多くの場合「発電所」より変電所の方が災害や軍事的攻撃に対し脆弱

今回の能登地震で多くの被害を出したが、再稼働に向けて準備してきた志賀原発にも多くの損害があったことが判明してきた。


当初から「問題なし」と公表していたが、被害実態の調査が進んで来ると中能登変電所のガス絶縁開閉装置(GIS)に損害が認められ、復旧には半年程度は時間を要すると報道された。


原子力発電所の稼働を最優先に訴える「原子力ムラ」支持層というのは、原発のプラント自体で冷却不能事故がなければ安全だと考えているようだが、現実の原発運用においては外部電源の喪失という事態は、「送電不能となる=巨大な電源が即時離脱を意味する」ということすら考えられないようである。


どんなに原子力プラントの原子炉(建屋・格納容器)がミサイル攻撃や地震動の損害から被害を免れたとしても、変電所や変圧器、開閉所などの中継・周辺設備が壊れてしまえば、やはり危機に至る要因となり得るわけで、そこの防御力なり破壊された場合の対処も想定しておく、というのが、危機管理・対策なのではないかな。


ウクライナ粉争の時にも、同様のことを指摘したことがある。



19年の千葉県の長期停電の際にも同様に指摘した。
『変電所や開閉所は建屋ほど丈夫じゃない』と



熊本地震の時にも、500kV線の途絶になった場合ついて書いたことがある。




原発信奉者の言い分は「原子炉さえ壊れてなければ成功」みたいな話になっており、それでは怖くて運転できないという場面が多くなる。

もし今回の地震前に、志賀原発が2基ともフル稼働していた場合、どういうことが起こり、どういう冷却手段を実施し、どのように冷温停止に導けたかをシミュレーションで出してみた方がいい。

変圧器が壊れ、地震動の検知で緊急停止スクラム後、どうやって冷却したか(手順や正確性は全て成功として)、実際の稼働機器やポンプ類が機能できたかどうか、検証してみて欲しい。そういうことができてないと、実際の緊急事態には対処できないと思う。


はっきり言う。
今回は、稼働してなくて、運が良かった。本当に、運が良かったとしか言いようがない。


「変圧器の復旧には時間がかかる」と指摘しましたが、どうやら現実だったようですね。




1月2日時点で、恐らく5回線(500kV2回線、275kV2回線、66kV線)中、発災直後に即時で受電できていたのは66kV線1本で、これは所内電源を確保する非常用母線であり、非常用D/G(ディーゼル発電機)と共通の母線だろう。
この電圧で供給できる電力量には限りがあるはずで、大きな電力消費の冷却機器は稼働できないのだ。運転中の原子炉がスクラムした場合、停止直後の冷却に最大の電力量と冷却能力が必要となるのは常識であろう。

運転停止後の最初の10~15分が、原子炉の発生熱量が最大時間であり、そこで冷却できないと福島第一原発事故のような状況に陥るのである。


北陸電力の初期対応により、275kV線を破損した1号機変圧器を介さず、2号機非常用母線を迂回して受電可能にできたのは、多分2日後か3日後だったのではないか?(使用済み燃料プールの冷却はそれでも大丈夫だから)


フル稼働中の原子炉だったら、非常用母線の66kVだけで対処せねばならないのだぞ?

因みに3.11東日本大震災時、東電の福島第一原発の場合だと、スクラム後に外部電源喪失が生じて復水器が止まり、非常用D/G稼働するも何故か1・2号機の非常用母線から給電できず冷却機器が稼働できなくなり、津波前に1号機のメルトダウンは不可避となった。

(この事は、事故調査過程では隠蔽され、津波で地下のD/Gが浸水して交流電源喪失とされた。が、津波で浸水してもトレンチを超えて海水がD/Gを停止させる程に満水になるには、相当時間がかかる。タービン建屋の床面積は相当広く、耐火扉の気密性を超えて浸水するのがいかに困難なのか、考えれば分かるだろう。津波直後数分以内で全交流電源喪失は起こらない。

1号機は非常用復水器も止めHPCIも起動せず冷却機器は皆無だった、2号機は交流電源を使用しないRCICをスクラム後数分で起動し1・3号機より長く冷却機能を最後まで維持した。D/G起動で所内電源の非常用母線に充電できてたならば、2号機でRCICを起動せずともよいはずだろう?)


日本の原発施設・政策というのは、東日本大震災の頃から、殆ど進歩してないとしか言いようがない。
特に日本人の「原発信奉者」が。






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