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最新特許技術を5分でざっくり解説(第4回)

登録されたてほやほやの最新特許技術をなんとなくわかった気になれるようにざっくり解説する記事を連載しています。

第4回は、VR体感シミュレーション装置に関する特許です。

【特許番号】特許第6701357号
【特許権者】株式会社ハシラス
【登録日】令和2年5月8日(2020.5.8)
【出願日】平成29年6月16日(2017.6.16)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
 ベース部(100)と、該ベース部に揺動自在に設置される搭乗体(200)と、バーチャルリアリティ(VR)映像を視聴するためのVR視聴装置(300)と、からなる精度ある同期制御の可能なVRアミューズメント用搭乗装置(1)において、
 前記VRアミューズメント用搭乗装置(1)は、前記搭乗体(200)に対向する位置に設置し前記搭乗体(200)に向けて風を送風する送風手段(10)を装備するとともに、バーチャルリアリティ(VR)映像を管理するとともにVR視聴装置(300)に対する再生処理を行う映像管理再生手段(400)と、送風手段(10)の動作の指示・制御を行う統合制御手段(500)と、を装備し、
 前記VR視聴装置(300)に表示されるVR映像との同期をとりながら、前記送風手段(10)による送風処理を行うため、
 前記映像管理再生手段(400)は、記憶手段にVR映像データ(20)とイベント情報(30)とを記録し、前記VR映像データ(20)をVR視聴装置(300)に送信するとともに、前記VR映像データ(20)の再生箇所におけるイベントの有無の記録を含むイベント情報(30)を統合制御手段(500)に送信し、
 前記統合制御手段(500)は、受信した前記イベント情報(30)に沿って、送風手段(10)による搭乗体(200)に向けた送風量の制御を行うものであり、
 前記イベント情報(30)は、前記VR映像データ(20)の特定の再生箇所におけるイベントの有無を示す各イベントフラグデータであって、加速フラグ(31)からなり、前記映像管理再生手段(400)は、前記VR映像データ(20)の現在の再生箇所におけるイベントフラグデータをイベント情報(30)として前記統合制御手段(500)に送信し、前記統合制御手段(500)は、前記イベント情報(30)を受信した上で、前記イベント情報(30)が加速フラグ(31)である場合には、前記送風手段(10)に対して搭乗体(200)に向けて一定時間送風をするように指示・制御するとともに、
 前記送風手段(10)は、ユーザに無限に加速している感覚を付与するため、前記イベント情報(30)が加速フラグ(31)の場合、前記送風手段(10)による送風量を増加させる前に予め、前記搭乗体(200)に向けた送風動作中の送風量を徐々に減少させる処理を一定時間行うことを特徴とするVRアミューズメント用搭乗装置。

解説

この発明は、VR(バーチャルリアリティ)映像を見ているユーザに対してVR映像に連動した風を吹き付けることで、VRの臨場感を高める装置に関するものです。

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ユーザは、VR映像と連動して揺れ動く台(上図の左下装置)に立ち、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着してVR映像を視聴します。
そしてそのユーザに向けて、送風機(上図の左上装置)が設置されます。
HMDでVR映像が再生されると、その映像に連動して送風機からユーザへ風が吹きつけられます。

例えば、VR映像の中でユーザの載っているジェットコースターが加速した場合、その加速に応じた強さの風が吹きつけられます。
また、ジェットコースターが1段階目の加速をした後、送風機はユーザに気づかれないように徐々に風を弱めていきます。
そして、ジェットコースターがさらに2段階目の加速をすると、送風機は再び風を強めます。
するとユーザは、1段階目よりさらに強く風が吹きつけられているように感じます。

これを繰り返すことで、ユーザはどんどん風が強くなっているように感じ、あたかもジェットコースターが無限に加速しているかのような感覚を映像だけでなく風でもユーザに体感させることができます。

こんな発明でした。
なお、VR映像と連動して揺れ動く台の詳細な構成についても、別の請求項で権利がとられています。

※解説内の図面は特許公報から引用しています。

所感

VRにおける視覚以外の刺激による臨場感の向上にはまだまだ進化の余地があって、これからの技術進歩が楽しみですね。
特に触覚フィードバックの向上は要望が強いと思いますが、本特許のように物理的に刺激を与える方向に進むのか、あるいは脳や神経に電気的に刺激を与える方向に進むのかというところに、個人的には興味があります。

本特許はクレームに限定的な表現が使われており、他社の模倣を排除する目的でどの程度価値があるかは微妙ですが、スタートアップ企業が自社の技術をアピールするために特許を取得しておくのは一つの戦略として有効だと思います。

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