特許性と個人キャリアの交差点

サラリーマン技術者として、特許を取得するという仕事も大きな割合を占める。その特許取得のプロセスの中で、個人のキャリアと共通する点が見えてきたので、今回考察してみたい。

特許性について

特許の詳しいことは、専門資料を見て頂くとして、技術者の経験談から述べていく。基本新しい(と自分では思っている)技術を開発ができ、特許取得にチャレンジしようという段階になったとする。すると、他に似たような製品がないか、特許的な目線で調べることになる(下図)。

知財とキャリアの交差点1

ステップ①:比べる
左の表に示すように、自社の技術を要素別にわけ、それが先行技術と被っていないかを検証するのである。しかし、『自分が思いついたことは、同時に世界に5人は思いついている』、という格言の通り、世の中にはほとんど同じ(特許的な目線では)技術が存在する。だがらといって、今回は諦めて他の技術に注力しよう、とはいかない。ここからが、実践で培ったテクニカルな部分である

ステップ②:掘るまたは足す
上図の右の表を見てほしい。自社技術の構成要素を『掘る(よいところを探す)』または『足す(新たに加える)』ことを繰り返し、この操作を先行技術との差別化できるまで行うのである。

ステップ③:実行の判断をする
もちろん、この繰り返し作業によって、いつかは差別化できてしまうが、一方であまりにも構成要素が増えると、適応範囲(特許でいう権利範囲)が狭くなり、ビジネス上の特許を出す意義がなくなってしまう。この段階に来て、ようやく特許の出願可否を判断するのである。

経験者から誤解を恐れず言わせてもらえれば、上述の通り領域を狭くすること特許性を付与することが可能である。問題は、特許の出願(および維持)に多額のお金がかかるので、領域の広さとコストのバランスが難しいのである。

個人のキャリアについて

個人のキャリアにも特許の視点を入れると理解しやすいと考えた。昨今の社会情勢から、個人における社外活動(副業や企業)の重要性が高まっている。かといって、サラリーマン気質の私は、今さら流行りのスキル(英語やプログラミング)、話題のプラットフォーム(youtube、TikTok)にチャレンジしても先行してやっている人がいるから勝てないでしょ?ましてや、ファーストペンギンとして、誰もやってないことにトライするのも難しい、なんて思って悶々としてしまう。

そこで、特許の思考を活用してみる。再び以下の図を見てもらいたい。
(注目すべき点は、自分と他人を比較しているという点である。)

知財とキャリアの交差点

さきほどの特許の場合と同じステップで考えてみたい。

ステップ①:比べる
左の表に示すように、個人で社会活動をしようとすると、自分のスキルの棚卸が必要である、これが特許的に考えると、自分のスキルを要素別に分けることである。そして、それが他の人と被っていないかを検証するのである。しかし、やはり自分と同じスキルの人はすでに活躍しており、自分が新たに進出する領域はないと絶望してしまう。。。。と、ここで通常は思考停止だが、特許の項で述べた通り、この先にも道はあるのである。

ステップ②:掘るまたは足す
上図の右の表を見ていただきたい。繰り返しになるが、特許同様、領域を絞ることで、他人との差別化は可能なのである。さらに、技術と異なり、人との差別化は、目に見える差異(スキルや資格や学歴)に加え、経験や業界知識、人脈といった目に見えない部分も入れ込んで考えることができるのである。

ステップ③:実行の判断をする
最後のステップが、特許とキャリアの考え方の大きな違いになる。特許の場合には、費用が掛かるために、狭い範囲での特許出願はコストメリットがない、つまり範囲を絞ることは価値がなくなるのだ。しかし、驚くべきことに、個人のキャリアは状況が異なる。スキルの掛け算や領域、人脈の掛け算は、価値が下がるどころか、希少性が高まりむしろ価値が上がると考えられるのである。この部分が特許と個人キャリアの大きな違いだと考える。


まとめ

個の時代と叫ばれて久しい昨今、周りを見渡せば、知り合いでもyoutube、オンラインサロン、ブログ、起業によって、個人の力で収入を得る人が増えてきている。サラリーマンである私は、焦燥感に駆られているが、会社に牙を抜かれ飼い慣らされて、社外では通用しないと信じ込まされている。しかし、今回のように希少性を発揮できる部分があれば、もしかしたら社外でも挑戦でき、社会に貢献できると希望を持つ事が出来た。会社勤めが10年を過ぎた今、新しいスキルを追い求める旅を一旦やめて、自分の希少性についてしっかり考えて直し、社外での活動の領域を増やしてみたい。

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