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ブラジル法を準拠法とする養子縁組に関する根拠法メモ

1 はじめに

  ここでは、ブラジルの養子縁組に関する根拠法について簡単にメモをしたいと思います。日本の家裁や弁護士の実務において(注1)、通則法31条1項で準拠法がブラジル法になる場合(養親本国法や保護要件としての養子本国法)となる場合の整理とします。

2 旧法

(1)かつては、同国では(完全に一致するわけではありませんが)、①日本の普通養子縁組に相当する養子縁組と②日本の特別養子縁組に相当する養子縁組がありました。①を普通養子縁組、②を完全養子縁組とします(注2)。

(2)上記①については、旧民法(1916年)に(360条台以下)、②については、児童及び青少年条例(1990年7月13日法令8096号、以下「青少年法」といいます。)に規定がありました。

3 新民法(2002年)そしてその改正(2009年)

(1)2002年に新民法ができ、同法1620条以下に養子の規定が設けられましたが、これは上記②の完全養子縁組(つまり、実親との血縁が縁組によって断たれる)というものでした。そうすると、青少年法との関係が問題となります(注3)。

(2)しかしながら、上記(1)の点については、以下のとおりとなります。というのは、2009年法12010号により、2002年の新民法は改正され、そして、養子縁組に関する改正は、

ア 新民法1620条から1629条は廃止

イ 養子縁組は青少年法による(2009年改正民法1618条)

ウ 18歳以上の養子縁組は国の関与と裁判所手続を要し、青少年法も適用される。(2009年改正民法1619条)

となりました。

(3)したがって、現行法上は、民法1618条、1619条、青少年法のみが養子縁組に関する根拠法となります。青少年法については「全訂新版 渉外戸籍のための各国法律と要件」の5巻に、邦訳が掲載されています(ちなみに、同書においては、なぜ青少年法が根拠法なのか理由を付さず、結論だけ「青少年法である」とあったので、このNOTEを作った次第です。)。

4 その他

 上記は日本で準拠法がブラジル法となるときの法についての解説です。なお、ブラジルでは、①ブラジル人以外がブラジル人を養子とする場合②ブラジル国外に住む者がブラジル人を養子にする場合については、憲法227条5項において、公権力により支援され、法の形式で成立及び有効性の要件を定めるとしています。また、同国は1993年国際養子縁組に関する子の保護及び協力に関する条約に批准しており、同国国際私法、青少年法、民事訴訟法にこれらが反映されています。



注1:家裁の代理人及びそれに係る法律事務を行うのは弁護士になります。公開でどのように見てもらってもいいのですが、弁護士資格以外での業務のための利用・参照はご遠慮いだだきますようお願いします。

注2:司法研修所編「渉外養子縁組に関する研究―審判例の分析を中心に―」(1999年、法曹会)185頁

注3:新民法を完全養子縁組の根拠法と指摘するものとして、加藤文雄「新版 紹介家事事件整理ノート」(2002年、新日本法規)250頁

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