2兆円!セブンイレブン大博打!?決算書で読み解く③ ~安全性~
セブンイレブンの2兆円の大型M&A。前回は資金調達でどのような方法を取ったのか?について、解説しました。
今回のテーマは安全性です。2兆円も投資をして、セブンイレブンの経営は大丈夫なのでしょうか?
1.BSによる安全性分析
セブンイレブンの2021年11月末時点の貸借対照表です。
まず流動資産ですが、これは1年以内に現金化できるもので、2.6兆円あります。次に流動負債ですが、これは1年以内に支払いが必要なもので、3.2兆円です。
この2つを比べると、流動資産より流動負債が多い、つまり1年以内に現金になるものより支払いが多いと言うことです。これは、流動資産÷流動負債で流動比率と言いますが、これが87.3%です。流動比率は100%を切ると危険信号って言われてるので、ここだけを見ると非常に危険な状態に見えます。
さらに、もう一つ別の側面から安全性を見てみます。まず、純資産は3.0兆円です。これは、負債と違って返済不要のお金ですね。
総資産が8.6兆円です。純資産÷総資産を自己資本比率といいますが、これを35.3%です。全体の資産8.6兆円のうち、返さなくて良いものが35%程度あり、3割を超えると危険ではない水準なので、安全とは言い切れませんが、問題があるとまではいえなさそうです。
まとめると、セブンイレブンの安全性は、短期的な危険性はあるけれども、財務構造としては悪くない、つまり短期的な危険性を跳ね返すだけの(クリック)稼ぎの力があればこの安全性は大丈夫と言うことができます。ここで、本業を含む全体のお金の流れを確認します。
2.キャッシュフロー計算書で現金のバランスを見る
お金の流れをキャッシュフロー計算書と言うもので確認します。キャッシュフローは3種類で構成されてます。下記の画像のCFとは、キャッシュフロの略です。
まず営業キャッシュフロー、これは本業の稼ぎで、当然のごとくプラスが必須です。
次に、投資キャッシュフローは、事業投資や資産売却の時の現金の動きです。マイナスと言う事は事業投資をしていることなので、投資に積極的といえます。
最後に、財務キャッシュフローですが、これは資金を調達すると+、返済するとマイナスになります。
このように、営業、投資、財務の3種類のプラスマイナスを組み合わせることによって会社の状態を判断するのがキャッシュフロー計算書です。詳しく知りたい方は、概要欄にリンクを貼っておきますので、そちらをご参照ください。
セブンイレブンについてですが、まず前期の営業キャッシュフローがプラス3914億だったのが、当期がプラス4815億と伸びていますね。つまり、本業は順調に成長しています。
投資キャッシュフローは2940億のマイナスだったのが、今期は2.3兆円のマイナスと、M&Aのせいで、大きく膨らんでます。
財務キャッシュフローは、マイナス1153億だったのが、今期はプラスの1.1兆円と、大型の資金調達をしています。
これから何が言えるかといいますと、2兆円の投資キャッシュフローのマイナスを1兆円の財務キャッシュフローのプラスで賄っています。
営業キャッシュフローのプラスは増加しているので、短期的に会社が傾くようなことはなさそうです。ただ、投資CFのマイナスが大きいので、将来的にM&Aがどれだけ成長して調達した資金を返済できるか、多くの営業キャッシュフローを生んで、財務キャッシュフローのマイナスである返済を賄えるか、が重要でしょう。
3.まとめ ~大型投資の見方~
大型投資を分析する視点について、
・投資対リターンで収益率、回収期間を見える(買収前の実績ベース)
・リターンに相乗効果であるシナジーを掛け合わせる
⇒買収の効果を見る
・資金調達手段とBSとを紐づけて安全性を確認
・キャッシュフローのバランスを合わせてみる
⇒買収した後の安全性・資金の流れを見る
の手順で行うと、プロと同様の目線で見ることができます。
ぜひ、ご自身でも試してみてください^^
また、動画でも同内容を解説しており、文書よりもわかりやすく頭に入るので、よろしければ、こちらもご覧ください。