。

宇野:ごめん。
女性:大事なとこ、、あれだ。
宇野:、、みたいね。
女性:、、私も探してるんです。
宇野:え?
女性:人じゃなくて、場所。
宇野:場所、、。
女性:ほぼ完璧に星の記憶を取り戻されてるんですか?
宇野:え?あ、まぁ、
女性:いいですよね。帰る場所があるって。
あたしは、こんななので、どこでもうまくいかない。
私にも星の記憶があればなぁ。
「彼」いわく、ひょんな事から星の記憶が産まれる事があるんです。
この場所にいれば。もしかしたらって。
そしたら、帰る場所が、出来る。
宇野:、、、。
女性:私も今は恥ずかしながら地球人ですけど。
でもそれでもお役に立てればいいなとか。
宇野:あの、恥ずかしいってのは、どうかなと。
女性:え?
宇野:僕も自慢できるような事は何もありませんが、
あまりそう卑下するような言い方は使わないようにしてます。
えっと、まぁ、どこに産まれようと、えーと、どこの星に産まれようと、
なんていうかこう、命の重さは同じで、その、
えーと、人種の問題を乗り越えて、あのー、
地球人らしく、いや、地球人らしさで、
君なりにこう、なんてゆーか、頑張りましょう。
女性:、、ありがとうございます。
なんだか、星の人にそう言われると、すごくうれしいです。。
宇野:、、いや、あの、、違うんだよね。
女性:はい?
宇野:あの、、、実は。
女性:え?
宇野:いや、なんでもない。
女性:?
宇野:ごめん。

沈黙。

女性:あの、何か飲みますか。
宇野:あ、、うん。

女性、ポットを取りにいく。いったん退場

宇野:、、、、、、いい子だな。
なんで、こんなとこにいるんだろ。
危なく、ほんとの事いいそうになる。
いかんいかん。
そんな場合じゃない。
今は、彼女の事。考えないと。
、、、、、。
本当はこんなとこ、いたくないんじゃないか。

宇野、女性の方を見る。

宇野:あ。

宇野、女性登場にあわてて視線をずらす。
女性、ポットからマグカップに持ってくる。
マグカップにつぐ。

女性:どうぞ。ちょっとぬるいかもですけど。
宇野:、、あ、、、ありがとう。
女性:いえ
宇野:、、なんか、うれしいな。
女性:え?
宇野:いや、こやって人に何かして貰うのって久しぶりで。
女性:?
宇野:あの、今、一人だから。半年くらい。
女性:私も。
宇野:え
女性:普段、人に何かするとか無いからうれしいんです。
ずっと一人だから。
宇野:そうなんだ。
彼氏とかいないの?あ、質問しちゃった。
女性:はい、台所のすみからニュっとこう。会計事務が。
なんだかんだ言ってもルーカレーが一番ですよね。
宇野:ごめん。

沈黙。

女性:、、、、、結婚したんですけど。
あたし、逃げ出したんです。
宇野:え?
女性:?どしたんですか?
宇野:あ、いや、、、
女性:あたしには、家が帰る場所じゃなかったんです。
だから、星の記憶が欲しいんです。
記憶あれば、宇宙を越えて、あたしには帰る場所がある。
ここには素晴しい方ばかりです。
だからあたし、満足してるんです。
今、ここに居て、いろいろな事を知って、
そのうちに、きっと。
宇野:それじゃ駄目だ。
女性:、、え?
宇野:そんなんじゃ駄目だ。
女性:、、どうしてそんな事言うんですか。
宇野:ここに居たって、
どこかに逃げ場所みつけたって、
解決した事にならない。
幸せになんかなれない。
幸せは、ひとつひとつ、着実に、自分の力でつかむもんだ。
女性:、、、
宇野:ここの連中。
頭のおかしな奴ばかりじゃないか。
本気で素晴しいなんて思ってるわけじゃないんだ君は。
女性:信じてます。
宇野:こんなとこにいくら通ったって。
君は、しあわせになんかなれない。
女性:でも、他に方法ないから。
宇野:ほら、
女性:え
宇野:他に方法がないだけだ。
他に方法があれば、
女性:どうしたんですか?
宇野:、、え?
女性:宇野さん。
宇野:、、、、、、、、、。
もし、君さえ良ければ、、、
女性:?
宇野:、、、、あの、、、実は、、

探偵の声、サス、宇野のみに当たる。

探偵:宇野さん!だんなさん!
宇野:え
探偵:あー間にあった。やっぱ今日いきますよね。宇宙人の巣。
宇野:止めようったって無駄ですよ。
探偵:わかりしましたから。
もう止めません。
これ渡そうと思って。はい。
宇野:なんですか?この紙袋。
探偵:いざって時に出してください。
中はまぁ、見ない方いいです。
宇野:どうして?
探偵:いいからいいから。
宇野:なんか、お世話かけまして。
探偵:やめてくださいよその、今生(こんじょう)の別れみたいの。
あ、あとね。バレたくない人のための探偵潜入心得に、
一つ加えといてください。
宇野:はい。
探偵:一つ「同情しない事」
宇野:え?
探偵:同情してたら本来の目的、見失いますよ。
宇野:まさか。
探偵:いろんなのがいますから。
救い出したいなんて、思い始めたらアウトです。
誓ってください。だんなさんが探してるただ独りの女性は?
宇野:、、彼女です。

照明戻る。

女性:あたしさえ良ければ、、?
宇野:、、、、、、あの、なんでもない。
女性:?なんですか?
宇野:いやーーー、はっはははっっっははー。
初めて会った人に、質問しないってのは、難しいなー。
いや、なんか方法があるはずだ。
うーむ。何か方法を考えよう。うん。
女性:あの、ガニメデさんの様子、見てきます。
宇野:あ、うん。

女性、そそくさと退場。

宇野:どうして、こんな所にいるんだろう。
どのくらいここにいるんだろう。
どうしてこの場所が必要なんだろう。
「彼」ってなんだ。
、、あの子の名前、、。
質問したい事、いっぱいだ。
、、、、。いや。これは、同情だ。

■第8場間取り

宇野、マグカップを口に含む。吹き出す。

宇野:ぐお。、、、、鬼のようにまずい。
、、、、、なんだこの、まるでキャベツのような生あったかい飲み物は、、、。
水ないか水!
台所は、、、、、、まだ出来てないよな、、。

宇野、自分の計画を思い出す。

宇野:こんな調子で、年明けに出来るのか。
、、、、、、。3LDK

宇野、自分の場所を指し

宇野:。、、L。

上手の入り口を指し

宇野:DK。3部屋と、リビングと、ダイニングキッチン。
ずーっとデラックスキッチンだと思っててバカにされたっけな。
で、こっちが、、、、寝室か。

いつの間にか聞こえてくる雨音。
SE建築用ビニールシートに降る雨音。

宇野:、、、、、。

宇野、下手の入り口をみつめるうちに
雨音に気付く。

宇野:、、、、なにしてんだ。
、、いかんいかん。こんな事してる場合じゃない。
冷えてきたな。天気予報当たるかもしれない

コートを羽織る。
宇野、ついマグカップを口に含む。

宇野:ああ!、、まるでキャベツ!

■第9場質問させてください。

議長登場。

議長:おや。まだ来てませんか。「彼」。
宇野:、、「彼」。
議長:あの女どこ行った。
宇野:、、。

議長、マグカップに飲み物を注ぎ、飲む。

議長:ぷはーー。どうですかこのおいしい音!

議長、マグカップに飲み物を注ぎ、飲む。

議長:ぷはあああ。ね?おいしい音。
宇野:おいしいですかそれ。
議長:まずいね。
宇野:、、、、。
議長:さ、やっちゃお。そっち行って。
宇野:え?

宇野、従う。

議長:じゃ、足を肩幅に開いて。手を頭の後ろに。お尻を突き出す感じのスクワット。

二人、やってみる。

宇野:もういいです。
議長:どうして?このスクワットだと膝と腰に負担がかかりませんよ?
宇野:お言葉ですが、服着てください。
議長:はいはい。でもまずは足痩せ。私は足の痩せた人間になりたい。
宇野:わかりました。

議長。スクワットを続ける

宇野:質問してもいいですか。
議長:どうぞどうぞ。じゃんじゃんどうぞ。
宇野:あの。ずっとこういう感じなんですか。
議長:そうですねぇ。見た目格好悪いですけど結構きますよ。ふとももに。
宇野:ずっとこんな感じなんですか。ここ。
議長:というと?あーー、じょじょに効いてきた。じょじょに。
宇野:僕、聞きたい事があるんです。
議長:どうぞー。
宇野:この会議の事です。

スクワットをやめる。
張り詰める空気。

宇野:、、、。
議長:、、、、、、。
宇野:、、、、。
議長:先程よりもどうですか。
宇野:、、え?
議長:私痩せましたか。。
宇野:変わってないと思います。
議長:そう?
宇野:はい。
議長:少しも?
宇野:全然。
議長:あーー、やっぱり。
宇野:はい。
議長:なかなか難しいですねぇ。
地球人の体をあやつるってのは。
宇野:、、
議長:どうしました?考えこんでるような表情作って。
宇野:え
議長:それどうやるんですか?
宇野:ここの責任者は誰ですか。
議長:「彼」です。「彼」が来るまでは私が議長代理を勤めさせていただきます。
宇野:「彼」って誰ですか。
計画ってなんですか。
どのくらいの人間がここにいるんですか。
議長:、、、、。
宇野:答えてください。
議長:、、、聞きたがりな金星人ですね。
宇野:僕の質問に答えてください。
議長:感情をコントロールできない。
宇野:え
議長:あなたが発音する言語とはうらはらにあなたから敵意のような物を感じます。
宇野:、、、
議長:私も質問していいですか
宇野:まず僕の質問に答えてください。
議長:失礼。あなたの質問に答える前に私も質問していいですか。
宇野:、、、はい。
議長:あなたの目的はなんですか。
宇野:、、、それは、
議長:それは?
宇野:「彼の計画」を知る事です。
議長:、、
宇野:「彼」って誰ですか。
計画ってなんですか。
どのくらいの人間がここにいるんですか。
議長:それは、彼しかしりません。

SE建築用ビニールシートに降る雨音。
ザアアアアアアアアアアアアアアア

議長:雨降ってきましたねぇ。
宇野:ええ
議長:天気予報あたりますかねぇ。
宇野:、、、。
議長:雪になりますかねぇ。
宇野:、、、。
議長:私はうれしんですよ。
宇野:え
議長:仲間が増えて。

議長退場。
SE建築用ビニールシートに降る雨音。
ザアアアアアアアアアアアアアアア

宇野:、、なんか、
、、これ以上いると、
、、、、、だめな気がする。

バリアーの中の書類。

宇野:書類。

書類を手に取る。

宇野:なんだ。今やったチェックシートか。
、、何人いるんだここには。
、、何か、わかるかもしれない。

1枚1枚めくる。

宇野:あれ?
突発的な状況の変化に対応できない、、、、、イエス。
自分は疑い深い方だ、、、。ノー。
たまに支離滅裂なことを言う、、。ノー。
計画を立てるのが好きだ、、、、。イエス

宇野:!!

宇野、自分の答えと、全部同じである事に気付く。
他のも見てみる。

宇野:、、、、、、、
これは、、、どういう事だ。

SE建築用ビニールシートに打ち付けられる雨音大きくなる。
ザアアアアアアアアザザザアアアアアアアアアアアアアアア
作業灯、一瞬またたく。


■第12場パニック

女性

女性:
宇野:え?
女性:、、、!なんで。
宇野:、、え?
女性:バリアー張ったのに。
宇野:あ。
女性:せっかくバリアー張ったのに!
宇野:いやいや。あのね。
女性:あ、張れてなかったんだ。
全然張れるようになってなかったんだ。
宇野:、、
女性:だめだ。
質問にも答えられないし。
使えないし。
気も回らないし、、
あたし、あたしその上、バリアーも張れない
宇野:みんな張れないから!
女性:うそ!
宇野:うそじゃない!
女性:え?
宇野:いいかい?
この世に、バリアーを張れる人なんていないんだ!
なにを真剣に叫んでるんだ僕は。
女性:バリアーを張れる人なんていない、、
宇野:そう、、、いない。
女性:じゃぁ。あなたも。
宇野:そう、僕だって張れない。
女性:うそ!
宇野:うそじゃない!
女性:そんなの!そんなの気休めだわ!
宇野:じゃあ見てろ!

宇野、バリアーを張る。

宇野:見えない奴だ。でかい奴。
女性:危ない!そんな通り道に!
宇野:じゃあ、危なくない奴!こう、ガラスみたいなもん!
女性:(うなづく)
宇野:すいませーん。

議長登場。

議長:あ、はいはい。
宇野:ちょっと寒いんですけどー。
議長:あー、ごめんなさい。
ちっ、おまえいるならやれよな。
女性:、、。
議長:まったく、、、

暖房機器、取りにいく。ガラスにぶつかる。

宇野:え?
議長:ん?
女性:!
議長:あれ?あれれれれ?あれ?

ガラスマイム。進めない。壁、壁壁。

議長:誰だバリアー張ったのぉ!!
宇野:ええええええええ?!
議長:危なくないガラスみたいなのぉ!!
女性:うそつき!

女、顔を覆い隠す。

議長:おまえか!(ガラス叩く)おまえか!(ガラス叩く)
女性:あたしバリアーも張れない!
宇野:違う!僕もバリアーなんて張れないはず!
女性:気休め言わないでください!
議長:火事になったときどうするんだぁ!
宇野:うるさい!この人いつもこんななのか?!
女性:質問?!
宇野:しまった!
女性:いつだってビッグウェーブ待ってんだから!
波乗りの意見もグっとくる時あるよ!ないよ!
宇野:ごめん!今の無し!
議長:ここから出せえ!!!
宇野:勝手に出ろ!
女性:スーパーの袋盗んで生活してるあたしの気持ちわかる?!
議長:私を怒らせるとどうなるかわからんのか!
宇野:わからないよどっちも!
女性:みんみんみんみんうるさいよ!
宇野:言ってないよそんなこと!
議長:言わせておけばいい気になりおって!
宇野:なんでそんなに怒ってんのあの人!
女性:質問!
宇野:君に言ったんじゃない!
女性:お父さんお母さん旅立つ不幸をお許しください!
宇野:どこ、どこいくんだ。
女性:熱海(顔を覆う)
宇野:旅行だからそれは!ちゃんと話せばわかってくれるよ!
議長:なぁああにいいいいいい!!?
宇野:ああめんどくさい!

書記登場。手首から血。ナイフ。

宇野:あ!ちょっとこれ、どうにかしてくだ、、
なんであんたは血まみれなんだあああああ!
書記:ぼそぼそぼそ(以下、ずーとぼそぼそ言ってる)
宇野:頼むからしゃべってください!
女性:「ボルシチとプルコギくいてぇ」?!だと?!
宇野:言うもんか言うもんか!!

ナイフポトリ。

宇野:自分でやったんですか!?
議長:そんな事よりこっちが先だろお!
宇野:どう考えてもあんたは最後だ!
女性:ああ!ミソ!ミソむったし!
宇野:違うよ血だよ!救急箱とかないの?!
女性:ここはパラダイスさ!!

女性、寝室に退場

宇野:絶対違う!どこいく!おい!
議長:かくなる上はぁ!
宇野:あんたはもうしゃべるな!
議長:かぁあ、、めぇぇえ、、、
宇野:ああもう、どうすりゃいんだ!あ!探偵心得!
議長:はああああ、、めぇええええええ、、、!
宇野:一つ「何事にも動じるな」
議長:波ああああああああああ!!!!!!
宇野:できるかあ!!(手帳を叩きつける)

女性、バケツ持ってくる。

女性:はい!バケツ!
宇野:あ。ありがとう、、いらねぇ!
議長:「オラの技が効かねぇ、、」
女性:似てる!
宇野:こびるな!
議長:「*****」
宇野:頭に乗るな!
女性:ガニメデさん、どうぞ!

バケツを構える。

宇野:何してんの。止血しないと!
議長:ガニメデさん、どうぞ。
宇野:え?どうぞ?

血、バケツに流れる。
ジャアアアアアアア。

宇野:、、うわ、、。
書記:、、、、、、、、、。
宇野:だ、、だいじょうぶですか、、。

書記、笑ってる。

宇野:、、、、笑ってる、、、。

事態が飲み込めず呆然と立ち尽くす、宇野。

議長:(拍手)
宇野:え
女性:(拍手)
宇野:、、、、、。
議長:おかえりなさいガニメデさん。
宇野:、、、、。
書記:はははは。
宇野:!!
女性:おかえりなさい。
書記:、、、、、、。ただいま。
宇野:!!!!!
議長:おー。本当のガニメデさんだ。

SE雨の音。
サァアアアァァアアアァッァアアアアアア

宇野:なんなんだここは。、、、、、、、、。君たちは、、、、、くるってる

しずかに宇野を見つめる3人。

書記:狂う。とは。
宇野:、、、、。
書記:気が違う。
精神が乱れる。
心が乱れる。
正常な状態でなくなる。
ゆがむ。ひずむ。
宇野:やめろ。
書記:、、、。
宇野:君たちは病気だ。
書記:心身に正常と異なる変化が現われ、苦痛や不快を感じる事。悪い癖。
宇野:君たちは、まともじゃない。
議長:まとも?
宇野:そうだ。正常じゃない。
議長:あなたは?
宇野:僕はまともだ!
議長:仲間じゃないですか。
宇野:一緒にするな!
議長:あなたはここにいるんだから。
宇野:僕は違う。
こんな所にいる人間とは違う。
議長:チェックシート。
宇野:え
議長:合格してましたよ。
宇野:!!
議長:さっき見たでしょう。
我々仲間のチェックシート。
あれ、ここに参加する方、皆さんやるんです。
宇野:、、、、。
議長:面白い事に、ここに来る人たちは、
同じ答えを書くんです。
宇野:、、、まさか。
議長:全部、同じだったでしょう。宇野さん。
宇野:、、僕はくるってない。
議長:あなたが探してる人も、たぶん合格してますよ。
宇野:、、、、、!!!!!!!
、、、、
あたまが、くらくらする。
、、!何か飲ませた、、。

椅子に座る、宇野。

宇野:どのくらい、、こんな場所にいたんだ。、、なんなんだここは、、、。
議長:ここは「彼の計画」を進めるための場所です。
宇野:、、、ここはそんなための場所じゃない。
議長:さぁ、会議を始めましょう。
女性:はい。
書記:この星には、次のプランが必要だ。
宇野:、、、!!!!

宇野、顔を上げ書記の言葉に反応する。
そのまま、倒れる。


SE雨の音
サアアアアアアアアアアアアアアア

SE足場を歩く音
カシャン、、、カシャン、、、カシャンン、、

SE雨の音
ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

暗。

■第13場 宇宙人の子

宇野に照明。

宇野:ただいまー。もー外すごいよ雨。どしゃぶり。タクシーつかっちゃった。
ちょっと聞いてる?マンションの事なんだけどさー、
あれ?お風呂かな。いるー?トイレか?コーンコン。

SEテレビの音。

宇野:、、、、、、あ、テレビ見てんのか。
あのさ、年明けに完成するマンション、3LDKの、、

ドアをあけるマイム
テレビの音、大きくなる。

宇野:、、、、、、いない。どこ行ったんだあいつ。
テレビつけっぱなし。、、
あ、書き置き。
「おかえりなさい」はいはいただいま。
「私は、彼の計画に従います」?は?なんの話しだ?
「もう二度とお会いする事は、、、」
、、、、、、、、
、、、、まさか。

大きくなるテレビの音。突然消える。
照明変わる。

宇野:そのまま、彼女は帰って来なかった。
僕は恥も外聞も捨て、彼女の実家、彼女の勤め先、手当たり次第に探し回った。
探偵もやとった。あらゆる手を尽くした。
まるで、神かくしにでもあったかのように彼女はこつぜんと、僕の前から姿を消した。
思い当たる節が無いわけでは無かった。
、、探偵にも言えずに居た。
彼女が居なくなる1週間前。

医者の声、照明変わる。

医者:ご懐妊されてます。
宇野:え?
医者:おめでとうございます。がんばりましたね。
宇野:でも。
医者:信じられないのも無理はありません。
1年も前になりますか。お二人とも非常に頑張っておられた。
6ヵ月にわたる不妊治療。成果は出ませんでしたが。
宇野:、、でも、あの。
医者:確かにご主人は精子の量が平均よりも極端に少ない。
ですがそれも確率の問題です。ゼロパーセントではない。
その可能性にかけられたお二人に感服いたします。
一番自然な形でのご懐妊です。おめでとうございます。
宇野:なんか月ですか?
医者:ちょうど2ヵ月。
宇野:2ヵ月、、、。

照明戻る。

宇野:、、、不妊治療はうんざりだった。
「採取されましたら声をかけてください」
エロ本やビデオを渡され、
殺伐とした病院の個室で一人マスターベーションにふける。
彼女は別の部屋で医者の前で股を開く。
僕は、待合室でじっと待つ。
1ヵ月後に結果を聞き、同じ事を繰り返し1ヵ月を待つ。
6回も続ければ十分だった。
僕たちは子供をあきらめた。
二人だけの生活を夢描く事にした。

照明変わる。医者の声。

医者:ご安心なさってください。
宇野:あ、え?
医者:胎児は順調に成長してます。
あとは奥さんをいたわってあげてください。
宇野:、、、。
医者:なにかご質問でも?
宇野:、、、あの、
医者:はい?
宇野:本当に2カ月ですか。
医者:ええ。間違いありません。
宇野:、、、、、、この2カ月、、いや、3カ月。、、僕は、妻と一緒に寝ていない。

探偵の声

探偵:「あなたにたった一言いえるのは、この星には次のプランが必要だという事です」
どういう意味ですかねぇ。書き置きの最後の文章。
宇野:、、、、、。
探偵:もう半年になりますか。
宇野:、、半年、、、8カ月、、
探偵:なんですか?
宇野:、、いえ。
探偵:ここまで奇麗さっぱり足取りがつかめないなんて脅威ですよ。
素人がこうも簡単に気配消していなくなれるはずがない。
私、思うんですがね。おそらく裏で絵を描いた奴がいますよ。
でもなぁ。めぼしい宗教団体は洗ったんだけどなぁ。
宇野:裏で、絵を描いた人間、、。
探偵:あ。
宇野:なんですか?
探偵:いや、最初にパソコン見せてもらった時にね。
ちょっと気になったもんがあったなぁって。
宇野:気になるもの。
探偵:もう一度奥さんのパソコンお借りしていいですか?
宇野:はい。
探偵:じゃ、明日にでも取りにいきます。今日はこれで。
宇野:、、、、、、、、、、あの。
探偵:はい?
宇野:宇宙人。
探偵:は?
宇野:宇宙人の子。
探偵:なんですか?
宇野:彼女、言ったんです。
「宇宙人の子供が出来た」って言ったんです。

SE足場を歩く音
カシャン、、カシャン、、カシャン、、、カシャンンン、、、。

ゆっくりと暗。

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