ベストなパッケージをつくる その2

前回の記事のつづきです。前回お話したとおり、新しく開発した商品用に、ベストといえるパッケージをつくる手順をまとめると次のようになります。

①商品の理解を深める
②商品が売られる環境を検証する
③デザインアイデアを創る
④製造の段取りを組む

前回記事:ベストなパッケージをつくる その1
https://note.com/hamaon/n/nb0a5685c0d73

実際には、①-④を進める作業の過程で、そのつど新しい気づきやアイデアがいろいろと生まれますが、そもそも商品の価値がどこにあるのか、そして誰に届くべき商品であるのか、ということをブらさずに進めれば、新しく生まれる気づきやアイデアは、完成度を高めるための材料として検討されるべきです。
これを前提として今回は、だれとこの面倒な作業を進めるのがいいのかについてお話します。


②-④については、それぞれのフェーズで活かされる専門性があります。例えば、③デザインアイデアを創る、ではデザイン会社や職業デザイナーが、④製造の段取りを組む、では一般的に製造メーカーが専門性を発揮することができます。②についてマーケティングやリサーチを専門とする会社やプロが存在します。それぞれは専門分野だけをこなすわけではなく、デザイナーの立場でも、前後の②④に長けている人もいますし、製造メーカーや印刷工場でも、デザインアイデアを創るのが得意な担当者もいます。

”これいいね、これでいこう!”というワクワクとした感情が湧き出てくるものを、ベストなパッケージの着地点と定義します。そういうものをつくるには、①-④すべてがバランスよくつながる必要があります。①-④それぞれのフェーズをどのレベルまでやるのかは、かかわるチームの性格によりますが、どれかが抜け落ちていたり、軽く扱われてしまうといいゴールにたどり着けません。また、これらのひとつだけを深く掘り下げたところで、結果にはつながりません。例えば、自社の設備の範囲でつくれるモノだけを提案したり、過去の実例の中から選ばせるだけだったり、売り場の環境にマッチしないデザインだったりとか、物理的に製造が不可能、予算とはかけ離れたアイデアだったりすると、はじめから可能性を狭めてしまい、期待するゴールにたどりつけなくなります。逆に、①-④それぞれを見渡しながら場面ごとにリードできる人がチームにいれば、企画のクオリティーを高めながらゴールに近づいていくことができます。

協力者がどの職能をバックグランドとしているのか、どれぐらい幅広い知識と技術を持っているかはもちろん大事かもしれませんが、信頼しあえる関係を築けるかどうか、これが大切なことです。どれだけ深く商品のことを理解しようとし、商品を販売しようとする会社の目論見を共有して、自分の職能を用いて伴走する姿勢があるか。

一連の作業にはそれなりの時間を要します。その間に生じる迷いや、疑問を受容して丁寧に応えられるか、企画に参加するメンバーの知識や経験、好みはバラバラでも、それぞれの立場からの視点や、ときにくだらないちょっとしたアイデアも採り入れながら、必要な局面でリードできるか、商品の販売が開始されたあと生じる課題にもかかわってもらえるか。協力者の所属する組織における裁量の大きさ、所属する組織の経営基盤の安定度も隠れた要件になります。

商品の意味をきちんと捉えることから始まり、商品開発者の置かれている環境や想いを理解し、新商品と会社そのものが、広く認知されるためにアイデアをパッケージに込められる、そんなアプローチのとれる人と出会えたら、外注業者の一人ではなく、プロジェクトのメンバーとして迎え入れて、じっくりと長く付き合ってみてください。そういうアイデアマンはパッケージに限らず、幅広くよいものをもたらしてくれるはずです。


パッケージそのものだけで思い描く結果が出せるわけではありませんし(要件の一つにはなりえます)、それを簡単に正解・不正解と判断できるわけではありませんが、パッケージをドレスや衣服に例えるお話は前回させていただいたとおりです。はじめに思い描いた成果にちかづけているなら、商品すなわち自分たちの想いを伝えるという面でパッケージが寄与しているだろうと思います。

面倒な試行錯誤を経たうえで、これいいね、これでいこう、というフィーリングが自分たちのなかに持てたら、それは商品を収めるのにふさわしい、必要とする人に届くためのベストなパッケージだといえます。逆に、初めになんとなく作って使い続けているだけのものなら、パッケージを見直すことで、販売の結果を変えられる部分はありえます。

商品そのもののスペックだけでは、競合する商品との差別化が難しくなっている昨今にあっては、商品そのものの周辺にもこだわりをもって整えて、周到なコントロールが求められているような気がします。あらためて商品のそもそもに立ち返り、その着衣といえるパッケージも目的にふさわしいものになっているかどうか、考えてみる機会を持たれてみてはいかがでしょうか。

2022.02.05

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