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最新特許技術を5分でざっくり解説(第7回)

登録されたてほやほやの最新特許技術をなんとなくわかった気になれるようにざっくり解説する記事を連載しています。

第7回は、ブロックチェーンを用いた取引サービスに関する特許です。

【特許番号】特許第6703918号
【特許権者】ヤフー株式会社
【登録日】令和2年5月13日(2020.5.13)
【出願日】平成28年8月31日(2016.8.31)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
 生成を所望するスマートコントラクトに関する情報として当該スマートコントラクトにおける取引の条件をユーザから受け付ける受付手順と、
 前記受付手順によって受け付けられた前記スマートコントラクトに関する情報に基づいて、ブロックチェーンを利用する所定のネットワーク上で執行可能なプログラムであるスマートコントラクトであって、当該所定のネットワーク上におけるブロックを走査することで前記ユーザから受け付けた条件を満たすか否かを判定するためのスクリプトを含むスマートコントラクトを生成し、生成されたスマートコントラクトを記憶部に格納する第1生成手順と、
 前記第1生成手順によって記憶部に格納されたスマートコントラクトを前記所定のネットワーク上に送信する送信手順と、
 前記送信手順によって送信されたスマートコントラクトに対して前記所定のネットワークから発行されるアドレスと、前記所定のネットワーク上で承認された前記スマートコントラクトに関する情報とを含むコード(code)であって、前記ユーザが利用するウェブログサービス、SNS(Social Networking Service)、又は、オークションサービスのいずれかにおいて、当該ユーザから各サービスへ投稿可能な態様のコードを生成する第2生成手順と、
 をコンピュータに実行させることを特徴とする生成プログラム。

解説

この発明は、ブロックチェーン技術を用いて個人間で物品売買などの取引を行う際に、信頼できるような取引履歴を持つ相手にだけ購入を許すような柔軟な取引を可能にする、というシステムに関するものです。

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例えばヤフオク!やメルカリのような個人間で取引を行う従来のサービスでは、ヤフーやメルカリなどの事業者が運営するシステム上で取引がされ、各取引は事業者に管理されています。
しかしながら、本発明のシステムでは、非中央集権的なブロックチェーンのネットワーク上で取引が行われます。

まず出品者(上図の左側)は、スマホやPCにインストールされたアプリ上で、出品したい商品の情報と取引の条件を入力します。
取引の条件としては、取引価格だけでなく、取引相手に関する条件を付けることができます。
例えば「過去に10回以上取引成立したことがある相手」や「所定額の取引成立実績がある相手」などの信頼できる相手だけが商品を購入できるようにする、といった条件を付けられます。

すると出品者のアプリは、入力された取引内容に応じたスマートコントラクト(ブロックチェーン上で取引を自動で行うためのプログラム)をブロックチェーンのネットワーク(上図の右側)に登録します。

これでブロックチェーン上での取引は可能になりましたが、これだけだと他のユーザ(購入者)が出品に気づかずいつまでたっても商品が売れません。
そこで出品者のアプリは、ブロックチェーンに登録した出品内容と、購入者がブロックチェーン上でその取引に参加するためのコントラクトアドレスとを読み取るための、QRコードを生成します。

そして出品者は、このQRコードをブログやSNSやオークションサイト(上図の真ん中)に投稿します。
あとは購入者が現れて取引が成立するのを待つのみです。

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購入希望者は、ブログやSNSやオークションサイトで気に入った出品を見つけると、そこに貼られているQRコードを読み取ってコントラクトアドレスにアクセスし、商品の購入を要求します。

すると、その出品に対応するスマートコントラクトは、ブロックチェーンに記録された購入希望者の過去の取引履歴を参照し、その購入希望者が出品者の設定した取引条件(「過去に10回以上取引成立したことがある相手」とか)を満たしているかを判定します。
条件を満たしている場合には取引が成立し、出品者と購入者の間で商品の受け渡しがなされ、ブロックチェーン上で仮想通貨がやり取りされます。

このようにして、柔軟な取引条件を設定した取引をブロックチェーン上で行えるようにする、という発明でした。

※解説内の図面は特許公報から引用しています。

所感

AI(人工知能)とブロックチェーンがこれからの世の中を大きく変えていく!とはよく言われますが、AIに比べてブロックチェーンって何ができるのか一般人にはイメージしづらい気がします。
今後はこういうブロックチェーンを利用したサービスが色々と出てくるんでしょうが、利用者はブロックチェーンが使われているかどうかは意識せずに「なんかこのサービス便利でイケてる!」って感じで流行っていくんじゃないかと思っています。

この特許はヤフオク!を運営しているヤフーが出願したものですね。
ブロックチェーン上で取引がされるとヤフオク!の取引手数料が取れなくなってしまう......というときに、従来の方法にとらわれず、ブロックチェーンを用いた取引のフローの中でヤフーが介入できそうなポジションを見つけて早々に特許で押さえておく、という戦略はさすがです。

クレームに関しては、「スマートコントラクトを生成し、生成されたスマートコントラクトを記憶部に格納する第1生成手順」と「当該ユーザから各サービスへ投稿可能な態様のコードを生成する第2生成手順」とが同じ装置で行われなければならないのかが気になります。
一方がユーザ端末で行われて他方がクラウド上で行われてもよい気がします。
こういうネットワーク越しのシステムの特許ではよくある難しい問題ですが。。

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