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北欧留学で教わった大切なこと

前回の投稿でも書いたのですが、僕は30歳を期に設計会社を退職し、コネもツテもなく留学を経験し、現在のデザイン事務所を構えました。
今回は、北欧デザイン留学中のことなどを記憶を蘇らせながら書いていきます。

はじめに

留学先は試験もなく入れるホイスコーレという寄宿学校で、コペンハーゲン駅から電車で6時間、何も周りにない海辺の森の中にあります。
なんと貼紙も会話も全てデンマーク語!!初日に気が重くなり日本に帰ろうかと真剣に悩んだくらいでした。日数が経つにつれ、話しかけてくれる同級生が、英語へ翻訳してくれたり、その状況にも慣れ当初の重い気持ちも薄らいでいきました。

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議論中心の教育

授業という格式ばったものはなく、日本では職業訓練学校に近い実技演習メインのカリキュラムでした。
週はじめの月曜日に、課題が提出され、その週末に講評会をするスタイルでした。その中で何をやっても良く、作業環境は24時間使える工房があったりするのですが、進め方も安全面も全て自己責任。なので当然、アウトプットも作品のクオリティもバラバラ。
面白いなと感じたのが、そのバラバラしてものに対して、講評会で学生同士が真剣に『ここは違うと思う。こうしたほうが良い。』など議論をする時間があること。他人の作品を題材に客観的に議論することで思考能力が活性化されて、学生ありがちな、『作ったら終わり。やりっ放し。』をうまく教育に昇華しているなと感心しました。

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平等性を大切にする国民性

それとは別に数回、外部から活躍するデザイナーが特別講師として1週間、課題提出から途中経過の相談、講評までを、学校に泊まり込みで開講してくれる機会があります。当然、授業内容も実践的で彼らが今考えている高い意識レベルで、学生と接するので、ハイレベルでとても刺激的でした。
現役で活躍する彼らの1週間を教育に当てることは、彼らにとって後輩を育てる名誉ある仕事と考えているようで、デンマークの国民性ならではだなと感じました。
(よく言われる、北欧の平等性を大切にする姿勢は、実際いたるところで僕自身が実感しました。)

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ヒュッゲな日々

また課題に費やす時間が自分次第なので、当然時間的な余裕があります。学生は午後の4時くらいから食堂に集まり、コーヒーを片手に毎日のように様々な話題で語り合っていました。これが北欧特有の文化でもある『ヒュッゲ』なんだと思いました。僕自身は、この習慣に馴染めず、もっぱら課題に取り組んでいました。そこで改めて、やっぱり長時間働く(作品作り)するほうが、好きなんだと実感しました。

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最後に

振り返ると、当時は嫌々だった何もない自然の環境も、客観的にデザインと向き合い、また作品制作に集中できた良い機会だったし、何よりもデザインが楽しいと素直に感じられた第2の青春期のようでした。

北欧の良さをかみしめながらも、ワーキングホリックと揶揄される日本人的な働き方も、あながち悪くないなと感じます。個人個人に合う合わないがあり、特に僕自身クリエイティブワークで『毎日4時から働くな』と言われると、逆に働きたくなってしまう体験を通じて、そんなことを感じ、学びました。

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