光ったのは一度だけ

私には姉がいる。そのお子たちがピカッと光った時の話。

#子どもに教えられたこと

2学年上の姉は結構早めというか昔でいう適齢期に結婚したので私が30を過ぎる頃には姪と甥(年子)は7、8歳になっていた。
当時私は千葉の市川で東京に出向してきた父、呼ばれて来た母と暮らしていたのだけど、走って20分ぐらいの所に東京ディズニーランドがあったということでディズニーランド好きの姉が時々お子達を連れて遊びに来ていた。
そもそも小世帯用のアパートだったのでディズニーランド用の宿泊基地でしかなかったとはいえそれ程快適な滞在先ではなかったと思うのだけど。

当然毎日ディズニーランドに行っているわけではないので総勢6名がめいめいだらだらその狭いアパートでなにがしかをやっているという時間はある。
その週末の午前中私は遅めの朝食を終えたところだった。
背にしていた両親の寝室の方で姪と甥は五目並べをしていた。
ほー。この子たちも五目並べをやるような齢になったかー。
と何はともなく眺めていた。

五目並べというのはなんというか狭い。あまり選択肢はないゲーム。
3が勝利への道だからともかく3を作れるように頭を捻るけれどもタテ、ヨコ、ナナメ、駆使しても慣れてきた者同士だと中々勝負はつかないはず。
けれども概して短い時間の間に何ラウンドも何ラウンドも楽しんでしまう。負けを覚悟で結構いろんなことを試せてしまう。
そんな愉しさのあるゲームだ。

女の子と男の子の姉弟というのは平均して仲がいいもんなんだろうか?
私は自分がそうだったと思い込んでいるものだから姪と甥のこともそんな目で見ていた。
五目並べというゲームのルールがあるもんだから勿論それに従って二人はやり取りしている。3への道筋が見えていれば相手があそこにさえ気付いてくれなければなーというような丁々発止(?)が感じられる。

年子だから当たり前なのかもしれないけれど姉と弟の間にそれほど知恵の差はない。
けれどもこの姉弟は多分弟の方の気遣いのせいだと思うんだけれども一応お姉ちゃんの方が指導的立場にあるという関係性があった。
だからゲームならそのルールやテクニックというようなことはお姉ちゃんの方が審判や指導者も兼ねるという風に二人のゲームはオーガナイズされているように見えた。
例えばバチバチにやり合う兄弟だったとしたら何ラウンドも重ねる前に碁石が飛び交う、、、なんてこともあり得る。そういう危険なニオイはまず感じられないような関係性に見えた。

微笑ましい光景。

それ以外の形容は見つからないようなほのぼのとしたひと時だった。

概ね平和に進んでいた五目並べの中でそれでも「おっ!?」と反応してしまう出来事が起こった。
指導的立場のお姉ちゃんが多分五目並べ独特の閉塞感に業を煮やしたのだと思うのだけれど驚くべき提案をしたのだ。(そんなおおげさなことではないけど。。。)

「〇〇(甥の名前)。次2つ置いていいから私に今2つ置かせて。」

いやいや。それが通ったら五目並べというゲームが。。。

ことの顛末はともかく私はこの光景を見ていて何かぞわぞわぞわーーーっと内から揺すぶられるものを感じていた。
子どもってすごいなー。
成長成長とは言うけれども子どもたちが育っていくって何とも言えないエナジーを感じるなー。

その時間違いなくピカッと光ったのだ。
碁盤を挟んでいる二人が。
いや二人が光ったというよりも後光が射したのかもしれない。

その光というのはちょっと残酷な言い方をすれば「お前(私のこと)はもう死んでいる」。
そう言われてしまうと悲しくならないこともないけれど、その光は真逆のことも言ってくれていた。

「この子たちのために生きなさい」

生きるということに素直になるべきだと言われてこれほどすっと納得できる言葉に出会ったことはない。

それ以来私はグダグダ考える性質は変わりはしないけれどもであるからこそあの時二人の子どもたちがピカッと光った時のことが思い出される。

私には4歳離れた弟もいて彼らにも2人のお子がいる(これまたどういうわけか上が女の子で下が男の子)。
生まれ持った性質も違えば育つ環境も違うわけだからとても一括りにはできないけれど、この子たちと会うとあのピカッと光った時以来常に「もうこの子たちの時代だよ」という思いが湧き上がる。

光ったのはあの時のたった一度だけ。

自分の息子も勿論輝いているけれどそれは自分の子どもだからということもある。光の意味がちょっと違う。

あの光は本当にどこまでも広がっていく光だった。

極端に言ってしまえば子どもなら全員に及ぶような光。

じゃあ子どもって誰なのよ?

みんなみんな
子どもじゃなかったことのある人間なんていない

そんな当たり前のことを今も教えてもらっているのでした。


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