見出し画像

【閑話】3Dモデリングの作成時に気を付けていること

ここで余計な話になるかもしれませんが、私には3Dデータを作成する時に気を付けていることと言うか、こうするべき、こうあるべきだということがあります。

最初の方は、文章ばかりで面白く無いかもしれませんが、後半では実際に今回のデータを改良していますので、どうか最後まで読んで頂けるとありがたいです。

私は、データを最終的に完成させるときは、もう一度データを見直して他の人が見て判り易いデータになる様、改良や修正を加えたうえで最終データとする様にしています。

文章で言えば推敲することと同じ様なものです。
人に手紙や文書を送ったり仕事で書類を提出する時、下書きや書き殴ったものをそのまま送ったり提出したりはしませんよね。

以前、家具メーカーで仕事をしていた時、クリエーターから送られてくるデーターは時として粗雑なデータだったりします。
それをPMI(Product Manufacturing Information:製品製造情報)として全ての必要な部署で共有するためには、だれが見ても判り易い3Dデータ(言ってみれば共有物としてのマスターデータ)にする必要があります。

そのために私が気をつけていることのまず一つは、作成履歴(デザイン履歴)の起承転結をきちんと判り易く整理するということです。
先程もデータを文章に例えましたが、クリエーターが思いつくままに作成したデータは、関連性のあるフィーチャーが履歴として離れた場所に作られていたり、逆に関連性の無いフィーチャーが「えっなぜ今ここで?」と言う様な場所にあったりします。
これを並べ直して、他の人が見ても関連性が判り易い様にします。


データの作成履歴に起承転結を付ける上で、私の考えの基になっているのが「LOD」という考え方です。
専門的な詳しいことは、下のリンクを参考にしてください。

「LOD」は建築の分野などで使われている考え方ですが、Level Of Detail又はLevel Of Development などの略語で、ディテイルの詳細度のレベル、開発が今どの段階にあるかを表すレベルのことを言っていると承知しています。
ただ私は、自分の解釈で、この考え方を3Dデータの作成履歴の起承転結を考える際に使っています。

例えば、椅子の様な部品が複数あるモデルの場合、
起:大まかにざっとした部品を作成し配置する
承:部品の形状のディテイルをデザインする
転:部品どうしの接合や結合部品(ファスナー)などを書き加える
結:パターンコピーやミラーコピーで全体を整える
といった感じです。(実際は、こう上手く行きませんが)

クリエーターが作り終わったデータを受け取ってから、マスターデータの作成に入れると良いのですが、昨今、コンカレントエンジニアリングと言われて、開発リードタイム短縮の観点から、開発と同時進行で設計や製造も作業を進める場面が増えています。
その際クリエーターとの間で、今は「LOD」のどの段階を進めているのか、進めるべきなのかの意思疎通が大切です。
クリエーターが接合構造まで考えることは無いでしょうが「LOD」の考え方がデータ作成の初めの段階から上手く行っていれば、データの見直しも非常に楽になります。


もう一つは、作成履歴を出来る限り短くシンプルにすることです。
クリエーターは思いつくままに形状を作成するので、その都度プロファイルを作り数が増えたり、たまに、いらなくなったプロファイルやフィーチャーも消さずに(消せずに)残っていたりします。
現に、今回も「スケッチ_側面」は、かなり複雑なスケッチになっていますが、クリエーターは形状をデザインしてモデルを作りこむ際に、あそこまで1つのスケッチを複雑に描きこむことは無いと思います。
実際には簡単なスケッチを組み合わせて、少しずつ形状を決めていくと思います。
今回の様に、形状が確定した段階のプロファイルやフィーチャーは、発想段階でのそれとは違い確定したもの(のちに変更はあるとしても)ですから、こちらも他の人が後から見て関連性を判り易い様にまとめてシンプルにします。

私の場合、この時の考え方の基になるのは「ECRSの4原則」です。
これは業務改善する上での視点と順序で、WEBで調べれば詳しい情報は簡単に得られると思います。
Eliminate(排除):無くす 止めてしまう
Combine(結合と分離):まとめる 一緒にする
Rearrange(入替えと代替):再編成する 改めて整理する
Simplify(簡素化):簡単にする 簡略にする

例えば、プロファイル用にスケッチを作成したが、面がそのままプロファイルになるからスケッチは必要なかったとか。
ブログの「その1」で外側形状を作成する時、面で分割する方法をソリッドスイープで切り取る方法に変更したり。
いくつもあるスケッチの中で、関連性のあるものを一つのスケッチにまとめるとか。
形状を作るたびにミラーコピーで結合していたが、形状が作り終わった段階で最後にミラーコピーで結合したら、ミラーフィーチャーが一度で済んだとか。

実際は、データ作成後にこれをやろうとすると、かなりのスキルが必要で、エラーが出た時の対処法を突き止めて修復するには、エラーに対する耐性やエラー修復経験値なども必要です。
ですから、このような考え方は、データを作成した後では無くデータを作成している段階で常に心掛ける必要があると思います。
でも、プロフェッショナルである以上、これは是非やらなければと言うのが私の信条ですので、今回のデータも少しいじって改良したいと思います。


関連するスケッチをまとめて、スケッチの数を減らしてみる

今回最終的に配布したデータの中に、スケッチは21個あります。

スケッチの数

この中で、XZ平面に平行な面に作成されているスケッチを調べてみると12個あります。

XZ平面に平行なスケッチ

これらのスケッチのいくつかをまとめて数を減らしてみることにします。
繰り返しになりますが、これはあくまでクリエーターが形状を決めてくれたからできることで、これをやる目的は、マスターデータとして誰が見ても関連性が判り易いデータを作ることです。
何もそこまでしてまとめなくても良いのにと思われる方もいるかと思いますが、その通りで、判り易いのが目的で数を減らすのが目的ではありません。
今回は、多少強引ですが、とにかく数を減らしてみました。


表面に作成するフィーチャーのプロファイルを一つのスケッチにまとめる

スケッチをまとめる際には、履歴の後のスケッチを同じスケッチ平面を使用している履歴の前のスケッチに描き加えるのが基本です。
もちろん描き加えるのですから、フィーチャーのプロファイルとして選び直す作業は必ず必要です。
今回まとめたスケッチは下図のようになります。

一つにまとめたスケッチ

実際には「スケッチ38」に描き加えて行き、フィーチャーのプロファイルを再定義した後、不要になったスケッチを削除しています。
では、一番最初に作成した「スケッチ_正面」にまとめることは出来ないのかどうかですが、スケッチのほとんどが「スケッチ_側面」で押し出したボディを参照しているので、それは無理な話になります。
結局、7個のスケッチが一つにまとまったことになります。

XZ平面に平行な残りの5個のスケッチは、下図の様になります。
「スケッチ_正面」以外に、まだ4個のスケッチがあります。
おもに裏側のフィーチャーを作成するためのスケッチです。
これもまとめようと思えばまとめられるのですが、少し強引過ぎるので、判り易さという観点からそのまま単独で残すことにしました。

まとめた以外のXZ平面に平行なスケッチ

同様にYZ平面に平行なスケッチをまとめる

YZ平面に平行なスケッチは5個あります。
と言いますか、スケッチ平面としてYZ平面を選んでいるかは別として、全てYZ平面上のスケッチです。

YZ平面に平行なスケッチ

今回は、多少強引ですが「スケッチ18」に「スケッチ_側面」以外の3個のスケッチをまとめることにしました。
4個のスケッチをまとめると下図の様になります。

YZ平面上にまとめたスケッチ

これで、5個のスケッチが2個になったのですが、スケッチの完全拘束が難しかったり、フィーチャーのプロファイル選択がややこしかったりしたので、必ずしも4個のスケッチを一つにまとめた方が良かったかと言われると、何とも言えません。(皆さんの判断に任せたいと思います)
フィーチャーの順序も変える必要があったので、変えています。

YZ平面上のスケッチ2個

最終的にスケッチは全部で12個になりました。9個減ったことになります。
上図の様にスケッチの名称も少し判り易く変更しました。


今回は、3Dデータを作成するにあたっての私の心構えと、今回作成したデータを改良して実際にスケッチの個数を減らす試みを紹介しました。
改良したデータを公開しますので、先回の公開したデータとの違いを比べてみてください。
今回、改良を加えたデータはコチラです。 ↓↓↓

閑話休題、次の投稿は、ようやく次の部品の作成手順です。
もうしばらく、お待ちください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?