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僕の好きな詩について 第二十九回 八木重吉

こんばんは!僕の好きな詩について語るnote、第二十九回は、八木重吉氏です。

氏の詩は抜群に短いので、今回はたくさん掲載します。では。
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【美しい 夢】八木重吉

やぶれたこの 窓から
ゆふぐれ 街なみいろづいた 木をみたよる
ひさしぶりに 美しい夢をみた


【心 よ】

ほのかにも いろづいてゆく こころ
われながら あいらしいこころよ
ながれ ゆくものよ
さあ それならば ゆくがいい
「役立たぬもの」にあくがれて はてしなく
まぼろしを 追ふて かぎりなく
こころときめいて かけりゆけよ


【空を 指す 梢】

そらを 指す
木は かなし
そが ほそき
こずゑの 傷(いた)さ


【赤ん坊が わらふ】

赤んぼが わらふ
あかんぼが わらふ
わたしだつて わらふ
あかんぼが わらふ


【おもひで】

おもひでは 琥珀(オパール)の
ましづかに きれいなゆめ
さんらんとふる 嗟嘆(さたん)でさへ
金色(きん)の 葉の おごそかに
ああ、こころ うれしい 煉獄の かげ

人の子は たゆたひながら
うらぶれながら
もだゆる日 もだゆるについで
きわまりしらぬ ケーオスのしじまへ
廓寥と 彫られて 燃え
焔々と たちのぼる したしい風景


【雲】

くものある日
くもは かなしい
くもの ない日
そらは さびしい


【草に すわる】

わたしの まちがひだつた
わたしのまちがひだつた
こうして 草にすわれば それがわかる


【空と光】

彫(きざ)まれたる
空よ
光よ

【つらぬく 光】

はじめに ひかりがありました
ひかりは 哀しかつたのです

ひかりは
ありと あらゆるものを
つらぬいて ながれました
あらゆるものに 息を あたへました
にんげんのこころも
ひかりのなかに うまれました
いつまでも いつまでも
かなしかれと 祝福(いわ)われながら

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短文で、光り輝くことば。第八回で取り上げた 矢沢宰https://note.mu/hally10031003/n/nfd22e20601f5
も同様のスタイルで、猛烈に影響を与えた(受けた)ことが見て取れます。

ふたりにはキリスト教徒であること、そして病床に伏して詩作し、早逝したことなどの共通点があります。
(八木重吉氏は29歳、矢沢宰は21歳ですが)

短い文章のなかに鋭い言葉が配置されるスタイルはまるで絵画を鑑賞しているようです。

こんなに短くてキラキラとしているのに、言葉がざくざくと刺さってきて、胸が痛いほど作者の苦悩が伝わるのは、本当に凄いこと、恐ろしいことだと思います。

#詩 #現代詩 #感想文 #八木重吉 #矢沢宰

いつか詩集を出したいと思っています。その資金に充てさせていただきますので、よろしければサポートをお願いいたします。