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【アーティスト紹介】秋元菜々美 「土地の時間にまつわる滞在制作事業」 招聘アーティスト:humunus/小山薫子,キヨスヨネスク

全国・世界・地元から、福島県12市町村に、芸術家が集まり、滞在制作をするハマカルアートプロジェクト(経済産業省令和5年度地域経済政策推進事業(芸術家の中期滞在制作支援事業))。
採択者とその活動を紹介しています。
どのような人々が、どのようなアートを福島県東部の12市町村でつくろうとしているのでしょうか?
今回は、アーティスト・イン・レジデンスのプログラムを展開する秋元菜々美さんと共に今年度富岡町を拠点に作品作りをするhumunusの小山薫子さん、キヨスヨネスクさんの紹介です。

humunusとは?

2018年10月に結成した、小山薫子、キヨスヨネスクの俳優2人による演劇ユニット。ランドスケープを「人と土地と物質、それぞれが映しあう空間」として位置づけ、人間と非人間、場所との関係性の中にドラマを見出し作品化する。
ランドスケープを条件づけている種々の要素をいかに声や身体を通して写しとることができるか、その方法化と実践を行っている。
2020年より福島県双葉郡富岡町に拠点「POTALA-亜窟」をかまえ、フィールドワークと創作を行いながら、関東と富岡町の2拠点で活動中。

humunusと秋元さんが実施するフィールドワークの様子

小山 薫子さん

1995年生まれ、東京都出身。俳優。
2018年多摩美術大学演劇舞踊デザイン学科演劇専攻、卒業。
2018年より劇団「ままごと」に所属。同年、演劇ユニット「humunus」を結成。
現在は、舞踏の影響などを受けながら、呼吸から生まれる身体の動きに耳を澄まし、身体の持つ記憶や内なるイメージを捉えながら、空間を構成する物、環境音、気配、他者に開いていくことを思考している。​

ツアープロジェクト参加者に解説する小山薫子さん

​キヨス ヨネスクさん

1992年生まれ。俳優。多摩美術大学演劇舞踊デザイン学科卒業。
横浜国立大学大学院都市イノベーション学府建築都市文化専攻博士課程前期在籍中。
演劇ユニット「humunus」結成。ソロ活動も行う。
土地やランドスケープを条件づけている様々な物質の相互作用のパターンや非-人間のドラマを観察し、それら"地理学的諸事象"をいかに声-肉体を通して表現しうるか、その方法化と実践を行う。演劇にとどまらないジャンルや作家とのクリエーションを行う。

ツアープロジェクト参加者に解説するキヨスヨネスクさん

秋元さんと富岡町との邂逅

2020年にいわき市で演劇の文化事業が行われ、キヨスさんが東京から招へいされました。その際に浜通り地域から招へいされたのが秋元さんだったそうです。
その後、キヨスさんは小山さんと共に、作品作りも兼ねて富岡町へ訪れ、双葉郡や6号線沿いを歩き、歴史や風土を調査しました。その結果、富岡町が特殊な地域であるということがわかり、富岡町を中心に活動するようになりました。
富岡町は歴史的、地政学的に境界となっていることが多く、標葉氏と楢葉氏、あるいは相馬氏と岩城氏との境界、あるいは福島第一原子力発電所と福島第二原子力発電所の境界といった変遷をたどっています。
富岡町を、こういったいろんなものが集まる境界の土地として捉え、その視点から町を巡っていくという形で作品を試行する事を考えました。

富岡町をあらゆる形、方法で表現する

「調査を経てどのような作品を作り上げるか考えたとき、ツアープロジェクトという手法で表現し、震災や原発事故を悲劇やドキュメンタリーではなく、もっと別の想像力で町や地域を捉え表現しています」と語るキヨスさん。
「各場所を観察しながら見えてきた物質や人々の歴史、出来事が語られる言葉によって、より参加者の身体がその物質に入り込んでいく様な感覚を覚えたり、その上でこの場所にいる、という事をどう実感しながら捉えられるだろうか、という事を考えながらツアーでの制作活動を続けています」と語る小山さん。

音声によるパフォーマンスをイヤフォンで聴くツアー参加者

2021年12月から「うつほの襞」というツアープロジェクトを開始。富岡町を徒歩とハイエースを使って移動しながら、地形、自然に起因する土地の形質、人の歴史など様々な視点から浮かび上がってくる〈町の肖像〉を捉え、音声やテキスト、ドローイングなど様々な方法で表現し続けています。

次回は2024年1月29日に行われたツアープロジェクトの様子をお届けします。