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グリム童話考察⑧/「ラプンツェル」とは何か

(ブログ https://grimm.genzosky.com の記事をこちらに引越ししました。)

※あくまでもひとつの説です。これが絶対正しいという話ではないので、「こういう見解もあるんだな」程度の軽い気持ちで読んでください。
※転載は固くお断りします。「当サークルのグリム童話考察記事について」をご一読ください。

主人が学生時代に「ラプンツェル」という名前について調べていたらしく、その資料が出てきたので載せてみます。

(ラプンツェルのお話についての薀蓄や考察は、過去の記事でも書いていますのであわせてどうぞ。)

日本語では「Rapunzel」は「ちしゃ・野ぢしゃ」と訳されることが多いのですが、実は「Rapunzel」が本来何を意味するのか、はっきりとはわかっていないのだそうです。
グリム童話のラプンツェルのお話の元ネタと思われるお話に、バジーレという人のペトロシネッラというお話があるのですが、そのお話の中で女の子は「パセリちゃん」と呼ばれていました。それをシュルツという人が、理由も言葉の意味もわかりませんが「Rapunzel」という名前に置き換え、それがグリムによって広まったのだと考えられるのだそうです。

一応日本で訳されている「野ぢしゃ」について書くと、学名は valeriana locusta で、valeriaはローマ帝国の地名、locustaはネロ帝の時代に、毒薬に精通していた女性の名前なのだそう。

また、ラプンツェルと名のつく植物(別名だったり通称だったりで)は一種類だけではなく、たくさんあるとのこと。
以下、主人の学生時代の資料より、ラプンツェルと呼ばれる植物の一例。

Baldrian(カノコソウ)・Feldsalat(ノヂシャ)・Teufelskralle(悪魔の爪の意)・Nachtkerze(夜のろうそくの意)・Rapunzelglockenblume(フウリンソウ)・Katzenkraut(猫野菜の意)・Hauhechel(伐採ぐしの意)・Schafgarbe(セイヨウノコギリソウ)・Gamander(?)・Katzenminze(猫ミントの意)・Augenwurzel(目の根の意)・Dennenmark(?)・Hexenkraut(魔女の野菜の意)・Hechelkraut(くし野菜の意)・Harnkraut(小便野菜の意)・Bruchkraut(つぶれた野菜の意)

さて、上記の中で、主人的にラプンツェルの物語に関係しそうなものをピックアップしたのが下記です。(主人の学生時代の資料より)

・Baldrian(カノコソウ)…魔よけなどに使われる薬草で、名前はラプンツェルの学名の「valeriana」が変化したもの。
・Feldsalat(ノヂシャ)…キク科の草で、「ちしゃ」は乳の意。おそらく切ると乳液状の汁が出るため。
・Teufelskralle(悪魔の爪の意)…花の形が鉤型で爪に似ている。
・Katzenkraut(猫野菜の意)…上に同じ。爪が似ていることから。また、西洋では魔女と猫はしばしば同じ意味を持つとされる。
・Hexenkraut(魔女の野菜の意)…上に同じ。あるいはlocustaからか。
・Hauhechel(伐採ぐしの意)…Hauはhauen(切る)。Hechelはすきぐしの意。葉の形がくし状のため。
・Bruchkraut(つぶれた野菜の意)…丈が低いことからこの名前がついたと思われる。全体に黄緑色の毛がびっしりとはえている。
・Rapunzelglockenblume(フウリンソウ)…Glockenは鐘の意。花がつり鐘の形をしていることから。
・Augenwurzel(目の根の意)…資料なし。

この辺のことから、当時の主人が立てた仮説が以下のとおり。

グリム童話における「Rapunzel」とは
 1.野菜
 2.薬草
 3.猫
 4.金髪
 5.鐘
である。

1.野菜…ラプンツェルの母親の食欲の対象。
2.薬草…魔女の存在を暗示。
3.猫…猫が登場し、王子の目をひっかく。実際にはいばらのとげに刺されて視力を失うが、この野菜は葉がとげ状なので、「猫がひっかく」と解釈してもよい。
4.金髪…Bruchkrautの見た目が金色の長い髪の毛を連想させる。
5.鐘…音を出すものとして。

以上、主人の仮説おわり。
個人的には4の「Bruchkraut」で検索して出てきた画像が全然金髪っぽくないので、これは眉唾モノなんですが。それ以外は確かに筋が通っているっぽい。

また、主人の資料によると鐘は葬式の際に魂を導くためのものだそうで、ラプンツェルが王子を導いたのは世界から隔絶した地の果てなのである、だそうです。(鐘説については前回のラプンツェルの考察記事もどうぞ)

以上、グリム兄弟が「ラプンツェル」と呼ばれる複数の植物が持つ意味に内容をかけて、あの物語を書いていた可能性があるかもしれないということでした。

Written by : M山の嫁