会社のギャンブラーと競輪に行った話
はじめまして。私はHamee株式会社で働いている塚田と申します。商売人応援メディア「ニューアキンドセンター」の編集をしたり記事を書いたり、クラウド(SaaS)型ECプラットフォーム「ネクストエンジン」のマーケティングをしたりしています。
会社noteでも書く機会をいただけて光栄です。同じHameeで働くギャンブラー高木良氏と一緒に、小田原競輪へ行った話です。
■根っからのギャンブラー、高木良氏と行く小田原競輪
朝。小田原駅の新幹線口に朝10時待ち合わせ。3分遅刻で現れた高木氏は、やたら眠そうであった。「何でそんなに眠そうなんですか?」と聞くと、「朝まで麻雀をしていて、2時間くらいしか寝てないんです」と言う。
この日はHameeが誇る根っからのギャンブル狂、高木良氏と小田原競輪を楽しむ約束をしていた。小田原競輪は、小田原における最大の娯楽施設と言っても過言ではない。せっかく小田原で働いているので一度は行ってみたいと思っていたのだが、一人で行って負けると帰り道が辛そうなので、なんとなく機会を逃していた。そんな折、同じHameeで働き、数々のギャンブル敗北伝説を持つ高木良氏が競輪に興味を持っていると知る。高木良氏であれば自分よりダイナミックに負けてくれるに違いないと、お声がけさせていただいた次第である。
麻雀、ポーカーにはやたら詳しい高木良氏であるが、競輪に関しては私同様ズブの素人という。競馬もやったことはないらしい。いいぞいいぞ。私は競馬はやったことがあるので、多少有利である。
小田原競輪場に着くと、100円の入場チケットを購入。自動改札ではなく、改札にいる係りの人に入場チケットを手渡しして入場する。2人ともコンビニコーヒーを手に持っていたところ、改札の係りのおばちゃんに「おいしそうねー、今日は寒いからね」と声を掛けられた。アットホームな雰囲気に、いきなりグっと心を掴まれる。
▲小田原競輪、いざ入場
■競輪新聞を買って、ファーストチャレンジ
入場してまずは競輪新聞を購入する。この新聞にはその日の全レースと、出場者と過去成績、結果予想などが詳細に書かれている。この日は佐世保競輪も同日開催しており、佐世保のレースの車券も買うことができる。小田原と佐世保で1部ずつ新聞を購入した。
1レース目は10:20発走。既に車券販売は締めきっていたが、とりあえず観戦するため観戦席へ行く。競輪のコースはバンクと呼ばれ、外周に行くにつれてカントと呼ばれる傾斜がつけられている。その傾斜がテレビで見るよりもかなりキツい、壁だ。スピードを出して転んだら、全身の骨が砕けそうだ。
▲小田原競輪の「バンク」
レースが始まり、おとなしく観戦する。最初の2周と少しはみんな出方を伺いノロノロ走る。先頭には「誘導員」と呼ばれる人が走り、風よけとペースメーカーを担う。最後約1周半になると、誘導員がいなくなり、選手たちが全力勝負、という流れだった。
2レース、3レースは早速適当に買ってみた。が、2人ともカスリもしない。なぜだ。ここにきて我々2人はようやく「競輪とはどんなものなのか」を真剣に知ることにした。インターネットで「競輪」「勝ち方」など頭の悪いワードで検索し、ついに「ライン」という概念にたどり着いた。
■「ライン」を知る
競輪は最終的には個人競技だが、レース中盤までは団体戦であることが分かった。例えば9人で走るとすると、3人グループ×3組だったり、4人・4人・1人だったりに分かれるのだ。そのグループを「ライン」という。最後の1周はバラけて個人戦になるが、その前のライン同士の戦いで勝利したラインの選手は、最後1周で俄然有利になる。つまり、実力的には5番手でも、勝利したラインの2番手であれば、2着、もしくは1着になる可能性が高いということだ。ラインは同じ競輪場で練習していたり、同じ県で選手登録していたりという、お互いの特徴をよく知った選手達で組むことが多いという。
それを知った上で競輪新聞を読んでみると、注目すべき欄があることに気づいた。それは「選手の一言メモ」である。そのレースに走る選手が、なにやら一言書いているのだ。「東北コンビの後ろ」とか「千葉の2番手」とか書いてある。最初見たときは何のことかわからなかったが、これこそがラインを表していたのである。「千葉の2番手」なら千葉の競輪場で練習しているラインの2番目を走ります、という宣言だ。この欄に「自力で頑張ります」と書いている選手もいて、最初読んだときは「みんなそうだろ」と思ったが、これは「どのラインにも属しません」という宣言だったのである。
■勝負師高木良の車券が火を噴いた
「ライン」という概念を理解した我々は、まず競輪新聞を見てどの選手達が「ライン」なのかを把握し、勝つラインを予想し、そのラインの1番手と2番手の2車単を購入する作戦に出た。
4レース目。8人が走るレースで、ラインは3人、3人、2人の構成。高木良氏は競輪新聞上で全く印がついていない選手2名だけで構成する不人気弱小ラインで500円ずつ2点買い。レースが始まると、その弱小ラインがなぜか道中のライン同士の戦いを見事に制し、そのまま2人でゴールイン。60倍以上つき、一瞬にして3万5千円を手に。
▲すごく嬉しそう
これまでのレース結果を見るに競輪新聞の予想は全くあてにならないことが分かっていたのに、私はひよって新聞で人気のラインを買ってしまい、外れ。これは良くない。このまま1日が終わり高木良氏だけが儲かっているなんてことになれば、私の心が持たない。小田原競輪が、いや、小田原そのものが嫌いになる可能性すらある。
■なんとか1つ当てた私
高木良氏の当たりで、「ライン買い作戦」が正しいことが明らかになったため、私もその買い方を信じて頑張ることにした。すると6レース。私が購入した弱小ラインの不人気が1着2着でゴール。300円しか買ってなかったが、見事60倍で1万8千円をゲット。高木良氏の金額には及ばないのが癪ではあるが、何とか心の平穏を取り戻すことに成功した。
▲1つ当てて心穏やかに
結局、その日一日で高木良氏も私も当てたのはその1つずつ。他のレースは全部外れた。全てのレースが終わった後、場内の「浜っ子餃子」という青空酒場でワンカップを飲みながら、「あと1レースあればもっと勝てた」とか「もっとこう買えばよかった」という話をひとしきりして帰宅。2人ともちょいプラスだったので、一発目としては良い結果だったのではないだろうか。
▲燦然と輝くワンカップ
■小田原競輪あるある
ここからは小田原競輪あるあるをお伝えする。
①売店のめしがうまい
場内の売店が出ており、小田原ならではのグルメが楽しめる。値段も手ごろ。私が食べたのは「イカの肝あえ丼」(600円)。あったかい白飯に肝あえのイカ塩辛が乗っており、とてもおいしい。明らかに白飯に対してイカが過積載なので、合わせて日本酒を買うのがおすすめ。
②高齢者が多い
とにかく高齢者が多い。視界360度おじいさんである。60代以上が9割くらいの感覚。インフォメーションセンターで老眼鏡の貸し出しサービスが行われているあたりも、その感覚の正しさを裏付けている。20~30代はほぼ見かけなかった。かといって活気が無いわけではなく、みんな元気に競輪を楽しんでいた。私も年を取ったらこんな感じで毎週遊びたい。
③みんな優しい
入場口の話だけでなく、働いている人がフレンドリーである。お酒も入って車券を買う際に何度かマークシートを塗り間違えたが、車券売り場の方はみんな親切に「ここ塗ってないよー。どのレースが買いたかったの?」と良い感じのタメ口で話してくれる。また、場内の青空酒場「浜っ子餃子」も良かった。おまけしてくれたり、足元にストーブ移動させてくれたり、とても親切。車券を買うときも「貴重品以外は置いて車券買ってきていいよ」と言ってくれた。なぜかお客さんも優しくて、一度も会話していないのにミカンを2個くれた。
▲「クリスマスだから」と店員さんがツリーを置いてくれた
④そもそも競輪って凄い
どのスポーツもそうだが、競輪もやはり生で見る面白さがある。ジリジリしたライン争いから、迫力ある最後のスパートまで、どのレースも手に汗握りながら楽しめた。選手で特に印象に残っているのは、メインレースで優勝した鈴木陸来選手。最後1周でみるみる上がっていくスピードが異次元で、他の選手が止まって見えた。今後も注目したい。
▲メインレースで優勝した鈴木陸来選手。ガタイがおかしい。
■まとめ
競輪場といえば、朝から一升瓶片手に酔っ払いの限りを尽くした爺達が焼き鳥の串でフェンシング、というのがごく一般的なイメージだと思うが、そういったことは全くない。安心して楽しめる場所だ。興味ある方は一緒に行きましょう。
あと、ニューアキンドセンターで塚田が書いた記事です。良かったら読んでください。