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琥珀色クエーサー

琥珀色クエーサー 楽曲解説

2曲目、クソデカ感情と言う名のブラックホールに捕まって抜け出せない生命の曲です。

 登場人物は生命(琥珀色の子)、“魔法使い”(赤い奴)の二人だけになります。
 今回も例に倣って歌詞に解説入れていきますが、めちゃくちゃ多い&長くなってしまいましたので、一番最後にシンプル歌詞のみの項目も置いておきます。歌詞情報だけ欲しい忙しい人は目次から飛んでね。

楽曲解説

手繰る 幼い頃の記憶を
親代わりの“魔法使い”は言う←生命は“魔法使い”によって生成されましたが、決して親ではないので。
「どうか、その笑顔絶えぬように」←“魔法使い”はいつも何かとこう言いながら生命の頭を撫でていました。
紅茶とはちみつが香り立つ←はちみつ入りの紅茶です。
姿変わらぬ赤目の彼は←不老長寿である“魔法使い”は生命が幼い頃から姿が変わっていません。
昨日の夢で見た少年に どこか似てた

朝日と共に伝う朝露
昼下がりの時計の針の音
夜風が運ぶ澄んだ空気は彼方の光を瞬かせた
何の変哲も無い日常
異質な僕さえも取り込んで
今も世界は広がっている←“魔法使い”によって人工的に生成されたという異例の存在である生命でしたが、どうやら世界の理は彼を拒絶し崩壊したりはせず、受け入れている様子。

事象の地平面からこの先に続く世界を
もし望めたらのなら

何の為にこの命があるのかなんて知る筈なくて
ただ信じていた 自然の一部分として生きるだけだと
夜の雲の隙間を縫って恒星達の散った命は
強く細くこの瞳に降り注いだ 確かな証←たとえ死んでしまっても確かに存在していた事実は消えないものだ。

満ちていた月は欠けてしまった←「時間経過の描写」と「不安や悩みから来る、今まで満足に感じられていた幸せの欠落」の二つの意味。
問いかけを口にできないまま←これから述べる悩み事を“魔法使い”に相談できずにいます。
毎夜のように見る夢の中
彼と同じ顔の青年に←“魔法使い”にそっくりな青年です。
握られた手に残る温度が
あまりにも現実みたいでさ
次第境界すらも溶けてく←夢と現実がごちゃごちゃになりつつあります。

平穏な日々の間に
インク一雫滲んで←“魔法使い”が不老長寿の代償のように患っている持病で倒れました。これが初めてではなく、暫く安静にしていれば回復するので、生命はいつも通り“魔法使い”を寝室へ運びます。
あの日理解してしまった
あれは夢なんかじゃなくて
「誰か」の思い出だ←自分にそっくりな誰かと、“魔法使い”にそっくりな夢の青年の古いツーショット写真を目にしてしまいます。この写真が存在する事実が示す真実は……

何の為にこの命があるのかなんて知らなかったが
今、解った この身に宿る幾年もの時の重さも←“魔法使い”がわざわざ不老長寿になってまでやろうとした事の成果物が自分なのだと悟ります。
地図が示すヴェークの意味は、貴方がくれた名前の意味は、←全て「誰か」を再現する為のものだったのか?僕は「誰か」の模造品だったのか?と考えています。因みにヴェークはドイツ語で道。
揺らいでいく世界の中で変わらず光る渦巻く銀河←受け入れ難い事実を前にして、生命の主観で見た世界がどれだけ揺らごうが、慈悲深くも無慈悲に森羅万象が動じることは決してありません。

(間奏)←受け入れ難い事実達を頭の中で整理しようと必死に考えますが、考えは纏まらないし考えれば考えるほど混乱して涙も出てきます。そうしているうちに知らぬ間に泣き疲れて眠っていた生命が再び目を覚ますと、あんなに纏まらなかった思考が明確な答えを導き出していました。「誰か」は、かつて死んだ筈の生命自身でした。夢は生前の記憶だったのです。生命は、どういう経緯か“魔法使い”となった親友によってこの世に蘇生されていたのでした。真実に気が付いた生命は、早速“魔法使い”こと親友の元へ向かいます。しかし、いつもならそろそろ回復している頃なのに、“魔法使い”は先送りにしてきた寿命が遂にやってきたのか、今にも事切れそうになっていました。

何も迷う事なんてなかった筈だったの←仮に自分が誰かの模造品だったとしても、“魔法使い”は今ある僕の事を愛してくれていたし、僕が僕である事に変わりはない。
すぐに気付けなかった←「迷う必要は無いと気付けなかった」と「あれだけ情報が揃っていたのに、なかなか答えに結び付かなかった」と「“魔法使い”の容体の変化にすぐ気付けなかった」のトリプルミーニング。
呼吸浅くなった君のこの心臓を借りるよ←今にも事切れそうな彼と一度死んだ筈の自分を天秤にかけ、彼を延命する事を選びました。生命は“魔力”の塊なので、やろうと思えば自身を丸ごと“魔力”に変えて“魔法使い”の心臓を動かす動力になる事が出来ちゃうのです。尚“魔法使い”と自分の正体に気付いたので、貴方から君という呼び方に変わっています。
こんな僕をどうか許して←自分のやろうとしている事はきっと“魔法使い”は望んでいないのだろうと薄々解っているので。

何の為にこの命があるのかなんて僕が決めれる
そう教えてくれたのは他でもない君だ←生命に責める意図は微塵もありませんが、責めてるようにも聞こえる言い回しになっています。
大好きだった←親友としても、親代わりの“魔法使い”としても大好きでした。いっぱい愛されたからね。
夜の雲の隙間を縫って流れる星に願いを託す←“魔法使い”が元気になりますように。
君の為に生きられたならそれだけでもう、僕は幸せだ←「僕の命は君を為に使うと僕の意思で決めた、だから僕は十分に幸せだよ」という気持ちです。が、残念ながら“魔法使い”には伝わりません。彼がそれを理解しようとしてないとも言えますね。


手繰る 幼い頃の記憶を←長い年月が経った後、あの結末を受け入れられなかった“魔法使い”によって生命はまたこの世に生成され、かつてと同じ思考をしています。
親代わりの“魔法使い”は言う
「どうか、その笑顔絶えぬように」←前回とは違う周回なので記憶も状況も異なります。
紅茶とオレンジが香り立つ←今回はオレンジティー。
姿変わらぬ赤目の彼は
昨日の夢で見た少年に←夢の少年と“魔法使い”が似ているという思考に至りかけた所で頭を撫でられて思考が中断されました。何なら「あれ?さっきまで何考えてたんだっけ?」となってます。

 要は、“魔法使い”によって蘇生された生命がまた死んでしまったのでもう一回蘇生されたという内容ですね。


 蘇生の仕組みとかは話せば長くなるので省略しますが、前世来世といったものではなく、全て今世に該当します。「生まれ変わる」訳ではなく本当に「蘇生」なのですが、蘇生すると赤ちゃんレベルから再成長していく事になります。成長の過程で前回の記憶も順を追いながら徐々にロードされ、前回死んだ辺りの成長度に到達する頃には確実に前回の記憶の読み込みが完了する、というのが本来の状態なのです。

 この曲の冒頭の段階で既に生命は前回死んだ年齢まで成長していましたが、見ての通りようやく少年期の記憶をロード(夢という形で)しています。これは“魔法使い”が前回の記憶をロードしないように“魔法”をかけていたからです。「その笑顔絶えぬように」と定期的に頭を撫でている時に、毎回「幸せになれる魔法」と称して記憶復元を阻害する“魔法”をかけていました。ですが、流石に本来あるべき状態になろうとする作用は彼の“魔法”を以てしても抑え切れなくなり、生命は夢として記憶を見る事になります。しかし中途半端に“魔法”が効いているせいで夢の内容を正しく理解出来ず、生命は混乱し、悩みとなり、余計な疑い(模造品として生み出されたのか?)が発生してしまうのでした。
 そんな中、“魔法使い”が倒れた事で、定期的な上書きで強度を保っていた“魔法”のメンテナンスがされなくなり、前回の記憶がきっちり全部ロードされてしまったのが間奏の部分となります。ここ歌詞としての描写も無ければ絵としても描写してません。
 曲の最後に頭を撫でられているシーンも、思い出しかけてることを前回からの学習で察知した“魔法使い”が“魔法”で阻害している描写となります。

 生命が何故、自分の命を溶かしてまで“魔法使い”を救おうとしたのかですが、一度死んでるはずの命がここに存在するべきではないと思ったからですね。他にも沢山理由はありますが。
  因みに事切れそうだった“魔法使い”、実はあのまま放置してたら普通に自力で復活してました。このどこから湧いてくるんだというくらいの生命力が彼を長寿たらしめています。本当は命を溶かす必要無かったんですよね。だから心臓を動かす動力と化した“魔力(生命だったモノ)”を取り外してしまっても問題なかった。ただ慎重に取り外す必要はあったので、取り外し(抽出)に数年、抽出した“魔力”に蘇生する為の下準備を施すのに数年、蘇生に数年、成長に数年、トータルで約48年の年月を経て最後のシーンに至ります。

 少なくとも
2回目の蘇生をするのにこれだけの時間を要していますから、1度目の蘇生に至るまではどれだけの時間が必要だったのでしょう……という話はまた別作品で出来たらと思います。いつ作るかは分かりませんが。


歌詞のみ


『琥珀色クエーサー』


手繰る 幼い頃の記憶を
親代わりの“魔法使い”は言う
「どうか、その笑顔絶えぬように」
紅茶とはちみつが香り立つ
姿変わらぬ赤目の彼は
昨日の夢で見た少年に どこか似てた

朝日と共に伝う朝露
昼下がりの時計の針の音
夜風が運ぶ澄んだ空気は彼方の光を瞬かせた
何の変哲も無い日常
異質な僕さえも取り込んで
今も世界は広がっている

事象の地平面からこの先に続く世界を
もし望めたらのなら

何の為にこの命があるのかなんて知る筈なくて
ただ信じていた 自然の一部分として生きるだけだと
夜の雲の隙間を縫って恒星達の散った命は
強く細くこの瞳に降り注いだ 確かな証

満ちていた月は欠けてしまった
問いかけを口にできないまま
毎夜のように見る夢の中
彼と同じ顔の青年に
握られた手に残る温度が
あまりにも現実みたいでさ
次第境界すらも溶けてく

平穏な日々の間に
インク一雫滲んで
あの日理解してしまった
あれは夢なんかじゃなくて
「誰か」の思い出だ

何の為にこの命があるのかなんて知らなかったが
今、解った この身に宿る幾年もの時の重さも
地図が示すヴェークの意味は、貴方がくれた名前の意味は、
揺らいでいく世界の中で変わらず光る渦巻く銀河


何も迷う事なんてなかった筈だったの
すぐに気付けなかった
呼吸浅くなった君のこの心臓を借りるよ
こんな僕をどうか許して

何の為にこの命があるのかなんて僕が決められる
そう教えてくれたのは他でもない君だ
大好きだった
夜の雲の隙間を縫って流れる星に願いを託す
君の為に生きられたならそれだけでもう、僕は幸せだ


手繰る 幼い頃の記憶を
親代わりの“魔法使い”は言う
「どうか、その笑顔絶えぬように」
紅茶とオレンジが香り立つ
姿変わらぬ赤目の彼は
昨日の夢で見た少年に

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