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伊那谷からいただく命を唯一無二の発酵タイ料理に~「GUUUT」

伊那谷に、発酵を駆使したなんだかすごいタイ料理を食べさせてくれるところがある―。

それを知ったのはある友人のSNS。

といっても入り口は伊那谷の素材を使っておうちでタイ料理を作る、「里山料理倶楽部」というオンライン料理教室。

とにかく友人がアップしているそのタイ料理がマニアックなこと。

こんなの家でできるのか?と思ったら、どうやらすぐに再現できるようにキットが送られてくるとのこと。

調べると主催しているのは長野県の伊那谷の「GUUUT(グート)」という発酵を駆使したタイ料理屋。お店ではかなりディープなタイを感じられる料理も提供しているらしい。

気になりすぎて、特に募集はなかったものの、問い合わせして手始めにオンライン料理教室に参加させてもらうことに。

届いたのは豚肉とハーブのスパイシーサラダ・ナムトックムー。

ガツンと来る唐辛子の辛みの中にやわらかな豚肉の甘みとハーブの複雑な香り。一口食べた瞬間にタイの風を感じるほどの本場の味わい。野菜とハーブはすべて伊那谷でとれたもので、発酵調味料はすべて自家製だという。

これはぜったい、お店に直接行かねば!

この一皿でぐっとハートを鷲掴みにされた私は、すぐさま予約。

雨が激しく降る中、車を走らせ行ってまいりました、伊那谷へ。アルコールペアリングもおすすめとのことで、近隣に宿をとり準備は万端です。

最寄駅から歩くこと数分。ここは東南アジアの居酒屋か?というようなある意味期待を裏切らない店構え。

電飾もなんだかあっちっぽい。こういう感じのお店、入ったことあるし。

出迎えてくれたのは料理人、農業人、発酵人といくつもの役を一人でこなされる店主の三浦俊幸さん。

出身地でもあるここ、伊那谷から地場産をはじめ国内で無理なく手に入る元気な素材を、タイ料理の手法で、発酵を駆使し、ここだけでしか味わえない料理を提供されています。

今回お願いしたのは全10品のコース。値段によって、5品、7品と変わります。

1皿目はハーブと花のライスサラダ。バタフライピーの美しい色をつけて炊かれた長粒米に色とりどりの花とハーブが。種類を聞いたら三浦さんも数えてないと(笑)。それぞれの植物の風味によって、食べる箇所により味が変化するのが面白く、あとをひきます。家人はこの料理ですでにまた来ることを心に決めたようです。

どうやら一緒にできたこのワインもポイント高かったようで。サンサンエステート柿沢シャルドネ。ちょっと前に飲んで気に入って。それが真っ先に出てきたものだからちょっと浮かれ気味な家人(笑)

豚肉とコシアブラの腸詰とズッキーニ。発酵させたこしあぶらを入れた腸詰をズッキーニの花に包んでフリットに。さらにズッキーニのぬか漬けをアクセントにし、桑の葉をまぶして。乳酸発酵の独特の酸味が合わさることで何倍ものうまみ、深みを生み出すのだと、学ぶこともできる料理。

ホタテとゴーヤの和え物。ねっとりとしたホタテの甘みがハーブの香りと酸味のきいたソースでまとめられて、見た目以上にしっかりタイの味わいを醸し出しています。ゴーヤの苦みもバランスがいい。

なんとも美しい、トムカーガイ。今までこんなに洗練された鶏肉とココナッツの白いスープ、見たことあったでしょうか(いや、ない;笑)。カーやレモングラスの風味がきいて、タイ料理であるのは間違いないんだけれども、うっとりするようなのど越しは上質で滑らかなヴィシソワーズをいただいているよう。パンをつけていただくのが、GUUUTスタイル。

鱒の白子のフライ、ナムチムを添えて。外はカサクサク、中はふわふわな白子のフライはそれだけでも美味しいのですが、ナムチムと一緒だと、一気にタイの味に。ちなみに鱒はナンプラーに加工したり、身は熟成させてほかの料理に使ったりしているようです。料理倶楽部でも熟成された鱒を使う料理を習いましたよ。

発酵タケノコを使ったスープご飯。ご飯といってもまだまだ締めではありません。折り返したところです。このタケノコが美味しくって。かみしめるほどに味わい深く、さらに先ほどのナムチムをかけての味変も楽しい。

このタケノコと一緒に供されたのは、風の森 純米しぼり華 愛山80 無濾過生原酒。きれいで透明感があり、マスカットのようなフルーティなこのお酒、ものすごく合います。さすがです。

鮎の蒸しもの。神経締めした鮎はまったく臭みがなく、鮎が苦手な家人も絶賛。辛みがなくちょっと和テイストで箸休め的な美味しさもいい。

スペアリブ。金柑とハーブの香りで、意外とさっぱり。ほろほろとほどけるお肉は口の中でとろけます。

料理の最後を飾るのは羊とささげの炒め物とジャスミンライス。やわらかな羊肉とシャキシャキのささげ、そして辛さの程よい濃厚な味付けは、ご飯が何杯も食べられそう。なのですが…一口食べてテイクアウトをお願いしました。美味しいんだけど、美味しいんだけど……ご飯が何杯もすすむ味なんだけど…ごめんなさい、本気で腹パンになりました。

そうそう、忘れてならないのが、締めのデザート。

苺のシャーベット。凍らせた白苺を石うすでつぶしてココナッツミルクとまぜたものに、赤い苺のシャーベットをトッピングしてあります。スイーツは別腹、ではない私にとって、食べられるかな?と思ったのですが、冷たくちょっと酸味のある苺が喉を通りすぎたら、逆にすっきり。美味しくいただけました。

欲張って10品をオーダーしたので、かなりお腹いっぱいになってしまいましたが、本当にどのお皿も、伊那谷の山、川、田畑ではぐくまれた命と料理人の手間と愛情が込められていて、ほかでは食べることのできない、唯一無二の料理でありました。

そして、土地を大切にして、食を大切にして、発酵という保存方法も用いながら、その場所ではぐくまれたものを無駄なく、とことん使いこなす、ローカルガストロノミーかくあるべき、ということを学んだ気がします。

また季節を変えて、伺えたらなと思います。でも次は7品かな(笑)

ちなみにテイクアウトをお願いした羊の料理は、おまけの発酵タケノコのお惣菜を追加しお弁当仕立てにしてくださり、翌日しっかりお腹に納めさせていただきました。ごちそうさまでした!

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