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起業とは「崖から飛び降りながら飛行機を組み立てる」ことなのか

ある体験の前と後で、人の発言に対する自分の味方が大きく変わる、ということがたまにあります。私の場合、それは以下の言葉でした。

私は、起業は崖から飛び降りながら飛行機を組み立てるようなものだと考えている。飛び降りる勇気が、あなたの起業家としての最大の資産だ。 

リード・ホフマン

リード・ホフマンはPaypal初期メンバーで、その後LinkedInを創業。上場後投資家としてAirBnbに投資するなど、シリコンバレーの中心的な人物です。起業する前の私は、この言葉に対して全く意味が分からないと思っていました。崖から飛び降りるなんて無謀すぎるし、飛行機だって地上で組み立ててから飛べば良いじゃないかと。しかし起業してみて、この言葉の意味することが少しずつ分かって来た気がします。

崖から飛び降りて助かろうとすれば、限られた時間にありとあらゆる手を講じる必要がある。その極限状態の中であれば、人は通常の何倍ものアウトプットを出すことが出来る。結果として、仮に飛行機を組み立てることができれば、地上で組み立てている人より遥かに早く完成させ、ずっと遠くまで飛ぶことが出来る。

しかし、なぜ起業したからと言ってそんなリスクを取らなければいけないのか。私はそれを「スタートアップは普通の企業が取れないリスクを取って、社会を大きく変えるチャレンジをするのが使命だから」と考えています。

先日アニマルスピリッツの朝倉さんがVCの資本コストを解説していましたが、スタートアップに投資するVCは、その株主であるLPに対して元本の3倍程度のリターンを返すことが期待されています。ファンドの運営コストを考えると投資に対する総リターンは5倍程度、失敗して0になる投資も幾つもあるので、個々のスタートアップへの投資からは10倍程度のリターンが期待される計算になります。

10万円預かったら数年後に100万円にして返すという話なので、なかなかしびれるディールですね。一方で起業家にとってVCからのお金というのは、ハイリスク・ハイリターンな意思決定に躊躇しそうになった時に、背中を押してくれるものでもあると思っています。

しかしその結果としてうまく行かなかったらどうするのか。もちろん起業家としては、ワーストケースでも会社は潰れないように、仮に撤退になっても自分自身は追い詰めないようにリスクヘッジしています。冒頭のリード・ホフマンの発言に戻れば、多くの起業家は一応パラシュートは背負ったうえで崖から飛び降りているのだと思います。

挑み続けるということ

当社immedioでは、議論を経てValuesを3つまで絞り込みましたが、その一つが「挑み続ける」です。上で論じた通り、スタートアップの役割は社会にイノベーションを提供することであり、そのためには常識や失敗への恐れに怯まず、リスクを取って前進する必要があると考えるからです。

社運をかけた意思決定というのは頻繁には訪れないのですが、経営は大小様々な意思決定の連続です。例えばimmedioでは、過去1年で6回のピッチ大会に出場しました。スタートアップのピッチ大会は出場して優勝できれば投資家・採用候補者・見込客からの知名度が高まり、社員のモチベーションもぐっと上がります。一方で入賞を逃すと(確率的にはこっちの方がずっと高い)、準備に投じたリソースへのリターンは限定的で、会社の雰囲気もちょっとシュンとします。ちなみにimmedioの戦績は以下のような感じです。

  • Climbers 2023 Dream Pitch (2023/4) 優勝

  • ICCサミット KYOTO 2023 SaaS RISING STAR CATAPULT (2023/9) 2位

  • Startup JAPAN 2023 Dream Pitchグランプリ(2023/11) 入賞ならず

  • ICCサミット FUKUOKA 2024 STARTUP CATAPULT (2024/2) 入賞ならず

  • CyberAgent Capital Monthly Pitch (2024/4)

  • G-STARTUP 8th  Batch Demo Day (2024/4) 優秀賞

私自身ピッチ大会の情報や応募期限をウォッチしているわけではないので、6つはどれも周囲の方の推薦やアドバイスを受けて出場しました。前のピッチからの間が短い、準備に時間が取れない、周囲のスタートアップよりスケールが見劣りするなど、推薦を断る理由は幾らでもありました。でも挑み続けることに意味があるし、入賞できなくても会社が潰れることはない、そう思って全てチャレンジしました。結果に悔いの残るものはありますが、出場した事自体を後悔しているものは一つもありません。

ちょっと崖を覗いてみたくなったあなたへ

日本では政府の後押しもあり、VCによる資金供給が充実し、起業家が借り入れの個人保証をする場面も減って来ました。その意味で、崖の横にパラシュートが置いてある状況だと思います。自信があれば飛び降りて飛行機を組み立ててみても良いし、まずは飛行機を組み立てているチームに加わって、そのプロセスを体験してみるのも良いかもしれません。

immedioは0>1期のスタートアップで、未だ飛行機の組み立ては終わっていませんが、どんな飛行機を組み立てられそうかは徐々に見えて来ました。そんな私達と一緒に挑戦してみたいという人がいれば、ぜひお声がけ下さい!(HERPからのお申込み、Pittaでのカジュアル面談、SNSでのDM等、なんでも結構です!)