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「釣れば釣るほど安くなる・・・」

 「少子化は日本の大きな課題」などということは、私のようなボヤボヤした者でも20年前から認識していたこと。それなのに、経済が低迷するなかで有効な対策が打てないままここまで来てしまった。岸田首相が打ち出す「異次元の少子化対策」という“旗印”。耳あたりはいいが、具体策成果は望めるのか?

 ここにきて急浮上したキーワードが「N分N乗」というやつだ。少子化対策が成功したフランスで採用されているものを日本でも、ということらしい。

 いささか面倒に思いながら新聞の解説をしっかり読めば、まあ、複雑な数式があるわけでもなく、割り算だけ知っていれば理解できる。つまり「産めば産むほど所得税がおトクになりますよ」ってことらしい。

 連想から脳内再生されたのが昭和の「ハトヤ」のcmだ。「伊東にゆくなら、ハ・ト・ヤっ。電話は良い風呂♪」ってやつ。

 ハトヤ系列の「サンハトヤ」には「大漁苑」なる釣り堀があって、「釣れば釣るほど安くなる」と盛んに宣伝していた。曰く「釣れば釣るほど安くなる三段逆スライド方式」。関東在住の同世代なら絶対に見たことがあるcmだと思う。

 ハトヤには行ったこともなく、cmだけでは詳しいことはわからなかった。それでもこの「三段逆スライド方式」なるネーミングにはなんとも“秀才風”の語感があって、子ども心に「なんだか、ハトヤがすげえ画期的なことを考えちゃったらしいぞ」と畏敬の念を持っていた。

 そのため、この「N分N乗」というワードにも、「やっぱりおトクでムフフなんだろうな」という感触を持つ。

 しかし。

 この“秀才案”も、結局は少子化をバッチリ解決する「決定打」には到底ならないんだろうな。

 2人の子宝に恵まれて「次は孫かな」というアラカンだが、若い世代の気持ちを忖度すれば、そのセンチメントには根本的な社会や経済への「閉塞感」があるような気がする。「政治が何もしないわけにはいけない」のは確かだが、こうした“小手先のおトク感”でどうにかなるようなものではないだろう。

 いま読んでいる「格差の起源」にも記載されているが、人類社会が成熟するにつれて子どもの数が減るのは歴史的必然のようだ。

 とっくに提唱されているところではあるが、「あまりじたばたせず、“右肩上がり信仰”から脱却して持続的な社会を築いていく」。

 そんな枯れた心情になっているところだ。
(23/2/4)


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