我を忘れる出会い

2月3日
夜更けまで文章を書き、皆より遅く眠ったこともあってか、1番最後に起きた。
というか起こされた。
昨日のサプライズパーティーで使用されていた造花の花びらを顔面付近にばらまかれ、「『眠れる森の美女』じゃん!」と盛り上がっていた。
「いや、どちらかっていうと棺……」
寝起きの弱々しいツッコミをして起床。

残り物の恵方巻きと、残った酢飯で作った茶漬けで朝食を済ませる。
身支度をして家を出て、その後は仕事に行く者や家に帰るものなどバラバラに別れた。
私は特に予定がなかったので、そのうちの1人について行き、池袋で上司の結婚祝い品を買うのに同行した。
「調理器具系がいいよねぇ」と色々見て回る。普段あまり見ないフロアなので、全てが目新しく感じ、かわいくておしゃれな調理器具たちに胸を躍らせた。

無事購入し、その足で催事場で行われていたバレンタインチョコフェアへ。
見渡す限り、人、人、人。歩くのにも精一杯なほど人で溢れかえっている。店員さんの声、はしゃぐ女性たちの声、とにかく賑やか。これは中田ヤスタカ氏も『デパートの地下も揺れる』と表現するわな。
試食させてもらったり、たくさんのチョコに囲まれたりしたおかげで、元々そんな気はなかったのに、すっかりチョコの購買欲が湧いた私は、特に目見麗しかったチョコを自分用に買った。最近話題になっている第4のチョコレートこと『ルビーチョコレート』だ。

チョコレートを一通り見て回ったあと、今度は洋服を見に行った。
友人はおしゃれで、美的センスも優れているので、彼女が服を選んでいるのに同行するだけでだいぶ楽しかった。
「もっちーは買わないの?」
彼女はそう問うた。確かになぁ……と自分の今日の格好を顧みる。ここ2年冬に着ているグレーのロングコートに、知り合いのイラストレーターさんのSUZURIで購入した白いパーカー、安定のGUの黒スキニー、足元は情けないほどボロッボロなサッカニーのスニーカー。とにかくガキである。最近の中学生でももう少しまともなおしゃれをしていると思うほど、私に洒落っ気がない。
「こういうの、かわいいと思う!」と彼女が色々紹介してくれるが、いまいちぴんとこない。かわいいと思うが、買おうとは思わないのだ。なんて言うかな、脳が服について考えることをシャットアウトしている感覚だ。

そんな思考停止状態でぼけっとウィンドウショッピングをしていた私だが、あるお店の商品を見てふと立ち止まった。
そこにあったのは、デニム素材のトレンチコート。ビッグサイズで丈も長く、つぎはぎのような独特のデザインがかわいい。
コートなんて買うつもり、毛頭もなかったのに、それを一目見た瞬間から気になって仕方がなくなった。
他の店を見ていてもそのコートが忘れられないし、お茶休憩も『そういや春コートはショートトレンチ1着しかなかったな……』とデニムコート購入に傾いていった。
結局、どうしても諦めきれず、もう一度その店に入り、羽織らせてもらった。くぅ、やっぱりかわいい。
「この商品、かなり人気で即完売してたんです。で、この間やっと再入荷したんですよ!」
魅力的な営業トークを店員さんが仕掛けてくる。買いたい。めちゃくちゃ買いたいが、値段は1万5千円。国民年金1月分くらいある。数刻前、ABCマートで5千円のスニーカーすら『いやでもまだ履けるか……』と保留にした女だぞ?あってもなくても困らないコートを、わざわざ高額で買う必要n……
「お客様!これ、今確認したらラス1でした!」
「買います」
そして気がついたときには、私はレジでカードを切っていた。
ああ、もっと働こう……。

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