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書店カバー烈伝:HMV&BOOKSの巻

昨年書いた記事の中でもかなり多くの方に読んでいただけたのがこちら。

昨年じゃなかった。おととしだった。びっくりした。だれかそろそろ時の流れを堰き止めるぐらいのことに取り組んでみてもいいんじゃないか。

ともあれ、この記事のときに当時Twitterで「続編も楽しみです」「まかせといてよ」みたいなやりとりをしていたのですが…いかんせん親譲りの飽き性で子どもの頃からなにひとつやりきったことがないシマツ。

最初のうちこそせっせと書店カバーを集めたりもしていましたが、そして数枚溜まるたびに「そろそろ書くか…」とこぼすのですが、まあ腰は重いわ、筆は鈍いわ。ついつい忙しさにかまけて放置していました。

そして2024年になって、そうだ、何枚も溜めて発表しようとするからいけないんだ。おっ、これは、という書店カバーを手にいれたらすぐ撮影、すぐ記事化すればよくなくなくなくなくセイイェーッ!というこの世の理に気がついた。

というわけでこれからナイスな書店カバーを見つけてはアップしていこうと思います。どうぞよろしくお願いします。


「渋谷には本屋がない」と智恵子が言ったかどうかは定かではないが、これだけのビッグシティにしてはかなりお寒い渋谷書店事情。なんせわたしが働きはじめた11年前から大型書店がどんどん撤退しています。

たとえば渋谷駅地下直結でブックファーストを見つけたときは狂喜乱舞したのですが、数カ月後には跡形もなく消え、後釜にはヴィレッジ・ヴァンガードが入居しました。

たとえばなんだジュンク堂があるじゃない、と安息の地を見つけたと思ったら今度は大家さんたる東急百貨店ごといなくなって彼は花のように姿を現わします。Coming up like a flower…(by福井ミカ)。

たとえば棚の構成にやや偏りはあれどまあまあそこそこサブカルチックな趣のあったスクランブル交差点前のSHIBUYA TSUTAYAは長いこと改装工事にはいったまま。春にはオープンと聞いていますが果たして…

現時点でまともな書店はマークシティ下の『啓文堂』か西武渋谷店A館7階の『紀伊国屋書店』ぐらい。しかしどちらも規模や品揃えという点で町本屋(町中華に寄せたオリジナル造語)の粋を出ていないんですよね。

こうなるといまの仕事場(ミヤシタパーク北端の対面)からがんばって坂を登って青山ブックセンターへ、ということになるのですが、それはよほど目的がハッキリしているときに限られるわけ。

どちらかというとふらっと、ちょっと空いた時間に、あるいは企画やライティングに煮詰まってきたとき、サクッと立ち寄るのがわたしの好きな本屋さんの使い方。

そうなると大切なのはロケーションとちょっとエッジの効いた棚、ってことになるわけです。つまり下北(青森に非ず)のB&Bみたいな本屋さんね。理想は。

ないかー、渋谷のヤングはいまも昔も本読まねーかー、なんて諦めていたんですがついせんだって健康診断の帰りに偶然見つけた『HMV&BOOKS』があなた、これなかなかのものなんですのよ。


いまひとつコンセプトが見えにくい商業施設、渋谷モディ5階と6階に店舗を構える『HMV&BOOKS』。HMVといえばかつて「渋谷系の聖地」と呼ばれるほどエッジの効いた音楽ソフト専門店でした。

本国の本社が経営破綻したり、日本国内でも事業譲渡やローソングループ入りなど、なんとなくあっちこっちでコスられていまにいたるという印象が拭えませんが、それでも元祖渋谷系のDeNAをかすかに感じる書店、それが『HMV&BOOKS』であります。

たとえばアートのコーナーには幡野さんの本

とワタナベアニさんの本

がきちんと揃えられていたり。

しかも幡野さんの本の横には同じく幡野さんの『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』が、アニさんの本の横には『ロバート・ツルッパゲとの対話』が並んでいて、要するに書店員さんが「わかっている」んですね。

このあたり、他の本屋さんにはない魅力といえるのではないでしょうか。


さて、前フリが長くなりすぎましたが、わたしは今日はじめてこの『HMV&BOOKS』で本を買いました。

そうしたら、書店カバーが、なかなかイカすでないの。

シンプルの極み
邪魔にならないデザイン

なるほど書店出自ではない、ということが伝わってくるカバーデザインですね。あくまでカルチャーという捉え方をしているように感じます。本もコンテンツのひとつ、みたいな。

そういうのは嫌いではないです。逆に権威じみたのは嫌い。伝統は好きだけど。

ちなみにカバーの上のほうになんか文字が小さく入っていますね。拡大してみましょう。

なるほど

LIVE、MUSIC、MOVIEに混ざってBOOKがありますね。ショップのコンセプトを言葉であらわしているようです。このあたりのレイアウトにも既存の書店にはないカルチャーを感じます。

そしてこの日わたしが買った本の、本体のカバー(というのもおかしな言い方ですが)もなかなかいいので見せちゃいます。

デザインの力を感じる

いつからこの意匠になったのかはわからないのですが、書店カバーをするのがはばかられるぐらい、素敵なブックデザインだと思います。

そもそもなんでいまさら梶井基次郎の『檸檬』を?なんですが、きっかけは田中泰延さんと直塚大成さんの共著である『「書く力」の教室』で取り上げられていたこと。

この本の中で『檸檬』は「感動のへそ」はフィクションであってもいい、という教えの中に登場します。どんな内容か、についてはぜひ本書を手に取って読んでいただきたいのでここでは伏せますが、とにかくわたしは田中泰延さんの説を目にして、なるほどそうだよなあ、と思ったのと同時に、おおむかしに読んだ檸檬を再読したくなったというわけです。

直塚さんは『檸檬』を高校の教科書で読んだ、とおっしゃいます。確かにわたしも高校時代に読んだような気がするのですが、いかんせん当時は学業よりも音楽とガールフレンドに夢中だったのですっかり忘れてしまいました。

遅ればせながら人生の忘れ物を取りに行こうと思い、この古典ともいえる短編集を手にしたわけです。いやあほんと、義務教育はきちんと受けておくべきですね。

意味もなく立ててみた

あ、ちなみにこれも今年の年頭の誓い、BTTB活動の一環でもあります。

さて「檸檬」からはどんなことが学べるのか、ページをめくるのが楽しみです。もちろん読了するまでは『HMV&BOOKS』のカバーを付けて。

それではまた、ナイスな書店カバーを見つけ次第報告します!

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