日常定期便 その12
秋の虫の声がする。イヤホンを耳につけていたけれど、音楽を聴いているわけではない。何か流そうと、手持ちぶたさを紛らわそうとしている。そんな必要はないような感じもしていた。てくてくと歩いている。その間にも、何かやりたいと、時間の有効活用をしようと思う自分がいる。やれることは限られていて、音楽を聴くか、はたまたなにかと動画の音声を聞くか。流石に画面を見ながら歩くのは無理がある。じゃあ今は何をしているか。足は目的地に向かって、止まることなく、一歩一歩前に進んでいる。今日出かけようと思ったら、自転車のタイヤが、前がパンクしていて、歩く前にあった用事も、歩いて駅に向かうことになった。自転車屋さんに行くことができず、ギターのレッスンは忘れていて、本屋では買いたい思っていたら本たちとの出会いがあった。なんだか差し引きゼロというか、少しプラスという感じだろうか。マイナスというのは、自分自身が自分の予定を把握しておらず起きた事態についてだった。当日の直前に決めることができるといいのだけど、なかなかそんなに都合良くはいかないものだ。欠席する場合には、前日までに連絡をしなくてはいけないというのも、相当に周到な予定を立てておかないといけない。そんなにぱつさつなわけではないけど、感じるがままに、その瞬間の生きた反応をするためには、足枷になってしまう。ふと頭によぎる足枷という言葉。今日は初見ではないような、そんなことがふとよぎった。自分で予定を立てておかないと、なんとなくで時間は過ぎていく。それでいいとは思わない。いいとは思えない。毛大通りに出る。左手は何か意識がいくと、いろいろに動かせるように、かなり動いている。右手は安定感のある、淡々とした身のこなしである。今日は久しぶりの青空を見た。日も出て、穏やかな天気だった。健やかさという言葉がよぎる。通り過ぎる車。追い越していく自転車。ちょうど信号が変わり、横断歩道を渡る。もう目的にまでは、目の前だ。歩いている時間は、自分にとってはいい時間だ。頭の体操というか、なんか柔らかくてほぐれていく感じがある。さぁ、そろそろ着く。ここら辺でペンを置くことにする。
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