岡本拓士@ハロモナス

学術研究の支援に特化した(株)ハロモナス代表の岡本拓士です。noteでは、外部資金申請…

岡本拓士@ハロモナス

学術研究の支援に特化した(株)ハロモナス代表の岡本拓士です。noteでは、外部資金申請書作成のノウハウや科学技術政策などについて、代表個人の経験や考えなども含めて発信していきます。 仕事依頼等は halomonas.japonicaアットgmail.com まで

最近の記事

(付記)科研費申請の論理構成についての雑考

発見するタイプの研究は申請書を書くのが難しい 何かの発見を目指すタイプの研究は、学術研究の中に間違いなくあるのですが、科研費の申請書として説得力をもたせるのは、かなり大変です。仮説検証的に書ければその方が各段に容易です。 また、過去同じような研究アイデア試行がなされていないかを確認する際にも、以前試して見つからなかった場合は論文もまず出ていないため、発見を目指すタイプは不利です。 実際に発見した研究実績と、別途科研費への採択実績の両者があって初めて、発見を目指すタイプの研

    • 科研費申請書では誤読を防ぐことが何より大切です

      誤読を防ぐことを重視する 短い申請書の中で将来の計画について書くので、論理的に曖昧な部分が多くなります。またそれを書くあなた自身が、新たなテーマであった時など、その文章を書きなれていないことも多いでしょう。また、評価者が同じ分野であったとしても持っている知識は異なります。評価者の誤読はまず間違いなく起こります。その前提で、減らす努力が大切です。 ハイライトも誤読を防ぐために 重要な文や単語を強調するために、下線や太字にすることはよく行われていますし、私もお薦めしています

      • 科研費の申請書を書く際の注意点

        評定要素の記述漏れがないように 評価者は評定要素それぞれに対してまず絶対評価を行います。そのため、評定要素に対して記述漏れのないことが重要です。科研費の評定要素は基盤研究については今年から「国際性」が加わり9つになりました。 9つの評定要素は幾つかのカテゴリにわかれていますが、それぞれのカテゴリ毎では評価を行わず、最後に相対評価により総合評点を付けます。そのため評価論的には、カテゴリはそれ程考慮しなくて良いと思われます。 次の9つの要素全てについて、それぞれ相応の量の記述

        • 科研費の申請書を書く姿勢・一点を加えるための姿勢

          自分に厳しく、他人に甘く 自分に厳しく、他人に甘く行きましょう。論文もそうですが、読み手はその「他人」である同分野の研究者であることを忘れてはなりません。また自分に厳しくしつつも、これまでにやってきたことを明記することも重要です。 成功と失敗を両方明記する 自身の研究も、他者の研究も、何が明らかになったか、何が課題として残ったか、両方をバランスよく、そして整理して申請書上に明記することが重要です。 完璧な研究がすでに行われたのであれば、そのテーマはもう研究しなくても良

        (付記)科研費申請の論理構成についての雑考

          科研費申請書を書く際のおすすめスタイル

          レトリックは使ったとしても一つの申請書で一回 レトリックは、使ったとしても一つの申請書で一回にしましょう。レトリックを使うと、基本的には文量が増え、説明できることが減ってしまいます。また評価者の誤読や感情的な反発を招くこともあります。 例えば「周知のように」という表現を用いて説明し、読み手がその事を知らなかった場合、読み手は責められているように感じることがあります。また、知っていても周知ではないと考えていた場合、申請者の知識や現状認識に疑念を抱くこともありえます。それは

          科研費申請書を書く際のおすすめスタイル

          科研費申請のポイント(はじめに)

          はじめに これから5つ程の記事は、科学研究費補助事業(以下、科研費)の基盤研究(C)と若手研究の申請書作成に役立つ情報をメインに書きました。その内容を利用する際には、ご自身の責任で行ってくださるよう、お願い申し上げます。 先月「科研費のワンポイント」として。1日1ポイントずつ、計30回X(旧twitter)にポストしていました。今回、それをまとめなおしたものを、noteに掲載したいと思います。今年の科研費も終盤の時期に差し掛かってきましたが、その際の見直し等にあたって、

          科研費申請のポイント(はじめに)

          良い研究アイデアであることを示そう [Imbackプロジェクトその6]

          目の前の仕事で手が止まってしまいました。同様の状況下で科研費の申請書を書き上げておられる諸先生方へ、深い敬意を表したいと思います。また、簡潔に書くつもりでしたが、やはりここが研究費申請の肝であると考え、また長くなりますが、どうぞお付き合いください。 あなたが良いと思ったことが良い研究アイデア いつも以上に個人的な見解となりますが、申請段階で研究アイデアの良し悪しを客観的に見分ける方法はない、と私は思います[1]。ただ、研究アイデアの良し悪し自体は、科研費の評価システム上も

          良い研究アイデアであることを示そう [Imbackプロジェクトその6]

          「良い研究準備ができている」ことを示そう[Imbackプロジェクトその5]

          さて、次は「良い研究準備ができている」ことです。分野にもよるのですが、この項目で何を書けば良いか今一つわからない、という方が結構おられます。多分、研究準備といった際の期間と内容が曖昧すぎるのではないかと思います。どう捉えると良いのか、はっきりとした正解がある訳ではありませんが、私からそういった方々にお伝えしていることが2点あります。 研究準備を良くみせるには - プロジェクトとしての準備 1点目は、この時の「研究」が示すのは、その申請書で計画している内容についてのみであり

          「良い研究準備ができている」ことを示そう[Imbackプロジェクトその5]

          「良い研究実績がある」ことを示そう [Imbackプロジェクトその4]

          前記事の各項目それぞれについて、これから取り上げていきますが、ここで示す対処法は、基本的に、どうにかして手札を揃えるための方法です。すでに強い札を持っている項目は、あまり考えなくて良いと思います。そしてこの記事では、「良い研究実績がある」ことを、どうにか示す方法について説明していきます。 この一年で学術論文のある方は、素晴らしい。次の項目へ行きましょう。なお、申請書の記述にあたっても、その論文を中心に組み立てると良いです。そうではない(大多数の)方々は、この項目が何を求めて

          「良い研究実績がある」ことを示そう [Imbackプロジェクトその4]

          研究資金申請はゲーム(的な面もある)[Imbackプロジェクトその3]

          科研費の具体的な話に入る前に、学術研究の競争的資金において、どうすれば採択されるのか、一般的な話を少ししたいと思います。科研費は科研費独特のルールに(半ば無意識に)従うだけで採択されうるのですが、我々は中々採択されていない訳で、競争的資金への一般的理解を深めて外堀を少しでも埋めていく訳です。またこのノウハウは、他の競争的資金の申請書作成にもきっと役立つでしょう。 私が申請書作成支援を行うにあたって、大きく分けて次の項目が書き込まれているか、評価者が読み取れるようになっている

          研究資金申請はゲーム(的な面もある)[Imbackプロジェクトその3]

          はじめのエッセイ[Imbackプロジェクトその2]

          20230904追記 気が付けば、このエッセイを書いた翌年の科研費申請も、ほぼ終わってしまいました。しかし、自分の頭が科研費向きになっているうちに、加筆修正して完成させたいと思います。また特にこの「エッセイ」は、自分で読み返していても、長くなってしまったと思います。申請書作成に向けて急ぐ方は、読み飛ばしてください。 Imbackプロジェクトについて このコロナ禍で、研究に大きな影響を受けた研究者の方も多いのではないかと思います。特に、「教育を重視する」大学の教員、つまり

          はじめのエッセイ[Imbackプロジェクトその2]

          はじめに[Imbackプロジェクトその1]

          [Imbackプロジェクト]のコンテンツは、以下のような方々を主な対象として、公的な競争的研究資金制度、特に科学研究費助成事業の基盤研究(C)、若手研究、研究活動スタート支援において、採択されうるために重要な点とそのためのプロセスを示そうとするものです。  ・科研費やその他の競争的研究資金制度には申請しているものの、採択されたことがない、あるいは、何年も不採択が続いている方。  ・様々な事情により研究が止まってしまったものの、立て直そうとしている方。 ・実務家出身で大学教員

          はじめに[Imbackプロジェクトその1]

          はじめに

          株式会社ハロモナスの代表の岡本拓士と申します。独立系研究支援職の肩書を名乗ることもあります。様々な狙いをもって学術研究の支援を中心とした会社を立ち上げたのですが、その中には「研究支援や科学技術政策の知見やノウハウについて、組織に縛られず積極的に発信を行い、循環させ、日本の研究の活力をあげよう」といった野心的なものもありました。しかし、生来の発信への苦手意識やら物ぐさやらで、ほとんど行わないまま今にいたり、書きかけの文章もそれなりに積もったままどんどん古くなっております。これで