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ロス・フトゥボレス ~戦術批評の先へ~



システム、戦術、サッカーIQ、ファイナルサード、トランジション、日本人大好きなサッカー用語だ。

銀河系軍団。
ラウル、フィーゴ、ジダン、ロナウド、モリエンテス、グティ。
彼らがいれば、スーパースター達の活躍で、チームは勝利し、スペクタクルを魅せてくれると思っていた。

しかし、それは、1人の魔法使いが掛けた、全てのマドリディスタが見た夢だったのだ。
とても、とても、素晴らしい、魅力的な夜を輝かせる幻想的な夢だった。

そう、デルボスケが指揮官の時代。
自分はマドリーに監督などいらないと思っていた……。


サッカーに戦術はつきものだ。
戦術がなければ、サッカーは語れない。
勝てなかったのはシステムが悪いからだ。
負けなかったのは、トランジションの早さと、前からのプレッシングのおかげだ。

そんな話題は毎日の挨拶だ。


この監督は守備的な戦術だから、云々。
誰を交代で出した監督の意図がわからない。

何故か、サッカーファンというものは、この戦術と呼ばれるものに魅了されている。

試合をするのは選手であるということを忘れている時すらある。

しかし、物事は実はシンプルなのである。

選手1人1人の長所が融合すれば、チームはまとまり、スペクタクルなものとなる。


自分は未だに、そんな極論すら描いてしまうし、そうだとも思っている。
実際には、プレーするスタイルや、ビジョンなど、サッカー用語を多様して考察してしまうのだが……。




ビセンテ・デルボスケ。
銀河系を銀河系たらしめた偉大なる指揮官だ。

この元スペイン代表監督のサッカーは夢が溢れていた。

積極的に上がり、ジダンやフィーゴと連携する両サイドバック。
スルスルと裏に抜け出し、いつの間にか脅威となるラウル。
狭いスペースでも、フィニッシュへと繋げてしまうロナウド。
少ないタッチで、相手のディフェンスを切り崩すパス交換。
まさに空間を切り裂いたとしか言えないグティのスルーパス。

いつも、そこでヘディングができるよう落下点にいるモリエンテス。

そして、1度や2度では止まらない波状攻撃。

自分はこれこそが未来型トータルフットボールだと思ったほどだ。

スーパースターがいれば、戦術など、監督など、ベンチの置物だと。
そう、錯覚させるほどの魔法使いだったのだ。


デルボスケは温和を絵に描いたような見た目だ。
人と争うようなイメージは一切ない。
ベンチから優しく試合中の選手達を見守るおじさん。
そんな感じだった。


だからこそ、彼のチームマネジメントの素晴らしさに気付かなかったのだ。
人身掌握術に長けているというよりは、人と人との心に入りやすい、信頼できる指揮官だったのだと思っている。


後に、監督とは如何なるものが1番必要か?
認識させてくれた監督である。


ビセンテ・デルボスケ。
彼は自分にとって、サッカーに必要なのは戦術ではないと示してくれた賢者である。

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