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日常定期便 その1

朝目覚めると、ムワッと蒸し暑さを感じている。芋虫のように身体を覆っている寝袋。ここは確かに自分の家だ。確かに家だった。

昨日の夜、もう何もしたくないと思い、横になってそのまま意識を失った。そのままだと風邪を引きかねないからと、そばにあった寝袋を引っ張ってくるまった。

風邪を引かないようにという目的は達成したが、いかんせん暑苦しい感じで目覚めたのだった。軽く汗ばんでいるのを感じる。

いつもより少し早い時間なので、二度寝をしようとも思ったのだけど、そうはしないで、むくっと起きて、ガスコンロで湯を沸かす。

その間に、出かける準備を始める。日差しを感じている。今日はとてもいい天気のようだ。ずっと雨だったから、久しぶりに晴れているのは嬉しい。

気持ちがちょっと上がる感じがしている。ふとイラッとしたことを思い出したけど、そのことそのものは思い出せない。確かにイラッとしたことはあった。そのことだけが思い出させる。

そうこうしているうちに、お湯が沸いたので、コーヒーを入れる。冷蔵庫から粉を取り出して、湯を入れる。コーヒーのいい香りが広がる。

隙間風を感じるのはとても気持ちがいい。二度寝をして、あっという間に出かける時間になった。コーヒーを入れたあと、かなり時間に余裕があった。

それで横になったのだけど、かろうじて目覚ましのバイブに気付いて、いつもより出かける時間は遅れて、今は駅に向かって走っている。

一瞬でも諦めたら間に合わない。普通に急いでも間に合わないような、なんとか頑張れば間に合うくらいの時間しか残されていない。

とにかく考えるまもなく、走るしかない。走ったら、暑くなるなぁという思いがよぎる。汗をかいて、汗が引くまでが大変だよなぁなんてことを思い浮かべる。

だけどそんなことは取るにたらない。優先事項は間に合うことだ。通常よりも急ぎ目に、間髪入れないで、走り続ける。間に合う感じはある。

行けども行けども、まったく辿り着く気配がしない。確かに近づいている。時間はあとまだ少し残っている。お腹いっぱいではない、適度な量がいいとふと思うのだった。

(続く)

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