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シンエヴァンゲリオン劇場版 :||

見た。率直に思った。「なんてシンプルな…」

何年前だろうか。初めて見たのはテレ東で毎週土曜日深夜に4話ずつやっていた再放送だった。深夜もう寝ようとしたらロボットが出てくるアニメが始まった。さして興味は無かったが煙草をふかしブラックコーヒーをすすっていた僕の目は不意に釘付けになった。

「L.C.L.」あの液体…あれは母親が子宮に宿す羊水ではないのか? 否、人間の体液か? 初めて少年シンジがエントリープラグに入ったシーンで、なぜかハッとした。これはただのロボットなんかじゃない、何か強烈に惹かれるものがそのシーンにはあった。

僕のエヴァ歴はそこから始まる。

いろいろな聞いたこともないような用語が出てくる。ATフィールド。心の壁、個々の境界線。そして恐らくキリスト教の聖書に出てくるような天使の名、使徒。死海文書。いちばんわからなかったのは人類補完計画。

謎解きに夢中になった。あれはああではないか?こうではないか?。

自分の話をしよう。

僕は親父が大嫌いだった。威圧的で、時には鬱陶しいほど構うくせに、何を考えていたのか僕が目に入らないかのように無視をする。自分の言う通りにならないと怒鳴り罵り暴力を奮う。何よりも嫌だったのは母親ではない他所の女と浮気をしていた事。それを知ったのは小学生の4〜5年の頃だ。そして親父の仕事の都合で、転校、転校、転校。小学校だけで3回学校が変わった。その度に築き上げた友人関係や生活環境を捨てる。また新しく構築する。その間の心細さと不安は僕を内向的にした。強くもなったが、自分を保つために他人と深く関わる事を諦めてしまった。

だから僕はシンジとゲンドウの関係にすぐシンクロしてしまった。

テレビ再放送の最終回。なんだこれは。作画が間に合わなかったのか。絵コンテやラフ画をそのままつないだような場面。「僕はここにいていいんだ」周囲の祝福の拍手に囲まれたシンジ。なにこれ。僕が感じたように本放送の当時からずっと世間でも物議を醸していたらしい。旧劇場版ではちゃんとラストシーンを描くと言うので京橋の劇場まで「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH/Air/まごころを、君に」を見に行って更に脱力した。前半はテレビのダイジェスト、そして後半はサードインパクトの巨大綾波。アスカがシンジに放った台詞「気持ち悪い」。人類補完計画の概要は理解出来たが、なにか納得がいかない。

その後、しばらくして「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」序、破、Qの三部作。描ききれなかったエヴァのリメイクとサードインパクト14年後の世界。序と破は多少の設定変更があったものの旧作と大まかなストーリー展開は一緒。Qはアレだが旧作から見ている人には理解出来る範囲内。

そして今年2021年に公開となった「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」。これぞテレビ本放送から苦節25年の本当の意味での最終回となった訳だが、さまざまに散りばめられた謎と伏線の束を集めて繋いで整理してスッキリさせようという感じだったのだが…。

僕がこれを見た感想は、「なんてシンプルなストーリーなのだろう」と。

昔からのエヴァ好きには賛否両論あると思うが、話題だから見てみようとしている初心者諸君。見たらぜひとも旧作と新劇場版も見ていろいろ考えて感じて納得したりモヤモヤしたりしてください。

ゲンドウ君…

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