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「大根役者」の罪悪

「お前、もっとテレビを見ろ」

 昭和末期にテレビ局に入社して以降、昨年までずっと報道局に在籍していた。報道をやりたくて入社したので、それはありがたい会社人生だった(いまは別部署で充実したサラリーマンをやっています)。

 自社の報道ぶりについては、だいたいわかる。どうしても気になるのは他社の動向だ。独自ネタを抜かれていないか、面白い視点を提供していないか。それが当たり前になっていたので、ドラマ・バラエティを見る余裕がなかったし、そもそもちっとも見たいと思わなかったのだ。

 幅広いセクションとつながりがあるいま、報道時代とは違って他社を気にすることはないが、相変わらず本ばかり読んでいてテレビは見ない。これはちょっとした話の端々から上司にバレていて「お前はもっとテレビを見ろ!」と叱責される日々だ。

自社制作映画の試写

 それにしてもドラマもバラエティも、テレビ番組は絶望的につまらない(個人の感想です^^;)。せめてもの罪滅ぼしは自社が制作した映画の社内試写だ。スケールも大きいし、これなら2時間で決着がつく。くだんの上司に感想をひとくさり開陳して、「ちゃんと見ていますアピール」もバッチリだ。

 先日鑑賞した作品はいただけなかった。キャストたちの大仰な演技が鼻につくし、なによりもヒロイン的位置づけの女優が相当の「大根役者」。彼女がしゃべるシーンだけはいつも画面が“凍りつく”気分にさせられるのだ。控えめに表現しても「ブチこわし」である。

 “旬の女優”を起用しなくてはいけない事情があることは十分に理解する。しかし、他のキャスト、プロット、カメラ、演出がどんなに素晴らしくても、たったひとりの「大根」がすべてを破壊するのだ。

「煮ても焼いても、当たらない」

「大根役者」ということばは、「大根は、煮ても焼いても、とにかく当たらない」からの転用。

 当たれば儲けはデカいが、外れるとかなりの火傷を負う。映画ビジネスってシビアな世界だ。それだけに、たったひとりの大根がもたらす罪は大きい。この気づきが最近の収穫である。
(22/5/24)

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