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『マインドトーク』を読んで

みたらし加奈さんの著書、『マインドトーク あなたと私の心の話』を読みました。

みたらし加奈さんのこれまでの人生、どんなことが起きて、今の加奈さんを作っているものは何なのか、それを知ることができる一冊です。最初から最後まで、やさしい言葉遣いで紡がれる文章。それでも加奈さんが直面する出来事には残酷なものもありました。心から乗り越えられたからこそこうやって表現することができるのだと思います。

加奈さんの人生と私の人生は、はっきり言って全く違う世界線にある。出来事として共感できる(同じように体験したことのある)エピソードはほぼ無いに等しかった。その中でも、いくつか、心に残った、共感できるエピソードがある。

マジョリティとマイノリティ

この章で、加奈さんはこう言った。

​私が唯一「マジョリティである」とはっきり断言できるのは、右利きでO型であることだけだ。

なるほどな、と思った(もちろん前後の文脈も読んで)。私は、マジョリティとマイノリティについてきちんと理解していると思っていたけど、それは幻想だった。「理解している」なんておこがましい。「体感している」べきだと思った。

私の存在はマジョリティだと勘違いをしていた。

私には母がいて、父がいて、兄弟姉妹がいて、実家があって、大学に行けて、20歳そこらまで健康に生きられて。それは奇跡でマイノリティであることを実感した。

少し嬉しかった。

もし、逆の立場で真剣に悩んでいる方がいたなら、申し訳ないけれど、「マジョリティである(と勘違いしていた)」私は、自分が何かの唯一の存在でないことを悲しく思うことがあった。なんというか、モブ感というか。

そうではなく、全員が何かのマイノリティであり、貴重で、奇跡で、当たり前などない、と知れて、嬉しかったのだ。

自傷行為の話

私には唇の皮をむく癖がある。一方、リストカットとかは痛くて怖いのでおそらくしない。したこともない。書きながら矛盾を感じる。唇の皮をむくときも痛いのに、なぜかやめられない。そもそも唇が乾燥しないように、リップクリームを持ち歩いているけれど、やっぱりむいてしまう。

どうやったらやめられるだろうか。ご存じの方教えてください。

「君の料理を食べてみたい」

私が以前お付き合いしていた方も、私が作った料理を食べたがる人だった。私もあまり料理が好きではない。それに苦手だ。自分が食べるための料理なら、失敗しても気にならないし気楽だから作る(それでも1週間に1回作るかどうか)。お付き合いする方であろうと、親であろうと、友人であろうと、他人に料理を作るには気力がいる。あなたは、苦手で気力が必要なコトを他人に強いられる(期待される)とどんな感情になるだろうか。

私は面倒くさいと思ってしまった。

料理作って、と言われたとき、私は「苦手だし下手だから嫌だ」と言った。すると、「そんなことないよ。じゃあ一緒に作ろう!」とスーパーポジティブに返された。何がそんなことないのか分からない。「今どきコンビニの方がおいしいよ」と返すと、「コンビニって高いじゃん!それより手作りの方が作ってくれたって感じで嬉しいし。」と。私はその「感じ」をあげるために自分を犠牲にできるほど大人じゃなかった。彼はそんな気じゃなかったかもしれないが、私には、ただ「彼"女"にご飯作ってもらったって言いたいだけ」の人に見えた。

「料理問題」とさらに「理系女子問題」は至る所にある。例えば、何気ない世間話でも出てくる。思い出せる限りで最も失礼だったのは、

モブ「自炊はするんですか?」
私「いえ、あまりしないですね~」
モブ「そっか~やっぱり理系の方は女性でも自炊しない方が多いんですね~」
私「(愛想笑い)」

料理をする理系の皆様には、私が料理をしないがために大変失礼なことになってしまった。私は料理ができる人間のことは、性別がどうであろうと、年齢がいくつであろうと、尊敬する。理系なのにとか男性なのにとかは一切思わない。いつになったら万人がコンビニだけで生活していい世の中になるんだ。

最後に

冒頭で、みたらし加奈さんの人生と私の人生は違う世界線だと言った。違うといっても、この宇宙の同じ銀河系の同じ太陽系の同じ地球の同じ日本という国の中での違う世界線なので、ほぼ一緒なのだけど。でも、家族も本人の体験もこれからの未来も全く違う。全く違うからといって、私の人生が悩みも障壁もない人生かといえば、そうではない。そりゃ大した問題も挫折もなかった人生かもしれないけれど、私にとってはツライこともある。

人は時に、勘違いをする。自分とは違う人生を歩む人は、自分が持っているような悩みなど一切なく、順風満帆だと。そんなはずはないのに。

私は、ツラくなった時、よくあの人になりたいとか、この人になりたいとか思う。外から見て順風満帆そうに見えるからだ。そんなことはなくて、その人にもツライことはあるとは、頭ではわかってるけど、心では受け入れられてない。多分、明日からもツライときは憧れの人を思い浮かべては羨ましがる。けど、これからは、一瞬この本のことを思い出して、「人には人の悩みがあって、自分だけではどうにもできないこともあって、それでも自分の人生は自分のものだ」と思える気がする。


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