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『SFパパ日記(2021)』

『SFパパ日記(2021)』
12/6最終稿
作 すがの公

<登場人物>

佐藤明男(あきお):長男。スーツ。借金取りに追われている。昔、風景画家になりたかった。
佐藤朝乃(アサノ):長男の妻。パニック障害チック。北海道札幌生まれ。
佐藤繁子(しげるこ):長女。リストカットしちゃったり。本当は歌手になりたい。フリーター。彼氏無し。
佐藤空女(まりあ):次女。馬鹿っぽい。役者志望。妊娠3ヶ月目に突入。
みつお:空女の彼氏。わりと考えている。空女のお腹の子を認知しない。
女/佐藤文子:蒸発したはずのママ。旧姓・櫻井。パパとは交換日記していた。
佐藤利男(としお):長男の兄とされる人間。山谷に住みつき普段は日雇いと競馬と酒。家族はいたこともあった。
上司:インターポール特別捜査課「時間」係、係長。平凡な毎日に嫌気。
部下:その部下、平社員。かしこい。SFに強い。
安斉:弁護士。スーツ。死んじゃったパパに霊魂としてタイムスリップして、取り憑かれているらしい。
未来少年パパ:蕎麦と虫を愛する。未来少年パパ
パパ0(弁護士):佐藤藤雄(ふじお)本当のつまんない真面目なパパ、日記と3LDKのマンションを残した。
パパ1:第一タイムスリップパパ分裂体
パパ2:第二タイムスリップパパ再分裂体。

<舞台>

 東京近郊。3LDKマンションの居間。内装工事中。
 ソファーと食卓机と椅子。
 生活感のある場所と、改装中の場所が混在している。
 机の上に、半分にちぎれた分厚い日記(パパ日記上巻)が置いてある。

<会場中>

 サアアアアアアアアアアア

 屋根に雨が当たっている音がする。
 転がっている作業灯は接触が悪いらしく。
 時折、消えては、また点く。

<パパ日記>

 繁子、パパ日記下巻に目を落とす。

繁子:パパは真面目でつまらない人間だったので、早い時期にママに逃げられました。
 以来、私たちを男手ひとつで養ってきましたが、私が高校生だったある日に過労で死にました。
 保険金が尽き、パパがローンで買ったこのウチを売ろうと書斎を整理していたら、パパの日記が発見されました。

 パパらしき男(パパ0)がサラリーマンスーツにメガネ姿で舞台上に現れ、話しはじめる。

雨が上がり、
 音楽『アヴェマリア』が聞こえてくる

パパ0:昭和60年結婚。すぐにママが妊娠。来年からパパになる。
 昭和61年4月1日。就職。同年8月、待望の長男・明男が産まれる。アパートに3人。風呂無し。6畳。
 昭和63年3月、北海道釧路支部に転勤を命ぜられる。新米は必ず通る道。社宅に住む。
 同年6月、長女・繁子誕生。男だと聞いていたのに、女の子だった。嬉しい誤算。
 平成4年4月、本社勤務。明男も小学校に上がった。
 平成6年またしても転勤。転校に明男泣く。繁子もつられて泣く。九州へ。
 平成8年再び東京本社勤務。
 平成9年、近郊に3LDKのマンションを購入。もちろんローン。がんばらねば。
 平成10年の夏、まさかの妊娠。繁子が大喜び。明男は思春期で、複雑な顔。
 平成11年1月、次女・空女が産まれる。
 そして平成12年、1999年、ママがいなくなった。

 日記を観察する。

繁子:、、、、半分?
   パパ、パパの日記。私、これ、一緒にいれなかったっけ?
パパ0:あー。

 パパ0、消える

繁子:パパ?

 繁子、パパ日記上巻を、持ち上げると。
 銀行の封筒がハラリと落ちる。

繁子:、、、なんだこれ。

 封筒に文字。

繁子:「遺書」?

 音楽あがり、暗転

<親族>

 明転
 安斉、明男、アサノ、繁子、空女、みつお。少し離れた場所に女がいる。
 安斉、時計を見ている。

安斉:、、、、はい13時に、なり、ました。つまり、えー30分前になりましたので、えー、まず、ご説明から、始めたいと思います。
 では、よろしくお願いします。(礼)

 全員。礼。

安斉:まず、えーーーーっと。ご長男の佐藤明男さん。
明男:(ぼーっと立ってる)
アサノ:ほらっ返事。
明男:え?
アサノ:すみません、もう一度呼んでやってください。
安斉:ご長男、佐藤明男さん。
明男:はい!ほら馬鹿みたいだろ。
アサノ:第一印象っ
安斉:ええと、そちらは
アサノ:あ家内です結婚5年目で子供は一人まーくん(舞空)写真♪
明男:いいから。
アサノ:なんか緊張しちゃって♪ぱにっく♪こんにちわ
明男:続けてください。
安斉:そして長女の佐藤しげこさん。
明男:あやっぱり。
安斉:は?
繁子:「しげるこ」です。
明男:”足繁く通う”の「繁」に子供の「子」で、しげるこって言います。
安斉:はー。変わった読み方ですね。
繁子:シゲルだけで良かったんですけど。
明男:いや、変わってていいよ。ねえ?
アサノ:この人なんて明るいに男でアキオ。
明男:単純で前向きで馬鹿みたいだろ。
アサノ:ばか。
明男:はい、続けてください。
安斉:そして、次女の、、、ううう。すみません。
空女:まりあ。
安斉:え?
空女:まりあです。
みつお:かっけー♪
安斉:まりあ?
全員:まりあ
安斉:あ、え?これでマリア?
空女:どーも♪
繁子:「空」の「女」って書いてまりあって読むんです。
アサノ:今、頭空っぽの女みたいだと思いました?
安斉:え?いや、すいません。
アサノ:思ったんだ。思ったって(兄に)。
明男:やめろっての。
空女:むかつくんだけど?
繁子:じょーだんじょーだん。
安斉:これはまた、さらに変わった名前ですね。
アサノ:どーせ当て字です当て字。
明男:なんでトゲあんだお前。
アサノ:別にないけど。
空女:自分の息子、ブクーじゃん
みつお:ぶくー?
アサノ:マイクです。
安西:マイク。
明男:獅子舞の「舞」に空中の「空」で
空女:ぶくうじゃん
みつお:ドラゴンボールじゃん
アサノ:マイクです!
明男・繁子:まぁまぁ
アサノ:最後選んだのあなたですからね?
明男:案は全部お前だろう
みつお:まだおわんねっすか?
空女:始まったばっかじゃん♪
みつお:たのしそー♪

<タイムパトロール>

上司:はい止めて。
部下:ピキャキョ
上司:日付と時間
部下:2021年12月5日13時2分。

 空間に上司の声がすると、照明が変わり、皆体が固まり、時間の流れが遅くなる。
 SF警備員っぽい上司、サイバーな眼鏡をしていたりする。
 難しい顔をして立ち上がる。胸に「T・P」、背中に「ICPO」

上司:2021年なー。
部下:僕、この次の年に生まれました。
上司:コロナだかコロネだかが流行った年だ。
部下:物知りですね
上司:ググった。暇だから。
部下:あ、グググったんすか
上司:え?
部下:グググったんすか?
上司:グ、多くない?
部下:モデルチェンジしたんすよ去年、グーグル。
上司:そうなの?
部下:グーグルグレートになりました。2051年。

 上司、舞台に入りこむ。入り込む時、音がする。

上司:よし、やるかー。
部下:干渉開始。
上司:みゅあんッ
部下:みゅあんッ

 舞台上を隈無く歩きまわる。観客も含め、劇場内の全員をチェックする。

上司:うーん。
部下:係長。あまり、しげしげ見ないであげてください。
上司:どうせ見えてないでしょ?
部下:まぁ。
上司:あ!こいつちょっと動いた!
部下:そういうこといわない!

 再び、舞台上の顔をしげしげ見る。

部下:完全に時間が止まってるわけじゃないすから。
上司:何度聞いてもわかんない
部下:彼らの時間は止まっていません。
 我々が時間の隙間を超高速で移動しているわけです。このベルトで。
上司:ダサいよねこのベルト。
部下:え。そうですか?

 仮面ライダーみたいな。

上司:超ゆっくり動いているってわけ?
部下:そう。超ゆっくりです。

 あからさまに超ゆっくりうごきだす。

上司:あからさまに超ゆっくり動き出した。
部下:「あからさま」とか言わないでください。
上司:この人、下手じゃない?
部下:下手とかないですから。

 誰か、随分うごく

上司:あ、随分動いたぞあいつ!
部下:すごい早く動いたんです。すごい早く。
上司:苦しいな
部下:あまり、注目しないであげてください。
上司:わかった。

 上司、また観察を始める。

上司:この遊びも飽きたね
部下:遊びじゃないです。
上司:毎日毎日張り込みだもの。この時間に。
部下:今日こそ。犯人が現れればいいんですが。
上司:いやにならない?
部下:仕事ですから。
上司:あたし転職しよっかな。
部下:勿体無い!公務員ですよ?安定第一っすよ
上司:安定よりも刺激が欲しいわ。職場にいい男いないし
部下:あ、そういう意味っすね
上司:あれ?わらってる?影でおつぼねとかいってる?
部下:言ってないです。
上司:あんたもつまらん男だね。
部下:そうすかねぇ。
上司:ひと旗あげようとかさ。冒険しようとかさ
部下:ないですね。
上司:毎日毎日ルーティンワークじゃん。
 なんのために生きているんだか。とか。
部下:思いません。
上司:あんた、この日記のおじさんみたいだね。
部下:そんなもんすよ。あちゃーー
上司:何?
部下:やっぱ今日、干渉するの早かったっすよ。コンマ5秒
上司:細かい!
部下:報告書になんて書くつもりですか?
上司:『勘』
部下:怒られますって!
上司:いいじゃん!毎日毎日同じ時間覗いててもつまんないし。どうせたいした変わんないし。
部下:僕らが歴史を変えたらもともこもないじゃないですか!
上司:あ、そうだ。ちょとまって。
部下:え?

 上司、いったんはけ、パパ日記の後半を持ってる。

上司:このさー、日記のタイトルってさぁ。なんて読むの?
部下:持ってきちゃだめでしょう!
上司:え?
部下:「え」じゃねえよ!未来人が勝手に動かすな!
上司:見えてないでしょ?
部下:いや!見えてないどころか!今、消えてますから
上司:そうなの?
部下:そうですよ!
上司:どれ。
部下:え?

 上司、誰かのメガネとかを一瞬持つ。

上司:みて!!ゆっくり不思議な顔になってく!
部下:え?!
上司:いくよ?はい!
**:、、、、、?
部下:ぶははは!ほんとだ!ゆっくり不思議な顔になってく!
上司:よし!全員を実験だ!
部下:こらああ!!!!!!
上司:あと一人!(お願い)
部下:お願いしてもだめです!
上司:ウケてたくせに。
部下:まずそれ戻して!どこにあったんすか!
上司:あっちの部屋。
部下:下手をすると歴史が変わります!。
上司:でもほら、せっかく30年前の現物を目の前にしてるんだから。
部下:戻して!戻して早く!!
上司:『**日記』。ノの反対にマル。これ韓国語?
部下:係長!はやく戻して!
上司:あ、ほら!えんぴつでなんか書いてある!(嬉々)えす、えふ!ちょっと喜んで!新発見!
部下:もう僕は知りません!干渉終了!みゅあん
上司:ちぇーー。ぽーい。

 上司、そでにぶんなげる

部下:ざつ!!!

 音楽。「Third Man Theme」

<再開>

 部下退場する。

上司:みゅあん。
部下:2021年6月11日19時2分ジャストから再開。
 場所。佐藤家マンション。犯人佐藤出現予定時間まで45分。
上司:どうせ現れませんって
部下:では、お願いします。係長。
上司:再開
部下:ピキョキョ。

 部下、音楽をあげ、上司、照明を変える。
 なんかゆったりした行進。
 現在の人々後ろむきに行進する。
 未来の人々、前向きに行進する。

 続き。

安斉:えーと、
みつお:あ、田中っす
空女:みっちゃん♪
明男:次女の友人です。えーと、職場の。
空女:彼氏です♪
みつお:え?ガチ?。
空女:え?遊び?
みつお:ガチっすか?
安斉:いや、私に聞かれても。
空女:(姉に)みっちゃんってウケるよねー(幸せそう)
繁子:あ、うん、そうだねー。
空女:かわいー
アサノ:バカか。
明男:こら
アサノ:バカだよあそこ。
明男:バカだけどもっ
みつお:あ*****ゲット(ゲームのなんか)
空女:やったじゃーん
繁子:なにそれ
空女:しらなーい
繁子:へー

 皆、口々にしゃべりだす。

安斉:ああ、ええっと。すみません。静かに!あ、静粛に!
みつお:出た「静粛に」!
空女:みっちゃんこれ聞くために来たんだもんねー。
みつお:さっすが弁護士!

 皆、口々にしゃべりだす。
 弁護士、携帯を取り出し話しだす。スマートフォンが良い。

安斉:あ、もしもし、鶴田法律事務所、安斉の携帯ですが?
 あ、すみません。ちょっと騒がしくて、ちょっとごめんなさい。
 (姉に)あ、すみません。
繁子:はい?
安斉:ちょっと席外します。

 安斉、係の女に少し、耳打ちして退場する。

繁子:(ためいき)はぁ、、、

 親族の騒ぐ姿をしばし傍観する繁子。

女:あのー
繁子:はい?
女:皆さん何かお飲み物とか?
繁子:あ、すみません。でも今うちなんもなくて。
女:あたし買ってきます。
繁子:でも
女:はい。
アサノ:そうですか?
女:リクエストっ
空女:コーラ!
みつお:ガリガリ君!
アサノ:タニタの有機黒烏龍茶
明男:なんだそれ
空女:あ、それいい!うちも!
アサノ:コーラで骨溶かしてろ
明男:全部お茶で
みつお:と、ガリガリ君!
女:はい。
繁子:あ、お金。
女:いんですいんですー
繁子:すみません。
女:いえいえー
繁子:あの、コンビニ、マンション出て、右。
女:わかりますー(退場
アサノ:あの人だれ?
明男:秘書?みたいな?
みつお:俺AVでしかみたことねぇ
アサノ:なにいってんの?
空女:わたしもー
明男:おまえもか。
アサノ:繁子ちゃん、椅子とかあった方がよくない?
繁子:あ、はい。すみません。
アサノ:出そうか、手伝うよ。
繁子:すみません
空女:トイレ!
繁子:え?うん。
みつお:よし!便所クエスト!
空女:探すほど広くねーし。
みつお:てててーてーてーてっててー♪(FF勝利音)

 みつお、空女退場する。

アサノ:逃げやがった。
明男:なんの音楽だ。
繁子:えふえふ。
明男:ふーん(わかってない)
アサノ:あまやかしすぎたんじゃない?
明男:え?
アサノ:まりあちゃん。
繁子:すみません。
明男:親じゃないもん俺。
アサノ:親代わりなんでしょ?
明男:違うよ。親父死んだの俺大学ん時だから、えーと。まりあが、
繁子:小3。8歳。
明男:その後俺就職して飛ばされたから、後はシゲルコが育てたようなもんだもな?
繁子:えーと、まぁ、すみません。
アサノ:お母さんはいつ出てったんだっけ?
明男:まりあ産んですぐ。
アサノ:へえ。産み捨てたって感じ?
明男:おい。
アサノ:何?
明男:その話まりあの前でするなよ。
アサノ:はいはい。
明男:たのむぞおい。
繁子:おねーさんお久しぶりです。
アサノ:はいお久しぶり。
繁子:元気でした?
アサノ:元気元気。
繁子:良かった。冬に調子くずしたって聞いてたから。
アサノ:誰に?!(過敏)
繁子:わぁっ。えっと。兄に。
アサノ:あ、そ。
明男:ほらお前風邪引いて、1週間寝込んだろう。
アサノ:ああ。うん。全然平気。
繁子:そですか。
アサノ:シゲルコちゃんなんかぐっと大人っぽくなったねぇ。
繁子:そうですか?
アサノ:いくつになったの?
繁子:えっと、32です。
アサノ:あ、やばいねぇ。
繁子:え。あ、まぁ、やばいです。
アサノ:明日にでも結婚しなきゃねぇ。
繁子:いや、結婚は別に、いんですけど。
アサノ:あ、そうなの?え?じゃ何がやばいの?
繁子:ああ、ええと、この先の展望というか。
アサノ:展望?結婚以外に?なんかあるの?ねえ、結婚以外にやばい展望ってなに?
明男:しらねえよ。色々あんだよ。繁子、ちょっとほら、「例のアレ」もってきてくれ。俺も読む。
繁子:あ、うん。

 繁子、書斎に日記を取りにいく。

アサノ:(色々ってなに?)
明男:(いいんだって)
アサノ:ねえ交通費とか出るんだよね?
明男:出ないだろそんなもん。
アサノ:だってうちらだけ飛行機で来てんだよ?不公平じゃない?
明男:どっから出るんだよそんなもん。
アサノ:相続税。
明男:なんでだよ。
アサノ:おみやげだって買ってかないとうちの親泣くしさ。
明男:泣くなよおみやげで。
アサノ:はいはい。
明男:なんで2回言うんだよ。
アサノ:初めて来た。
明男:あ、そうだよな。結婚式もむこうでやったしな。
アサノ:こっちのマンションってなんか小さい。
明男:北海道の住宅事情と一緒にすんなよ。築三十年だぞ。
アサノ:あ、あなたの部屋は?
明男:もうないだろ?

 繁子、戻ってくる。

繁子:あっれー?

 繁子、何かパパ日記上巻を観ながら不思議がってる。

明男:どした?
繁子:部屋入った?
明男:だれが?
繁子:入ってないよね?
明男:どした?
繁子:いや、なぜか部屋の前に、なんか、ぶんなげてあって。

<時間補正>

 奥の壁の方で部下、上司をにらむ

部下:ストップ!
上司:ピキャキョ

 二人、止まる。

部下:係長。
上司:せかすから。
部下:クレオパトラの鼻が数ミリ低かったら!
 世界の歴史は変わっていたんですよ!
上司:ただの佐藤でしょ
部下:ただの佐藤でも!
上司:ゆうずうがきかないねぇ。これだから役場の人間は
部下:係長!!
上司:はいはいもどすもどす。
部下:リバース!

 アサノ明男繁子、ちゃかちゃか巻き戻しに動く。その中で上司、パパ日記を嫌々受け取り、

3人:キュルルルルル
部下:2011年12月5日13時08分23.149秒!
上司:こまかーい
部下:スタート。

 ちょっと戻る
 繁子、書斎に日記を取りにいく。

アサノ:(色々ってなに?)
明男:(いいんだって)
アサノ:ねえ交通費とか出るんだよね?
明男:出ないだろそんなもん。
アサノ:だってうちらだけ飛行機で来てんだよ?不公平じゃない?
明男:どっから出るんだよそんなもん。
アサノ:相続税。
明男:なんでだよ。
アサノ:おみやげだって買ってかないとうちの親泣くしさ。
明男:泣くなよおみやげで。
アサノ:はいはい。はいはいはい。
明男:なんで5回言うんだよ。
アサノ:初めて来た。
明男:あ、そうだよな。結婚式もむこうでやったしな。
アサノ:こっちのマンションってなんか小さい。
明男:北海道の住宅事情と一緒にすんなよ。

 繁子、普通に日記持って登場。

繁子:築三十年ですからね。
アサノ:あなたの部屋は?
明男:もうないだろ?
繁子:今や物置です。
アサノ:こっち?
繁子:ほんとひどいですからね?
アサノ:ふおう!(なにか歌う♪)

 アサノ、ウキウキ退場

上司:歌った!
部下:これが正しい歴史です。
明男:ウキウキすると口ずさむんだ。あの歌。
繁子:へえ。
上司:どうでもいいな
部下:係長!

<パパ日記に遺書>

繁子:ハイ。例のアレ

 繁子、パパ日記の上巻を渡す。

明男:ああ、問題の日記だな。(パラパラとめくる)
繁子:うん。
明男:半分しかないの?
繁子:そー。
明男:ますますミステリアス。
繁子:そーなんだよ。
明男:あれ?挟まってないぞ?
繁子:あ、弁護士の人に渡した。
明男:ああ、そういうもんか。
繁子:いちおね。
明男:へえ~。遺書ねぇ。
繁子:なんか変だよね。
明男:そういうのはドラマの話だと思ってたな。
繁子:うん。
明男:遺書って、どんなん?
繁子:いや、銀行の封筒。
明男:え?なにそれ。
繁子:ほら銀行のATMんとこに置いてある。タダで貰える奴。
明男:ガッカリだな。
繁子:あぶなく開けるとこだったよあたし。
明男:何で止めてあった?
繁子:ガムテープ。
明男:ガッカりだな。

 空女、戻ってくる。

繁子:でも、「遺書」って書いてあったから。
明男:「兄妹揃った上、我が家の居間にて開封するべし」ってか。
繁子:、、、いちおね。
空女:パパ、日付と時間まで指定してたんでしょ
繁子:、、そう。
明男:2021年12月5日
空女:13時30分。
明男:なんの日?
空女:12月5日?
繁子:ぐぐった。
二人:ほう
繁子:国際ボランティア・デー
空女:ほか
繁子:バミューダトライアングルの日
明男:なんだそれ。
繁子:プーミポン国王誕生日
空女:だれ?
繁子:取り立てて、意味はなさそうなんだよね。
空女:普通の日曜日ってこと?
繁子:まーね

 空女、日記を手にとり、

空女:みしてね。

 読み出す。

繁子:おかげで改装工事もストップ。
明男:全部こんな感じか?
繁子:そう。使うとこだけ後回し。
明男:すまんな。言い出したわりに任せきりで。
繁子:だってにーちゃん北海道だもん。
明男:そうなんだよなぁ。北海道なんだよなぁ。
繁子:仕方ないよ。
明男:結構本気で改装工事してんだなぁ。
繁子:うん。
明男:台所のほら、あれ、どこ行った?
繁子:対面キッチン?
明男:あれ、かっこよかったのにな。
繁子:もう流行んないんだって。
明男:あ、そうなんだ。
繁子:誰も対面したことないじゃん。
明男:ま、鍋置きと化していたな。カウンターみたいなの。
繁子:うん。
明男:へえ、、もう面影ないなぁ。
空女:トイレも張り替えててびっくり。変な壁紙。
繁子:「内装これじゃ売れない」って不動産の人が。
空女:あたしの部屋も壁ベリベリだった。
繁子:あんたが落書きすっから
明男:そっか空女なんて、生まれた時からだもんな。
空女:なんか、もう自分ちじゃないね。
繁子:(カチンとくる)だから、そうしないと売れないんだって。
空女:ふーん。いんじゃない別に
明男:、、、

 間

明男:あれ?まりあ今、一緒に住んでないのか?
空女:うん。
繁子:まりあは、ほら別のお友達のとこに。ね。
明男:お友達?
空女:隠さなくていいじゃん。
明男:あ、あいつか?
空女:そー。
明男:あ、そー。あいつと。ふーん。
空女:あ。びっくりした?
明男:まぁ、それもまぁ、ちょっとそうだけど、それよりも
空女:なに?
明男:二人でやってると思ってたから、マンションのこと。
空女:あたしそんな権利ないし。
明男:権利?
繁子:またそやってー。
明男:なんだ?
空女:なんでもない。
明男:え?
繁子:なんでもないってさ。
明男:どした?
空女:別に。ほんとに売るんだなぁって思って。
繁子:あんた。この後に及んで売って欲しくないとか言う?
空女:べつに。
繁子:ねーちゃんあんたに散々相談したからね?
空女:わかってるよ。
繁子:けどあんた「べつにどっちでもいい」の一点張りじゃん。
空女:うん、だからおねーちゃんに全部決める権利あげた。
繁子:だったらさ
明男:おい、だいじょうぶか?
空女:え?なにが?
繁子:なにがじゃないじゃん。
空女:だからわたしは、別にどっちでもいい。
 てか、もう、自分ちじゃない感増したから、なおさらいい。
繁子:なら言わないでよ。
空女:はーい。
繁子:、、、もー。
明男:なんか、ごめんな。いろいろ。
繁子:別に、しかたないよ、、あたしがやるしかないんだから。
明男:まぁなぁ。俺北海道だからなぁ

 明男、アサノの退場した方へ退場

繁子:トイレ。
空女:あ、みっちゃん入ってるかも
繁子:(タメイキ)
空女:おねーちゃん。
繁子:何
空女:時計ずれてるよ。
繁子:え!

 姉、あわてて時計を確認する。リストカットのキズを気にしている。

繁子:、、、、
空女:お兄ちゃんは鈍感だから絶対気づいてないよ。
繁子:、、ありがとう。
空女:別に。

 間

空女:全部読んだ?
繁子:つまんない日記だよ。

 繁子退場。空女、日記に目を落とす。

<ママと出会った日>

 雨の中、パパらしき人(パパ1)登場。音楽
 半分の傘をさしている。出来れば半分濡れている。

パパ1:そういや、こんな変な雨の日だったな。
 パパは仕事に行く途中、工事現場で雨宿りしてたんだよ。
 でも変なんだ。
 雨の音が、こっちの方からしかしないんだよ。
 おかしいなと思って空を見上げて気づいた。
 明らかに、こっちがくもってて、こっちが青空なんだよ。
 雨が降っている所と、降っていない所の境目って、見たことあるか?
 まさにあれだよ。
 例えばちょうどこっからそっちが大雨。こっからそっちが晴天だ。
 うそじゃないよ?パパためしたんだから。境目のとこにこう入って。
 どうなったと思う?こっち半分、びしょぬれだよ。
 ま、そうして小一時間、雨の境目を楽しんでいたらだ。
 こっち側から声をかけられた。そう、お日様の方から。
 「何してるんですか?」
 そっちを見ると、、、
 一瞬目を疑ったなぁ。
 まばゆいばかりの日の光の中に美しい女の人が日傘をさして、
 パパを見て楽しそうに笑っているんだ。
 空から降りてきたんじゃないかと思った。
 天女みたいなその人が近寄ってきて、いい香りのするハンケチを差し出したら
 こっち側の雲の切れ間から光が、幾筋もさしてきて。
 雨がやんで、雲が晴れた。空一面の青空。
 空女が生まれるずっとずっと前、パパが、ママに会った時の話。

空女:、、、、

 空女、日記をとじる。音楽上がり、パパ1どこかへ退場する。

空女:つまんなくないじゃん

 空女、少しうれしくなって退場する。

<2051、オフィス>

 奥の壁のどっかに「未来2051年」と書いた札、ぶらさがる。
 つまんなそうに上司登場。

上司:休憩。
部下:ピキャキョ。15分経過。異常なしです。
上司:ないよねー
部下:一字一句。何から何まで昨日の張り込みと完全に一緒です。
上司:この後もお決まりの15分
 遺書読んで何の問題もなく遺産を仲良く3分の1づつ。
 1円の果てまで分けっこしてさ。
 1週間後に内装工事も完了。1ヶ月後に買い手もついてさ。
 お互いの問題に首つっこまないように3人の兄妹はそれぞれの道を歩むと。
部下:いいことじゃないですか。
上司:長女なんてあれ、リストカットでしょ?。
 次女はそんなこんなで一緒に暮らしたくないんじゃない?
 長男の嫁なんてパニック障害か燃え尽き症候群だからね?
 そしてなんとなんと。次女はこの時、すでに
部下:彼らの人生がどうだろうが我々には関係ありません
 われわれの仕事は犯人特定と確保です。
上司:周辺を探っただけですー
部下:我々の手がかりは、2051年に現存する、この日記だけです。

 部下、古い「パパ日記」下巻(30年経った風化した感じ)。

上司:なんとか日記、半分。
部下:はい。
上司:なんでこれが手がかりなんだっけ?
部下:証言と合わないんです。
上司:あー
部下:存在していないはずなんです。この父親の日記
上司:なんでちぎれてんの?
部下:謎です。
上司:昭和60年の結婚昭和61年就職。同年8月長男出産。つくづく、つまらん日記だよね。
部下:日記なんてそんなもんでしょ?

 間

部下:こんな真面目な人が大罪を犯したってんですから、おっかないですねぇ。
上司:ぬすっとめ。
部下:そもそもどっからぬすんだんでしょう。
上司:時間旅行ベルトな!
部下:警官の拳銃を盗むみたいなもんですからね。
上司:そうだ!
部下:はい?
上司:さっき30年前の現物を手にした時、えんぴつで「SF」って書いてたの、あれ何!?
部下:こっちは?
上司:ない。
部下:消えてるんですね。えんぴつだったから。
上司:SF。
部下:SF。
上司:調べて。
部下:えー

 チリリリン、チリリリリリン。黒電話がなる。

部下:はいインターポール特別捜査課時間係、え?はい、そば?
上司:またあのガキか。
未来少年パパ:へい、かけそば1丁!

 未来少年パパ(パパ0)登場。短パンに、ランニング、メガネ。虫取り網、カゴ。

部下:ああ、こちらは、インターポール日本支局ですね。かけそばは無いです。
未来少年パパ:あ、仮面ライダですけろー。
上司:切れ切れ!!
未来少年パパ:かめーーーん、ライライ!!
部下:切りまーす。

 チンッ。未来少年パパ退場

上司:なんで仮面ライライにそば注文されなきゃいけねんだよインターポールがよお。
部下:ノノ日記。金庫にしまいますね。
上司:おう。
部下:確認お願いしまーす。
上司:わかったわかった
部下:ノノ日記、はいりまーす。
上司:わかったって。
部下:あれ??
上司:あ?

 ウィーンウィーンウィーン

上司:ん?なんのおと?
部下:?!

 部下、机の引き出しらしき所から、

部下:、、、これ。
上司:ん?
部下:入れました?
上司:なに?

 もう一冊の日記『古パパ日記上巻』登場する。

上司:それ、、、前半半分?!
部下:どうして突然。
上司:貸して!
部下:まさか
上司:過去を、変えられた!
部下:いつのまに?

 上司、両方をひったくり、合わせようとする。 

上司:エマージェンシーコードレッド!
部下:未来に影響する初期値との差分!!、、、、、測定不能!!
上司:やっこさん、やりやがったあああ!!!

 慌ただしく、任務に戻る、部下と上司。

<タイムスリップのパパ>

 繁子、日記をみている。

パパ1:繁子。
繁子:え?
 赤と青のメガネ、旗「パパ1」、Gペン

パパ:未来は何によって作られるか知ってるか?繁子。
繁子:、、、パパ?
パパ1:パパだよ
繁子:パパ1?
パパ1:うん。昔、パパが手塚治虫の漫画で見た流線型の車が今、ほんとに走ってる。
 ゲームだって最初はこんなゲームウォッチっていう、白黒の。
 それだけでも驚きだったのに、最近じゃスリーデーらしいじゃないか。
 しかも赤と青の眼鏡をかけなくても、飛び出すんだって?
パパ0:あのー。
パパ1:え?
繁子:あ(話しかけたりするのか)
パパ0:お名前は?
パパ1:佐藤文雄です。
パパ0&繁子:え?
パパ1:未来は何によって作られるか知ってるか?
 パパはな、人間の余計な想像力だと思う。
 つまり現在は、過去に考えられたSFなんだよ。
繁子:SF、、
パパ2:繁子。

 パパ2手に旗「パパ2」

パパ0:わあ。
繁子:、、、、「パパ2」?
パパ2:うん。第二タイムスリップパパ再分裂体。ですかね。
パパ0&繁子:ですかね?
繁子:「パパ1」。
パパ1:第一タイムスリップパパ分裂体。
繁子:これは?(パパゼロを指差し)
パパ0:?(俺?)
パパ1:あ。
パパ2:はい。

 パパ2、パパゼロにも旗をわたす

パパ0:え?

 旗「パパ0」

繁子:ぜろ、、いち、、に?
パパ2:パパが会社で使っていたころのパソコンは黒い画面に緑の文字。
 ファイルを探すために命令を打たなくちゃいけないっていう。
パパ1:繁子、インターネットってすごいんだって?
パパ2:カメラで実況中継が出来るとか、世界中につぶやき声が広まるとか、
パパ0:もう、パパには見当もつかんなぁ。
パパ1:携帯電話なんてパパが産まれたころには無かったよ。
パパ2:それが今じゃあほら、スマホでちょいちょーいって。
パパ1:噂によると、テレビ電話がついてるんだって?
パパ0:そんなの青少年科学館にしか無かったのに。
パパ1:今作られている現実は人間の余計な想像力の産物だ。
パパ2:全部、人間がもしもこんなものがあったらと想像した結果なんだ。
3人:わかるかい、繁子。

 パパ12消える。
 繁子、前を向き直り、
 リストカットした手首を見る。
 なかなか消えない、深いキズ。

パパ0:繁子。
繁子:!

 繁子、声に驚いて、キズを隠す。平静を装い。

繁子:、、なに?
パパ0:大丈夫?
繁子:、、、
パパ0:大丈夫か?
繁子:私は、、大丈夫、、

 音楽が上がる

<兄増える。19時15分>

安斉:では、改めまして。本日皆様にお集りいただきましたのはですね。
 皆さんのお父様が購入された3LDKマンションの売却に伴う相続問題の経過報告と、
明男:え?問題?
安斉:そしてこの、

 女、安斉に遺書をわたす。
 遺書、銀行の封筒(北海道銀行)にガムテープ。

空女:うわ、本気で銀行の袋だ。
アサノ:こんな遺書で大丈夫?
安斉:遺書の開封でございました。
明男:過去形?
安斉:おい。
女:はい

 女、退場。

全員:?
女(声):お願いします。
利男(声):泊まっていいのココ?
女(声):いや、どうでしょう

 女、西成や山谷にいそうなおじさん(利男)を連れてくる。

全員:、、、、、、、
安斉:どうぞ、こちらへ。

 利男、みんなの前に立たされる。

利男:泊まっていいってこと?
安斉:違います。
利男:千円貸せ。
安斉:え
利男:五百円
安斉:その話、あとにしてもらってもいいですか?
利男:百円。だれでもいいぞ。
安斉:貸しますから。
利男:よっしや!!!!

 間

アサノ:だれ?
安斉:えーと、それはこれから
みつお:わかった。汚いおじさん
空女:みっちゃん正解!
繁子&明男:しずかに!
利男:おおう?
みつお:ああ?
利男:おおおう?
みつお:あああん?
利男:試してから言え!!!
みつお:試す?
利男:汚ねえかどうかはあ!
みつお:あああ?!
利男:試してから言えええ!!
みつお:試したらああ!!
安斉:ちょっと!待って!ストップストップ!
空女:負けるなみっちゃん!
利男:試してみろ!!
みつお:試したらあ!!
アサノ:何?何を試せば汚れがわかるの?
繁子:わかりません
明男:部外者二人外しませんか
安斉:それが、部外者ではないんです。
繁子&空女&明男:え?
利男:あ?お前か?
みつお:え?
利男:お前なのか?
みつお:え?
利男:じゃあおまえ!おまえなのか!
みつお:え?俺なのか?!
利男:そおおかああああ

 利男、みつおに抱きつく

みつお:わあああ
利男:そっくりだなあ!!(号泣)
みつお:きたねえ!きたねえ!きたねえ!
安斉:トシオさん!落ち着いて!
アサノ:なにこれイライラしてきた。
利男:おばさん金ある?
アサノ:おばさん!?
みつお:静粛に!♪

 皆、口々に騒ぎ出す。

安斉:すみません!静粛に!静粛に!
利男:うう。

 利男、泣きながら離れる。

 上司と部下、走り込んでくる。

上司:え。だれこれ!!
部下:昨日までこんな人いなかったのに
上司:やばい!ワクワクしてきた!
部下:係長!

 二人、隠れる。

安斉:順を追って、説明いたします。
 えー、先月、佐藤シゲルコさんより、管理会社の和田不動産に相談がありまして、そこから円山司法書士事務所の坂田に話が行きまして、鶴田法律事務所の私、安斉にお話が来まして、新藤探偵事務所の新藤ちゃんに相続人調査の委託を頼んだという流れで、ですね。
アサノ:もうパニックです。
空女:新藤ちゃん
繁子:いいからそこ
明男:流れはいいですから単刀直入に。
みつお:出ました単刀直入♪
明男:よし!よしよし!ちょと、先に、整理させてください。
安斉:はい
明男:気になっているのはですね。
 さっき、相続「問題」とおっしゃいましたが、
 うちの母は蒸発しており、父に親兄妹はおらず、
 残るは長男のわたし、長女、次女の3人ですから、
 相続分はキレイに3分割ってことになります。
 これに異議のあるもの。シゲルコは?
繁子:異議なし。
明男:まりあ
空女:別に。
明男:私も当然異論ございません。という非常に円満な相続が行われるのではないかと。
安斉:え、あのー、僕も最近までそう思っていたんですが。
 本日皆々様にお集りいただきましたのには、もちろん深いわけがござります。
アサノ:結論から!イライラしてきた。おばさんじゃないし!
明男:お願いします!
安斉:では、単刀直入に申し上げたいのはやまやまなのですが、大変デリケートな問題なものですからそのぉお
アサノ:ああもお。(胸どんどんどんどんどん)
女:(どうぞ)(と、お茶を利男に)
利男:お、どうも。ゴホン。

 女、そのままガリガリ君を取りに一旦退場。

安斉:明男さん、こちらへ。
明男:え?わたし?(行こうとする)
安斉:利男さんもこちらへ。
利男:はい!(一歩前)佐藤利男。おん年38歳!独身!こんにちわ!
安斉:いやあの!別室で!
利男:普段は南千住サンヤのドヤ街で土方をしております!金は天下の回りもの!貸すように!
アサノ:誰?!イライラする!(胸どんどんどんどんどん)
明男:なんなんですかこの男は!
安斉:まず明男様に別室で個人的に紹介してからと思ったんですが、、、
明男:は?なぜ私だけに?
アサノ:早く!おみやげ買わなくちゃ!(胸どんどんどんどんどん)
みつお:(のどコンコン)ワレワレハウチュージン
アサノ:おみやげおみやげ(胸どんどんどんどんどん)
みつお:(のどコンコン)ワレワレハワレワレハ
アサノ:おみやげおみやげ(胸どんどんどんどんどん)
繁子:やばいやばいやばいやばい
みつお:(のどコンコン)ワハハハ
明男:もうお願いします!
安斉:ではご紹介いたします!
アサノ:(胸どんどんどんどんどん)
安斉:はい静粛に!
みつお:(のどコンコン)ワハハハ
明男:(みつおを殴る)静粛に!
安斉:はい、こちら!お兄さんの、お兄さんです!

 利男、一歩前に出て、礼。一歩下がる。

全員:は?!
安斉:利男さん。あれを。
利男:ん?おお。

 利男、パパ日記の上巻を出す。机に置く。

繁子:あ。
明男:え?
空女:あ!これ。

 上巻を手にとる空女。

みつお:わかった!
 
 みつお、上巻を手にして

みつお:合体!カッシーーーーン!

 二つの日記、あわさる。

<ガサ入れ>

上司:はい全員そのままあ!!
部下:ピキャキョ!

 全員ストップ。
 ウィーンウィーンウィーン!

 二人、手帳をみせながら入ってくる。

上司&部下:みゅああん
上司:よおおし!全員動くな!
部下:インターポール特別捜査課時間係だあ!
上司:くうう!この瞬間を待っていた!
部下:係長!
上司:2021年12月5日13時18分45秒!
部下:未来へ影響する誤差、増幅する一方です!
上司:犯人は、この中にいる!!!タイムベルトを盗み出し、過去を改ざんし、未来に影響を与えようとしているふてえ野郎だ!犯人の目星はついている!自白するなら今だ!大人しくお縄をちょうだいしやがれ!
部下:係長かっこいい!
上司:犯人であれば、我々と同じくこのタイムベルトをつけ、高速移動をしているはず!
部下:てれれってれー!時空歪み感知器!
上司:ほう!
部下:タイムベルトで移動する人間は時空の歪みによる温度の上昇が見られます!それを数値化することで、白か黒かを判断できるのです!
上司:なんか、よく見るアレみたいだが、大丈夫か?!
部下:大丈夫です!時空歪み感知器、非接触型です!
上司:メーカーは?
部下:オムロンです!
上司:よし!中華製じゃなければよし!!
部下:はい!
上司:全員にためせ!少々手荒な真似をしても構わん!
部下:はい!!

 部下、全員の体温を測っていく。

部下:36.5度。白です!
上司:次!
部下:36.0度。白です!
上司:次だ!
部下:36.8度、、セーフです!
上司:ちょっとどきどきしてきたが、次だ!
部下:さんじゅう、、な、、、。
上司:どうした!
部下:もう一回測ります!
上司:そうしろ!手首にしろ!
部下:あそうか!手首にします!
上司:よし!
部下:係長!
上司:なんだ!
部下:どきどきしてきました!
上司:わたしもだ!
部下:あ、よし!よかった!白です!
上司:よかったとはどういう意味だ
部下:なんでもありません!次!
上司:全員手首でいけ!
部下:そうします!36.3よし!白!
上司:よし!どんどんいけ!
部下:全員やりますか?
上司:あたりまえだ!びびるな!
部下:35.8?低!
上司:いや、低い分にはいい!
部下:わかりました!
上司:どのみち、めぼしはついているんだ。
部下:さすがです係長。
上司:昨日までの我々の定点張り込みに登場しなかった人間。
部下:つまり、
上司:、、、やれ。

 部下、利男をピッとする

部下:36.5度、、、。
上司:なに?
部下:以上です!
上司:以上?
部下:以上です!
上司:この中には、
部下:、、いないということになります。
上司:こいつ(利男)では?
部下:ないようです。
上司:、、どういう、ことだ。
部下:犯人はこの中には、いません。
上司:なにいい?!!
部下:干渉可能時間限界です!
上司:くそおお!誰なんだあああ!!!!
部下:干渉解除!
二人:みゅおん!(悔しい感じの)

<ペペ日記>

みつお:完成ー!!!
空女:みっちゃんかしこーい!
みつお:(側面を、読む)、、、ん?
空女:どしたの?
みつお:ぺぺ日記?
空女:ペペ日記?
繁子:え?
明男:ペペ日記?
繁子:パパじゃなく?
みつお空女:ぺぺ日記
明男:なんだそれ。
アサノ:それが、どうしたっていうの?
繁子:これも、パパの日記。
安斉:という可能性が高いです。
アサノ:え?なになに?どういうこと?
安斉:明男さん。
明男:はい?
安斉:ご紹介いたします。
明男:え?わたしだけ?
安斉:はい。こちら、明男さんだけのお兄さんの、利男さんです。
明男:、、、、?

 間。

アサノ:、え?、なに?
繁子:お兄さん?
安斉:お兄さんです。
空女:お兄さん?
みつお:誰の?
安斉:お兄さん。
明男:私?
安斉:明男さん。
明男:だけ?
安斉:だけです。これ。戸籍謄本です。
明男:え、、、

 明男、戸籍謄本を、ひったくる。

明男:、、、、、、、、、、、、
利男:あ、おまえか?
明男:(目があう)
利男:おまえなのか?!

 一同、事態をまったく呑み込めず。呆然としている。

利男:おとーと!!

 利男、明男に抱きつこうとする。
 明男、カウンターでなぐる

明男:ぬああああ!!!
全員:!!!!??

 利男、ノックダウン

明男:ううううううううウ!!!!!

 明男、パパ日記上巻を手にして、開く。

<ママが違う>

 音楽「アヴェ・マリア」

 パパ1

パパ1:明男の名前は明るい男。
 前向きでバカみたいだろ?これは、パパがつけた。
 兄貴の名前は気の利く男。これも、パパがつけた。
 あ、そうそう。繁子、そして空女。
 二人には言ってなかったが、明男は
 ママが違う。
明男:ちょっと待てええええ!!!

 音楽おさまる。
 普通の明。

パパ1:あ。
明男:すいませんけども。
 話、進めたいのはヤマヤマですが。
 今、おれの時間にしてもらって。はい。
パパ1:、、、
明男:(にらむ)
パパ1:あ

 2人、退場する。

<戸籍>

 女、ガリガリ君を持って登場する。

女:、、失礼します。。

 倒れている利男に気づく。

女:大丈夫ですか!
繁子:そうだった、、
明男:申し訳ありません!!つい!
利男:うーん。
明男:大丈夫、ですか?!
利男:うん。ナイスパンチ
明男:え
利男:初めての兄弟喧嘩、だな。
みつお:やりにきーーー
女:、、あの、、ガリガリ君。
みつお:サンクス

 みつお、ガリガリ君を自分で受け取り、開ける。

みつお:(バリ)あ。
明男:(みつおをにらみつけながら)弁護士さん!
安斉:安斉です。
明男:安斉さん。でもあの、全然、よくわからないんですが。
安斉:まずですね。明男さんは、お父様の連れ子だった事が戸籍謄本に証明されております。
繁子:え?

 明男、戸籍謄本をあらためて見る。

明男:、、、、

 安斉、その戸籍謄本を覗き込み、指をさし。

安斉:これ、明男さんです。そして、繁子さん、空女さん。ですが、お母様が、、、違います。
明男:ほんとだ。
繁子:つまり、、、おにーちゃんはあたしらと腹違いってこと?
空女:え?腹違いってこと?
みつお:ママ違いってこと?
空女:ママ違いってこと?
安斉:、、、、、そういうことになります。
明男:、、お。おお。
安斉:そして、こちらですね。明男さんから、そのままこう、ずれていただいて、こちらですね。
明男:、、、、
安斉:ここ。ちょっと、読んで頂いてもいいですか。
明男:あ、読むんですか。
安斉:すみません。
明男:あ、『兄』
安斉:はい。お名前も。
明男:『兄、利男』
利男:(返事)はいっ

 元気よく返事する利男。パック酒『鬼ころし』を取り出す。

全員:、、、、、、、
明男:、、、あ、へー。

 場転

<エスエフ>

上司:昨日までは3兄弟だったのに、、
部下:ええ、4兄弟になりました。
上司:どうなってんのこれ?
部下:犯人は、ある逆説的な方法で、過去を改ざんし、未来を変えにかかっています。
上司:逆説的な方法?
部下:日記です!!
上司:日記?
部下:失われていたこの、日記の前半半分の登場により、新しい事実が産まれたんです!
上司:新しい事実?
部下:あるはずのないものが存在することで、
 未来は微妙に影響を受けることになります。
 たとえそれが、嘘でも。
上司:嘘でも、、、。
部下:いいですか?今ある現実は、昔はただの絵空事。つまり空想なんです。
上司:どういう意味?
部下:犯人は空想により、事実をねじまげにかかっています。
上司:どうやって?
部下:日記に、ウソを書き続けることによってです。
上司:ウソを?

 上司の手に、古ペペ日記。

部下:ペペ日記の前半部分には、SF小説顔負けの嘘が、丹念に書き込まれていたんです。
上司:、、えすえふ、、、

 上司、ペペ日記の前半を開く。

<ペペ日記上巻>

 パパ2登場する。

パパ2:シゲルコは産まれる直前まで『繁』だった。
上司:へー。
パパ2:でもつたい歩きの明男が産婦人科である機械にぶつかって、その光線がお腹の繁子に照射されたんだ。それで女の子になっちゃった。
上司:なんの機械?
パパ2:お察しのとおり、ある機械ってのはDNA変換装置さ。それで『繁子』になった。
上司:なにそれ
パパ2:あぶないとこだったぞ?ヒトゲノム配列次第で繁子はサルになるとこだったんだから。いやあ、サルじゃなくてよかった。サルじゃなくて、よかった。
上司:え?何言ってんの?
部下:ノノ日記改め、ペペ日記下巻は思った以上の内容です。
上司:DNAなんとかなんて、産婦人科にある?
部下:ま、ウソですから。
上司:なんかいいことあるのか、自分の日記に嘘ばっっかり。
部下:ポイントは、あとから加筆修正がされていることです。
上司:なんのために?
部下:過去の日記に書かれたウソは、ほんの少しづつ未来に影響し、やがて、現実となります。
上司:まさか、うそはうそだろう。
部下:その時代では嘘かもしれませんが、時代をこえ、嘘は、SFとなります。
上司:、、、えすえふって。まさか
部下:そうです!係長が発見した鉛筆の文字!
上司:SFぺぺ日記。
部下:SFとは一般には、サイエンス・フィクション 、藤子・F・不二雄の造語「Sukoshi-Fushigi」などをさします。
上司:グググッたのね
部下:他にサウンドファクトリー、スーパーファミコン、スペシャルフォース、スターフォース、スターフォックス、ストリートファイター、スペシャルフォース、セックスフレンド 、サンフランシスコ !!
上司:もおいいどれ!
部下:スペキュレイティヴ・フィクション。「科学」に限定されないSFの再定義、空想科学物語。
上司:スコシフシギ
部下:SFは、人類を進歩させる原動力になります。
上司:、、、、。
部下:夜でも明るくなる魔法、空を飛ぶファンタジー。最初はただの空想でした。しかし時を経て。エジソンの電球や、ライト兄弟の飛行機を生み出します。
上司:なるほど。
部下:我々は経験と環境と知識によって、己の人生を進んで行きます。
上司:つまり。
部下:過去の自分に影響しうる言葉を選ぶのは、そう難しくはないはずです。
上司:、、、

14■ママが違う・続き■■■■■■■■■■

 屋根にあたる雨の音。
 サアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

 パック酒「鬼ころし」を飲む利男。

明男:あ、へー。、、、そうなんだー。そうですかぁ。わかった?
繁子:う、うん。
明男:うん。そうなんだねっこれによると。空女、わかるか?
空女:腹違い。
みつお:ママ違い
空女:ママ違い。
明男:そんな言葉はナイ!っつってな。ふーん。へえ。それで。兄、利男さん
利男:はい!
明男:元気元気。な?わかるかお前。
アサノ:ごめん、ぜんぜんわかんない。
明男:だな。ちょっとな。整理しよう。あっちで。ね。休憩。ね?
 ここで休憩取らなかったらいつ休憩とるんだっていう。人生の休憩っつってね?な?
アサノ:え?なに?だれ?
明男:わかんないな。わかんないわかんない。そんな簡単にわかってたまるかって言うさ。
アサノ:え?わかる?
みつお:(利男をガリガリ君で指差し)兄。
明男:すごい。呑み込みが早い。じゃおやじは再婚だったてことか。聞いてた?ま、いっか、今は。
 ちょっと休憩。お茶、いただきます。ちょっと俺、俺の部屋。
繁子:物置になってる。
明男:あ、居場所がない。じゃトイレ行ってくるトイレ。どうだお前も行くか?
アサノ:え?なんで?
明男:な。行かないよなっ。だってトイレは一人で入るものだから。
 はい、ちょっとトイレお借りします。

 明男、退場する。

アサノ:え?わかる?わかるの?
みつお:(利男をガリガリ君で指差し)義理の兄。
アサノ:あそー?そーなっちゃう?やばいやばい。なんか心臓。鼓動激しんだけど。
繁子:あ、まずい。
アサノ:(どんどんどんどんどん)
みつお:(こんこんこん)ワレワレワレワレ
アサノ:(どんどんどんどんどん)
繁子:おねーさんっおねーさんこっち。
アサノ:へいきへいきっ心臓破裂しそうなだけだから。
繁子:こっち。どうぞこっち!あたしの部屋。
アサノ:ぜんっぜん平気。ぜんっぜん平気(どんどんどんどんどん)
繁子:まりあ、お水っ

 アサノ、繁子に付き添われて退場。

空女:なんかスゲーことになってきた♪

 空女、お茶を持って退場。

みつお:なんか頑張れー

 ガリガリ君を食うみつお
 酒を飲む利男。

利男:え?こっちは?弟?
安斉:いえ。違います。
利男:関係ないの
安斉:あ、えっと、妹さんの、、ええっと
みつお:彼氏?
安斉:いや、聞かれても。
みつお:結婚しよっかなぁとも、思っていて。
利男:うおい!妹を幸せにできる男か?!なんつって。はーっはっはっはっは!
みつお:こいつファブりてぇ。
女:あ、買ってきます!(退場しかけ)
安斉:いやいいよ!。
利男:(寝る)グォオ、グォおお。
みつお:うわあ寝た!漫画か!
安斉:ああ。どうしよう。
利男:グオおおお、グおおおおお。
みつお:弁護士って大変だね。
安斉:いや、いつもはそんなことないんですが。
 なんか今日は方角も悪いっていうか。
みつお:方角?
安斉:もともと、憑かれやすい体質で
みつお:虚弱体質?
安斉:いや、憑依体質。
みつお:なにそれ。
安斉:なんか引き寄せちゃうっていうか。
みつお:へー。がんばって。
安斉:どっか。ふとん。
みつお:こっちにおじさん部屋あったけど。
安斉:あ、じゃ、そこに。よっ。
女:あ、(手伝おうとする)
安斉:ちょっと持ってもらえる?
みつお:手伝う?
安斉:あ、すみません。
みつお:せーの!ああ、だめだ。
利男:はくよ?
安斉:ええ?!
みつお:ちょーうぜえ!
安斉:みつおくん!トイレ!
みつお:長男がいま
安斉:もおいいや、風呂場!!

 安斉、みつお、利男を担いで退場。

女:、、あ、、、。

 女一人、残る。

 机の上に置いてある、半分づつと思われていた日記が二つ。

 それを大事そうに手に取る。
 
 ぺぺ日記、後半をひらく。音楽『アヴェ・マリア』がかかる。

<ペペ日記後半戦>

部下:係長!
上司:なに?
部下:30年後のペペ日記をみてください。
 おそろしいことが起きています。
上司:どしたの?
部下:この30年で、さらに加筆修正が進んでいます。
上司:どういうこと?
部下:ぺぺ日記下巻も、上巻に呼応するように、ウソでうめつくされてしまいました。
上司:いつのまに!

 パパ1、パパ2登場。

パパ2:昭和61年4月1日。就職。
パパ1:それと、国際的スパイも始めた。
部下:ウーバーイーツみたく言ってます。
上司:え?副業?
パパ2:昭和63年3月、北海道釧路支部に転勤を命ぜられる。
パパ1:同月、遺伝子組み換えを受け、自身を腐らないようにする。
上司:大豆か!
パパ2:いたかった。
部下:歯医者か!
パパ2:同年6月、長女・繁子誕生。
パパ1:宇宙飛行士の免許を記念にとる。
上司:記念に?
部下:なめんな!
パパ2:平成10年
パパ1:精力倍増計画発動
上司:すごい計画ですね。
パパ2:まさかの妊娠
上司:成功!
パパ1:そう、性交に成功
上司部下:だまれおやじ
パパ2:繁子が大喜び。
パパ1:性の知識を君に与える
上司:やめたげて
パパ2:明男は複雑な顔をしてる。
部下:そりゃそうだ。
パパ1:修行に入る。
部下:なんの?
パパ1:シャーマンキングにオラはなる
上司:ジャンプ混ざってる
部下:もういい曲止めません?
パパ2:平成11年1月、次女・空女が産まれる。
パパ1:パパは笑った。ママは泣いた
上司:、、お?
パパ2:みんな大喜びだった。
パパ1:パパも、利男も、明男も、繁子も、もちろんママも、みんな大喜びだった。
部下:、、、
パパ2:そして平成12年、1999年、ママがいなくなった。

 古ペペ日記を閉じる。

上司:ねー、アナログの本持ってる?
部下:もっぱらキンドルです。電子ブック。
上司:わたし、アナログ本、集めるの趣味なんだけどさー
部下:へー。以外。
上司:表紙、この厚みにしては、本が薄い気すんのよね。
部下:どういう意味ですか?
上司:つまりこれ、真ん中が足りない気がする。
部下:え?
上司:うん。
部下:ほんとですか?
上司:「勘」
部下:、、、、勘。
上司:ねえ、
部下:はい
上司:犯人は、一体何を変えたいの?

 音楽「Third Man Theme」

<繁子の独白>

繁子:ママは妹を産んで1ヶ月もしないある朝、突然家を出ていきました。
 パパはママを追うふうでもなく、その日もいつもと変わらず出勤しました。
 朝の7時から夜中まで、毎日パパは仕事でした。
 高校に入ると私はパパと顔を合わさない日が多くなりました。
 ある日パパは会社に行く途中に倒れて病院に運ばれ脳溢血でそのまま死にました。
 久しぶりにパパに会ったのはお通夜の時でした。
 棺に、パパが大事にしていた分厚い日記を入れたような気がしたんですが、あれは、記憶違いだったみたいです。

 音楽消えていく。

<女>

 サアアアアアアアアアアアアアアアア
 いつのまにかまた、雨が降っている。

女:、、、、、、、、、、、

 ペペ日記、上下巻を、右と左に置き、
 自分の鞄から、風呂敷の包みを出し、
 その中央に奥。
 同じような大きさ。
 包みを解こうとすると、繁子

繁子:あ、どうかしました?
女:え?いや。別に。ちょっと汚かったから。
繁子:あ、すいません!なんかとっちらかっちゃって。
女:いやぜんぜん!ぜんぜん。
 なんかお飲みになります?
 買ってきますよ?
繁子:ああ、まださっきのありますから。
女:あ、はい。
繁子:(タメイキ)
女:、、大丈夫ですか?
繁子:え?ああ、まぁ、ちょっと、びっくりしてますけど。
女:、、、ですよねぇ。
繁子:こういうことは、よくあるんですか?
女:え?
繁子:遺産相続で。
女:は?
繁子:親戚や兄弟増えたり。ま、腹違いが判明したり。
女:ま、どうなんですかねぇ。
繁子:あの、法律事務所の方じゃ、
女:あ、お手伝いです。お手伝い。はは、はっははは。
繁子:なーんか。(しげしげ)
女:え?、、はい?、、え?
繁子:誰かに似てますよね?
女:え?あたし?そう?ですか?
繁子:言われません?
女:いやーどうだろう。*****に似てるってたまに。なーにを言ってんだっつってな。はーっはっはっは!!たいじょー

 考える

繁子:誰かに似てる、、、

<異母兄妹>

 空女登場する。

空女:いやーウケるね、にーちゃんのお嫁さん。
 あたしめちゃめちゃ写メっちゃった。
繁子:え?写メ?
空女:みる?イタコみたいだよ。
繁子:やめなさい。
空女:へいへい。
繁子:落ち着いたみたい?
空女:いちおね。
繁子:良くなってないんだね、にいちゃんのお嫁さん
空女:あたま?
繁子:、、うーん。

 間

繁子:まりあ。
空女:なに。
繁子:あの子大丈夫?みっちゃん。
空女:なんで。
繁子:バカすぎる。
空女:そこがいいんだよ。
繁子:演劇の人?
空女:そー。
繁子:あんなんで台詞とか覚えられんの?
空女:わりとねー。
繁子:あんたは?
空女:やめない。
繁子:そー。いいねえあんたは。自由で。

 利男、登場。

利男:ここいいの?
繁子:あ、どうぞどうぞ。

 土方、座ると思いきや寝転がる。

空女:うわっ寝たし。
利男:明日も仕事だからさ。体力勝負だからな。飯場(はんば)遠いんだ今回。今日休みで丁度。
 トンコされた!っつってもシャクじゃん。な?うははは。
空女:何語だ?
利男:あ、なんか飲むか?
繁子:お茶ありますよ。
利男:しゃらくせえ。酒酒っ

 ポケットからたくさんの鬼殺しやワンカップ。

繁子:あ、ああ、思ったよりも出てきますね。
利男:だろ。これがねぇと、ハジマラネぇ。な?

 妹、おもむろに土方の前に行き、写メをとる。
 
利男:お。いえーい。
繁子:何すんの。
空女:「お兄さんが、出来た。」ツイッター
繁子:やめなさい

 利男、「起きればもっと飲みやすいのに」と誰もが思う格好で寝ながらのみはじめる。

利男:ちゅーちゅー

 妹、またおもむろに前に行き、写メ。

空女:「起きれば、もっと、飲みやすいのに」送信。
繁子:やめなさい。
利男:のむ?おごりだ。
繁子:あ、いえ。
利男:試してみんか!まず!試せ!
繁子:いただきます。
利男:それ高いんだよ
繁子:すいません
利男:これとか。ううん、ま、これだな(結局一本)
空女:「ケチ」
利男:ケチでけっこうコケこっこう
空女:「たすけて」
繁子:ツイッターやめなさい。

 兄、登場

明男:あ、さっきは、あれだった。ま、みんなちょっと集合。あれ?他は?
空女:彼、ココイチ行った。嫁、ふらりと消えた。
繁子:そうなの!?
明男:大変じゃないか嫁!ちょっとタンマな!

 兄、携帯で電話をかける。

空女:大変だね。結婚って。
繁子:みんながみんな、ああではないと思うよ。
空女:ほんとに?
繁子:願いたい。
空女:お兄ちゃんって、パパみたいじゃない?
繁子:え?そう?あんなにしゃべんなかったよ。
空女:え?しゃべったよ。あたふた。
繁子:あたふた?
空女:緊張するらしくて。
繁子:え、そうだった?
空女:年、離れてるから気使ったんじゃない?
繁子:へえ、知らなかった。
空女:超おしゃべりでうざかったもん
繁子:あれ?なんだそれ。
空女:愛情の差じゃない?
繁子:そうか。妹の強みか。
空女:逆じゃない?
繁子:逆?
空女:あたしにはちゃんとしゃべってくんなかったってことだよ。
繁子:そうかなぁ
空女:そうだよ。
繁子:あたしたちってさあ、パパのことなんもわかってなかったのかもね。
空女:ママも。

 兄、電話終わった。

明男:すまん。ちょっと。あれだ。話。安斉さんに。
姉空女:どした?
明男:嫁まいご。おれ行く迎え
空女:インディアンか。
明男:ははははは

 笑いながら兄退場。

繁子:、、だいじょぶかな
空女:ずっと思ってたこと言っていい?
繁子:いいよ。
空女:これ、お棺に入れたよ?
繁子:え?
空女:あたし。

 間

繁子:、、、実はあたしもそう思ってたんだけど。
空女:、、入れたよね。
繁子:だよね。
空女:、、こわ
繁子:、、こわ
利男:チュウ!(酒)
二人:こわ!!
利男:つまみ。。お。

 利男、女が忘れてった風呂敷の包みを開ける。

繁子:あ、それ。

 止める間もなく、風呂敷がほどけ、中から。

利男:なんだっ、、また日記かあ。
繁子:え?

 サアアアアアアアアアアアアアア

 空女、繁子、おそるおそる、
 日記を合体させると、

 パパ日記完成。

繁子&空女:!!

 安斉。

安斉:どうしました?

 女、忘れ物に気づいて走りこんでくる。

繁子&空女:パパ日記。
女:!あ(遅かった)

<停電>

 突然の停電

繁子&女:え?
空女:え、くら!
女:やば。
繁子:わ、なに?
明男:なんだなんだ。
みつお:出た停電
アサノ:ちょっと!繁子ちゃん!
明男:どうにかしろ
繁子:え。わたし?
空女:うける。なんなの今日。
みつお:なんかあんじゃね?

 利男、頭のライト。

全員:お。
利男:ブレーカーどこ?
女:準備、いいですね。
利男:仕事柄な?
繁子:あ、そっか
利男:まかせれえ
明男:あ、えっと、たしかこっち
利男:ブレーカー無理くりあげりゃ一発よ。
繁子:むりくり?
アサノ:何も使ってないのにねぇ
明男:たしかに。
繁子:わたし、他の明かり、探してきます。
女:お願いします。
みつお:俺もブレーカークエスト!
空女:みっちゃん素敵

 みんなぞろぞろとブレーカー見物に行く

 間

 暗い中、スマホのライトをつける。
 
 こめかみを押し、うずくまっている安斉

女:安斉さん?
安斉:ああ、、すみません。頭痛が。
女:大丈夫ですか?
安斉:いや。ちょっと。なんか。重くて。
女:気圧ですか?
安斉:いや。部屋の。
女:重い?
安斉:なんかこの部屋の、空気が、重くって。
女:、、。
安斉:まだ昼なのに、暗い。
女:わかります。

<どういうこっちゃねん>

 別次元に照明

部下:時間旅行を使った犯罪のほとんどはこうです。
 「過去に行き、現在を有利な現実にするために、過去を作り変える。」
上司:つまり?
部下:歴史、変わっちゃってます。
上司:刺激のある毎日。キタ。
部下:ダメなんですって!
上司:どうなるのこれから
部下:わかりません。
 単純なパラドックスではありません。
上司:ほう。
部下:犯人は、過去の日記を改ざんすることにより、これからの未来だけでなく、これまでの過去、つまり歴史を書き変えているからです。
上司:つまり。
部下:もうひとつの正しい歴史が。
 まるで列車が分岐点で路線を変えるかのように動き始めたのです。
上司:ほほう(わかっていない)

<遺書開封>

 SE時報
 「ぽーーーーん。ぴっ、ぴっ、、
  ただいまより、午後1時30分ちょうどを、お知らせします
  ぴっぴっぴ、ぽーん」

 繁子、火をつける。

安斉:(具合悪そう)ごほ!時間になりました。
女:大丈夫ですか?
安斉:だいじょうぶでほ!
空女:この雰囲気で遺書開封?
明男:ブレーカー上がんないしな。
繁子:ろうそくしかなくて、仏壇の。
利男:備えとけよ妹ぉ。
繁子:すみません
アサノ:なんか、、、
みつお:オカルてぃっく。
安斉:ごほ!げえほお!ごぼ!ごおおおほおお
アサノ:ちょっと怖いんですけど!
明男:大丈夫ですか?
女:もう、読みましょう。はい!
安斉:、、こふ、、ごふ、、、

 安斉、咳を我慢しながら遺書をあける。

女:では、安斉さん。お願いします。
安斉:ごほ!「遺産は、均等に分け与えるものとする」
 げほ!ごぼ!どほ!ぶほおお!げほげほ!げほ!んっ!
 、、、以上です。
アサノ:こわいこわいこわいこわい
明男:なに?気を持たせたわりに。
空女:つまんねー遺書。
繁子:うん
明男:まぁ、そういう親父だ。
みつお:じゃ、こいつも?
安斉:はい。げほおお!
利男:ありがとう!!
空女:ちぇ、4当分か
明男:いいよもう。俺は帰りたい。
アサノ:お土産買ってからね
安斉:あの、それがですね。ごほ!ごふ!
アサノ:え?

 安斉、もう一枚の封筒を出す。

安斉:こちら、ご覧ください。

 封筒にマッキーで「遺書2」

繁子:遺書、2。
全員:2?
安斉:はい。

 安斉、突然こめかみを激しく揉み出す。

安斉:あああああああああ、あああああああああ、
アサノ:なになになになにあれなに(どんどんどんどん)
みつお:(こんこんこんこん)わらわらわらわら
安斉:きたきたきたきたきた、、ああああああ
女:え?今?!
アサノ:なになになになに(どんどんどんどん)
みつお:(こんこんこんこん)やばやばやば!
明男:(みつおの首をしめながら)おまえこの!おまえ!
安斉:強いなこれ。強い。だめだ。だめです。
繁子:え?
安斉:ごめん。

 安斉、寝る。

繁子:寝た?!
利男:おおおおおお

 ろうそく、ふっと消える。

繁子・空女・アサノ:ぎゃああああああ!!
明男:おちつけ!おちつけ!!
アサノ:こわい!こわいんだけど!ちびる!!
みつお:でました憑依体質!
利男:やっぱそうかあ
女:え?

 明かりがパッと、つく。

全員:あ。
繁子&空女:もどった
アサノ:、、、ああ、もう、むり。
明男:すわれ、おちつけ。ああ、すわってるか
空女:みっちゃーーーん
みつお:どうなったの?
利男:悪いことはなさそうだぞ
みつお:へー。

 みな、口々になにかいう。

女:え、ええと、じゃあ、わたし。わたしか。この場合。

女:ええと、静粛に!こ、こんにちわ。お手伝いの女です。**日記あらため、ペペ日記あらため、パパ日記から、これが発見されてしまいました。
全員:、、、
女:残念ながら、真ん中の日記から、日付的に新しい「遺書2」が出てきたということで、えーーーーと。
明男:あの、安斉さんは、どうしちゃったんですか?
女:ちょっと、えーと、ちょっとなんだか具合が悪いらしく。朝から。はい。
全員:、、、

 間。

繁子:あのっ、
女:あ、はい?
繁子:どうして持っていたんですか?真ん中の日記。
女:えっとー。あのー、事務所の方から、渡すようにと。はい。
繁子:、、、
明男:さらに親族が増えるとかでは
女:ないです。それは。もう。はい。
安斉:げっっっはあああああ!!!
全員:!!
安斉:ううん。お?

 安斉、起き上がる

安斉:お。うまくいった。
繁子:大丈夫ですか?
安斉:え?ああ、そうかそうか。やー。そろったなぁ。
全員:?
空女:なに?
安斉:おー。まりあ。
明男:安斉さん?
安斉:お。明男か。ふけたなぁー。
繁子:あのー。安斉さん
安斉:おー。繁子。
女:安斉さんっ呼ばれてますよ。安斉さん。
安斉:え?
女:安斉さん
安斉:安斉。あ僕か。僕だ安斉。ごめんごめん。えーと?君は?
女:なにいってんの。わたしです
安斉:ああ!来てくれたんだ!いや!
女:あなたが手伝えって言ったんでしょう。
安斉:いやあ、老けないね。
女:ほら、続き。
安斉:ありがとう

 遺書2を渡す。

安斉:えーーーと、はい。んあーーー。だめだ。
繁子:え?
安斉:歳には勝てんなぁ

 安斉、メガネをかける。

部下:老眼鏡?
上司:そして、エプロン。
部下:あ、いつの間に。

安斉:「追記。もしも今、飛び抜けて不幸なものがいるようであれば、遺産はすべて、その者に与えるものとする」以上!

 間

空女:え?どういう意味
安斉:そのままの、意味かな。
アサノ:分与というよりかはつまり。
利男:総取りだあ
明男:不幸しだいでは、
みつお:ひとりじめ
安斉:そだね。
繁子:なんで、、、

部下:なぜわざわざもめさせるような遺書を。
上司:たしかに。
部下:ますます犯人の意図がわからないですね。
上司:たしかに。

 間。

女:あの、こういうことじゃないですか?
 裕福な人に遺産が分配されるよりかは、
 例えば、貧しい人に渡ったほうがいいと。ねぇ?
安斉:ああ、いいこと言うね。そういう感じです。
みつお:じゃ、あいつに決定じゃん?(指)
明男:指をさすな!
利男:俺
アサノ:いやそんなことない!
空女:そんなことない!
アサノ:幸せっていうのは、お金じゃ計り切れないと思うわけ。ねぇ?
空女:そう!貧乏でも幸せってあると思う!
みつお:お!敵の敵は味方
明男:うまいこというね
安斉:では、多数決をとる。
女:はい。「貧乏でも幸せって、ある」
安斉:はい挙手!
アサノ&空女:はい!
空女:ほら!
アサノ:あなた!
明男&みつお:はい。
繁子:じゃ、はい。
利男:はい!
明男:おお。まさかの。
女:では、財産の額によって、不幸を計るものではないと。
 そういう判断にさせていただきます。はい。
アサノ:じゃ、何で決める?

 間

安斉:では、こういうのはどう?
 ええ、私がですね。僭越ながら、審判をします。
空女:どういうこと?
安斉:え、皆様のお話を伺いまして、そして、
 私がこの人こそ不幸だぞという方を選出させていただくという。
上司:、、、不幸自慢コンテスト、そういうこと?
部下:はい。
アサノ:どう?あなた?
明男:そう、、だなぁ。
利男:おっけい!
繁子:ああ、また、まさかの
明男:どうだ?繁子?
繁子:私はまぁ。
みつお:おっけー?
空女:おっけーい
安西:ハイ!それでは参りましょう。
女:「ちょっと聞いてよわたしの不幸」
安西・女:ふこうじまーーーん、コンテスト(キャイーン)

上司:ストップ!
部下:ピキョキョ
上司:何あのポーズ!
部下:祖父から聞いたことがあります
上司:なんて?
部下:あの動きが表す意味は「友愛」。
上司:キャイーンが?
部下:なんか見たことあるんですあの老眼鏡
上司:どこで?
部下:忘れました。
上司:思い出して!

 時間が進みだす。

安斉:デッデデンデーン!さあとうとう始まりました、『イカす!不幸自慢コンテスト!』
女:一番不幸な人が、遺産総取りだい!
上司:相原勇か
部下:だれ?
安斉&女:ファイッ!
空女:じゃああたしから。不幸自慢。
みつお:かっけー!

 空女、お腹を叩き、

空女:もう3ヶ月!そろそろおろすの厳しい!
繁子:え?
明男:、、、、おまえ、本気で言ってんのか
繁子:、、、妊娠?
空女:そー。
繁子:誰の子?
空女:みっちゃん。
明男:、、、そうか。
アサノ:ふーん。じゃあ、おめでただ。
繁子:あ。
アサノ:だってそうでしょ?おめでたいでしょ?ねぇ?
繁子:あ、そうですね。この場合。
明男:まあ、そうだなぁ。おめでたっていうくらいだから、
アサノ:不幸ではないわよねぇ?
繁子:そうですねぇ
空女:ざんねーん♪
安斉:は?
空女:不幸だよね?
みつお:ま、不幸っちゃ不幸か。。
空女:え超不幸だよ。あたし泣いたし。
みつお:あそっか。じゃ不幸だわ。
繁子:え?なんの話?
空女:実はー、みっちゃんがぁ、認知してくれないわけ♪
明男&アサノ&弁護士&繁子&女:え?
空女:ね?超不幸じゃない?!
安斉:まあ、今んとこトップですねぇ。
アサノ:え、まじで?!
明男:おまえ認知しろよ!
繁子:しなさい!
みつお:うわは、なんかおかしくないすか♪
明男:おまえの子なんだろ!!
みつお:えええ、どおおっすかねぇ
利男:おれの妹が尻軽女だとでも?おうおうおう
安斉:あ、利男くん出てくるといちいちややこしくなるからそっちに。
女:はい。利男くんっ(利男を連れていく)
空女:こんな所で不幸が役立つとは思わなかったなぁ。みっちゃんえらい!
みつお:実力っすよ
安斉:それでは、次の不幸は〜〜〜。
安斉&女:この人だい!
上司:三宅裕司と相原勇か
部下:だれですか?

 明男

明男:よし、言おう!いっちゃおう!
 おまえら、びっくりするなよ?
 特に、アサノ。あまりびっくりするな。
アサノ:え?
明男:よし!実は!

 お腹をたたき、

みつお:妊娠6ヶ月
明男:ハイぽっこり!違う!
全員:おおおお(ぱらぱらと拍手)
明男:うん、まばらな拍手、ありがとう
アサノ:え、なに?なんのはなし?
明男:えーと、。実は、、、、仕事、やめた。
アサノ&繁子&空女:え?
明男:すまん。ほら、言い出しにくくてな。おちつけっ!おちつけよ!どうにかする!どうにかするんだよ?
 わかってる!舞空も、もうすぐ小学校だ!わかってるんだよそんなことは!な?
アサノ:そんなこと?
明男:いちいち挙げ足とるなよそやって
アサノ:挙げ足じゃない。
明男:どうにかして再就職してから、
 どうにかしてからあらためてお前に言おうと思ってたんだよ!
 「あなたの年で再就職なんて!」というんだろ?な!わかってる!
 大変だ!この年で!なかなかない!だからこそ、いままで。
アサノ:ねぇ。
明男:すまん!いままで黙ってた!許せ!
アサノ:なんで今日、突然言うわけ?
明男:うんわかった。頼むから、な。まくしたてるな。頼む。
アサノ:あたし、まくしたててないけど。
明男:いや、とにかく、ちょっと座って。おちついて。
アサノ:落ち着いてるけど。
明男:だから、すまん。
アサノ:いつ?
明男:、、、3月。
アサノ:3月。
明男:すまん。会社、うまく行ってなくて、リストラかかりそうだったとこで、、上司とモメて。だから、
 違うとこ口聞いてもらったりしててさ。そんで、それまでは日雇いで現場やっててさ。
 朝、スーツでさ、コインロッカーに作業着入れてて。結構いるんだな、今。仮面サラリーマンっていうの。
アサノ:、、、
明男:仕事無い日はパチスロ行ってな。

 雨。

明男:おい、聞いてるか?だいじょうぶか?パニックか?おい。
アサノ:、、、あんまりバカにしないで欲しいさ。
明男:え?
アサノ:本気で言ってんだ?それ。
明男:、、なにが?
アサノ:本気で、騙されてると思ってた?
明男:、、、、え?
アサノ:、、何ヶ月も本気で気づいてないと思われてたんだ。
明男:、、知ってたの?
アサノ:、、、あたりまえでしょ
明男:、、、いつから。
アサノ:3月。
明男:、、、あの、
アサノ:、、、あんまりバカにしないで欲しいさ。
明男:おれ、
アサノ:ちょっと、ごめん。

 アサノ、外へ行く。

明男:、、おい。
アサノ:こないで。
明男:、、、、、

 間

安斉:非常に、不謹慎ですが、、
女:明男さん、不幸、ダントツトップです。
明男:、、、、よ、、よし(小さいガッツポーズ)
空女&みつお:えええええ!
空女:なんで?
安斉:まぁ、修羅場感がかなり。
女:ねぇ。
空女:ええええ母子家庭母子家庭!ててなしご!
みつお:ててなしご?
繁子:父親の無い子供
空女:さみしさからの非行!家庭内暴力!
みつお:おうドメスティック!
空女:みっちゃんなんか言ってやって!
みつお:よし!任せろ!
空女:ちょうだい!私に不幸!
みつお:とおおおう!!

 みつお、おどり出る。
 ガリガリくん「当たり棒」見せる。

空女:あ!
みつお:当たった。
空女:わあ、みっちゃんすごい
みつお:な?じゃ。結婚してくれ。
空女:、、、え?

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