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ネイティブ・ジャパニーズからの贈り物

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ネイティブ・ジャパニーズ探究家 亀山理子が東北の小さな浜からお届けするLIFEマガジンです。土地に根ざし、自然とともに暮らすネイティブ・ジャパニーズから教わった知恵や学び。自身の…
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#民俗学

未来の生き方は限界集落に聞け

 宮城県石巻市の牡鹿半島に位置する蛤浜。私はここで夫と暮らしながら「浜の暮らしのはまぐり堂」というカフェを営んでいる。  蛤浜は住民わずか3世帯7人の小さな集落だ。住民構成は70代前後のご夫婦が2組、その下に夫を含めた40代が2人、そして30代半ばの私である。蛤浜を含むこの牡鹿半島部の浜々は3.11で大きな被害を受けた地域でもあり、震災後の人口流出は著しく、近隣の浜々でも高齢化は進む一方だ。    だが美しい海と山とに囲まれたこの浜に生きる人々と関わりを深める中で、私は「果

#10 浜のネイティブ・ジャパニーズ(後編)

  前回#9のお話:若者をはるかにしのぐ体力と、疲れ知らずの体の使い方を身につけている浜の大先輩たち。「年だからもう動けねぇなぁ」と言いながら、30代の私などとは比べ物にならないほどよく動き、手早く浜の仕事をこなして元気に笑う...そんなスーパーマンのような浜の先輩たちに憧れて、ひよっこの私は、遥か遠いその背中を追いかけています。  そんな浜の先輩たちから、私がもう一つ受け取ったもの。それは、自分で工夫して、自分の暮らしを作っていく、暮らしを手作りする力です。  「昔はそ

#6 希望をつなぐ(中編)

 前回#5では、結城登美雄先生のお話と、はまぐり堂の取り組みについて、地元のお父さん・お母さんたちと共有する機会をいただいたお話を書きました。それを通じて、みんなで未来の子どもたちへ"足元の宝もの"をつないでゆくために、世代を超えた協力の場を作っていこう、という取り組みがいよいよスタートしました。  2021年11月。取り組みの第一歩として、地元のお母さんたちと一緒に、はまぐり堂で体験ツアーを開催することになりました。  お母さんたちに季節の恵みを生かした家庭料理を持ち寄っ

#5 希望をつなぐ (前編)

 前回#3、#4でご紹介した、サステナブルデザイン工房さん主催の「石巻のもう一つの宝を見つける」をテーマとした地域の学習会。  私たちが初めて参加させていただいたその翌月の会では、ゲスト講師の結城登美雄先生から参加者の皆さんへ向けて、次のような提案をいただきました。 「これからの地域づくりを考えたときに、食べものをベースに置きながら、次の世代がやっていける、そんな方向も見据えて、みなさんが積み上げてきた経験と知恵と…いろんなものをぜひ、アドバイス、リレーさせていただければと

#4 足元の宝ものを見つける(後編)

 前回#3に記したとおり、私たちは2021年5月、「石巻のもうひとつの宝を探す」をテーマとする学習会(主催・サステナブルデザイン工房)に参加し、そこで東北の民俗研究家・結城登美雄先生との出会いがありました。  その際「ぜひ今後の学習会で、参加者の皆さんにもはまぐり堂の活動の話をしてもらえないか」とお声がけをいただき、次回の学習会に向けての話し合いも兼ねて、結城先生と運営スタッフの皆さんが、はまぐり堂に足を運んでくださいました。  結城先生が、ご自身が編纂した宮城の農山漁村

#3 足元の宝ものを見つける(前編)

 前回#2でご紹介した、学生時代に私が本を通じて大きな影響を受けた民俗研究家・結城登美雄先生。それから十数年の時を経た2021年5月、ひょんなご縁から、初めて結城先生ご本人とお会いするという、とても嬉しい機会をいただきました。  石巻でリサイクリエーション活動を行う「一般社団法人サステナブルデザイン工房」さんが主催する、地元の人たちのための学習会。そこに結城先生が講師としてお話に来られるのでぜひ参加してみませんか?と、知り合いの方から声をかけていただいたのがきっかけでした。

#2 食べることは生きること(後編)

 前回の#1では、「健やかに食べ、生きること」を求めてあらゆる食にトライした学生時代の私が「食の迷子」になった末、本を通じて江戸時代の食医・石塚左玄先生に出会ったことについて書きました。  今回はもう一人、私の食にまつわる探究に大きな影響を与えた東北の民俗研究家・結城登美雄先生の本との出会いについてお話しします。  結城先生は1945年山形生まれ。広告会社の仕事を経て、40代の終わりから東北各地の農山漁村を訪ね歩くフィールドワークを続けて、地域の人々の声を拾い集めながら地域