祝・デザインアワード最優秀賞!歌代さんの創造力の源を聞きました
UNIT1のデザイナー3年目、伊藤です。
今回は、先日デザインアワードを受賞された歌代さんへ、福地さんと二人でインタビューさせていただきました。
アワードのこと以外にも、私自身が気になっていたキャリアや今現在の取り組み・考え方について聞いてみました!
プロフィール紹介
歌代(写真中央)
2008年新卒入社。空間デザイナーとして入社し、現在はクリエイティブディレクターとして企業のプロモーション設計やイベント、プロダクトデザインなど、領域を跨いだクリエイティブワークを行う。
福地(写真右)
空間デザイナーとして10年以上従事し、2022年博展に中途入社。
展示会・イベントのプロフェッショナルデザイナーとして活動中。2人の娘の父。
伊藤(写真左)
大学で空間デザインを学び、2020年新卒入社。
現在は展示会を中心に、商環境のデザインにも挑戦中の若手デザイナー。釣りとバスケが好き。
デザインの道に進むきっかけはドクターグリップ!?
ーーまずは、デザイナーを志したきっかけについて教えてもらえますか?
元々、幼稚園ぐらいから絵を描くのは好きでした。小学生の時にドクターグリップが発売されたんだけど、知ってるかな? 当時500円ぐらいの文房具は、小学生には高級だったんだけれど、とても人気で、、、やっと手に入れた瞬間、とても嬉しかったことをとても覚えています。文房具でこういう体験ができるのは面白い、と思ったことが最初のきっかけ。
その後、高校までは普通科でしたが、「工業デザイナーになるには」という本を読んで、小学校のときの文房具の原体験とつながったんです。
工業デザインという道を定めて、理系に進み、美術予備校に通っていなかったので、画力じゃなく発想力や通常科目で受験できる入試方法を探して、最終的に設備や自然環境に魅力を感じた東北芸術工科大学に進路を決めました。
そして、就職活動では家電メーカーを中心に、ディスプレイ業界は博展含め数社という感じで受けました。
ただ、それ以前に家電メーカーでインターンをした際に、デザインと技術、マーケティングの間にクリエイターとしての理想と現実のギャップがあることも教えてもらい、葛藤も抱いていました。
だから、空間デザイナーを募集しているにも関わらず、自分のプロダクトデザインのポートフォリオを提出しても、面接官の社員の人たちが「面白い!」と反応してくれた博展は、クリエイティブに対する理解がある会社なんだと思って、学びの幅を広げる意味でも「ここに入社を決めよう!」となりました。
プロダクトデザインと空間デザインのちがい
ーー元々大学ではプロダクトデザインを専攻していた中、博展で空間デザインに携わることになって、ギャップを感じませんでしたか?
大学のときはプロダクトデザインでミニマムなものを嗜好していたので、実は空間デザインのスケール感や装飾性にはなかなか慣れなかったです。
入った当初は、空間デザインにおいての角R(角を丸くしたデザイン)などは、デザイン的に何の意味があるのだろう?と思ったりしていました。プロダクトデザインでは、機能ベースで考える癖がついていたので。
でも、あるときから、ディスプレイ業界にとっての”装飾”は”機能”のひとつなのだと認識できるようになりました。例えば、ラグジュアリーホテルにおいてシンプルミニマムが決して正解ではなく、物理的機能として不必要な装飾が、実は視覚的、情緒的機能として必要な要素だと。そこから、納得して空間デザインに落とし込んでいけるようになりましたね。
▼歌代さんが手がけたブースデザイン
デザインアワードに個人で応募する意義とは
ーー仕事をしながら、個人として様々なデザインアワードに応募し続け、シヤチハタや東京ビジネスデザインアワードで大賞を受賞されています。その活動は、歌代さんにとって、どんな意味があるんでしょうか?
大学の頃にもデザインコンペによく応募していましたが、再びコンペに出し始めたのは、ここ2~3年ぐらいです。働き始めてからのコンペのブランク期間は、博展でデザイナーとして実際手を動かしてアウトプットができていたから。
あと、お客さまのマーケティング活動をサポートする中で、入社4〜5年目くらいのときに、空間デザインだけでは解決できないビジネス課題にぶつかる機会も増え、ビジネスやマーケティングについても自分で勉強し始めました。
少し前までは、自分で手を動かしてデザインをフィニッシュさせたいという思いもありましたが、今では自分はディレクターに徹し、デザイナーと協業することでより良いアウトプットに繋がることも実感できるようになりました。
実は、その手を動かさなくなったことに対するガス抜きとして、個人活動をしています。センスが衰えたら、クリエイターとして淘汰されてしまうと思うので。
また、インハウスのデザイナーがインハウスのまま、世の中に名前が出ていかないのはよくないなと思っているのもあります。今後は、博展に所属するデザイナーそれぞれが、個人として立っていけるようにしていきたいです。
「博展の〇〇さん」ではなくて、「〇〇さんがいる博展」という方向にしていきたい。自分自身の実績をつくって、自分の実績を見た人が、こういう実績がある人に、こういうことをお願いしたい、と依頼されるような環境が理想的ですね。
あと、応募するアワードのジャンルをプロダクトに絞っているのは、自分のバックボーンでもあるし、敢えて今の仕事と違う刺激と学びが欲しいから。この頃、面白いと感じるのは、これまでのプロダクトのデザイン力に、博展で培ったプロモーションやマーケティング知識が付加できるようになったことです。
ーーなるほど。これまで博展で培ってきたことが、コンペでも活かされているんですね!
そうですね。あと、博展で空間デザインの仕事に携わってきたことで、昔より装飾要素を機能としてプロダクトデザインにも入るようになりました。
シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティションで受賞した「わたしのいろ」はその典型作品だと思います。
▼歌代さんが第12回シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティションでグランプリ受賞した作品「わたしのいろ」
アワード受賞からのクリエイティブの好循環
ーー受賞してから、変わったことはありますか?
シヤチハタのグランプリ受賞で、いいサイクルができたのが大きかったです。受賞後にすぐ、商品化ができたこともいい経験になっています。
今回最優秀賞を獲った東京ビジネスデザインアワードでも、商品化の実績があったからこそ、その観点が生きたと思います。
あと、最初のコンペの賞金は、次回のコンペの資金にあてることができたり、プレゼン用のサンプルをつくる3Dプリンターなどの資材も整えられるようになりました。
そして、お金だけじゃなくて、今回の東京ビジネスデザインアワードでは、著名な審査員の方たちから、商品化に向けた様々なアドバイスがもらえるという特典があるんです。商品の知的財産権についてや販売方法を相談できるなど、商品開発やマーケティングの実践的勉強にも繋がっています。
また、色々なコンペを通して出会った、意欲が高いクリエイターとも繋がれていて、今後のプロジェクトにも加わってもらう計画をしていて、本当にたくさんの好循環が生まれています。
そういったサイクルができたことが、コンペを受賞して一番変わったことですね。
これからの展望について
ーーまさに好循環ですね!これからの展望について教えてもらえますか?
個人名で受賞したことで、個人として名前を検索されて、お客さんから指名で仕事を紹介されるようになりました。しかも、それは博展の仕事として、今、ちょうど案件化しているところ。さっき話したとおり、名前を売る方法としてコンペに参加していたので、まさに理想のかたちです。
SNSでも自分の作品をシェアしていて、自分のポートフォリオやブランディングの位置付けとして発信しています。作品によっては2,000いいね!を超えたり、フォロワーが倍になったりすることもあるのが面白いです。
将来的には、自分の商品を作って、自分で売るということもやりたいと思っているので、SNSはそこにも繋げられたらなと思っています。
大学の頃からの夢は、自分がデザインしたプロダクトを出すこと。それで、学生時代は自分が考えた商品を世に出したいという欲求があったからメーカーを志望していたこともあったんですが、メーカーに入らなくても、今は博展にいながら、その夢を叶えることができているなと思います。
逆にメーカーに就職していたら、良くも悪くもジャンルがある程度固まるので、デザインも凝り固まってしまっていたかもしれない。
博展に入って、クリエイティブ×ビジネスの掛け算を意識するようになって、考える幅が広がってきたと感じます。
若い頃はどれだけいいデザインを作れるかにこだわっていましたが、今はビジネスの観点も加わっていて、それは博展で培われてきたものだと思っています。
遠回りのようだったけれど、博展に入ったことで、大学の頃やりたかったことを叶えられています。
若手デザイナーへのメッセージ
ーー最後に、歌代さんから若手デザイナーへのメッセージをお願いできますか?
今自分がドメインとしているBtoB企業のプロジェクトは今後さらにデザイナーにとって、チャンスが拡大すると考えています。
例えばグローバルで展開するBtoC企業の多くは、ブランディングが高い精度で既に完成されていて、外部のクリエイターが0→1を作る余白がないことも多いです。
一方で、BtoB企業は高い技術力とビジネスの視点を持ちながらも、クリエイティブが社内リソースとしていなかったり、課題感を持っている企業も多い。
そういった企業のビジネスの潮流やマーケティングを、理解しながらデザインを行うのと、意匠的アウトプットに終始してしまうのでは、クリエイティブの質が全く異なるので、その可能性の面白さと学びの重要性を感じてもらえると嬉しいです。
博展にいながら、更なるクリエイティブの可能性にチャレンジできる、その環境に身を置けていることが、私の創造力の源になっています。
<取材を終えて>
福地:「博展の〇〇さん」ではなくて、「〇〇さんがいる博展」に仕事を依頼されるという考え方に、とても感銘を受けました。私も社外で知名度を上げられるように、より一層チャレンジしていきたいと思います。
伊藤:ビジネスの観点も学びながら視野の広い考え方ができるよう、私も勉強しようと思いました。貴重なお話をありがとうございました。
おまけ
歌代さんは、読んだ本をevernoteに要点をまとめるようにしているそうです。オススメ本についても聞いてみました!
問題解決プロフェッショナル:齋藤嘉則
ブルー・オーシャン戦略:W・チャン・キム、レネ・モボルニュ
イノベーション・スキルセット:田川欣哉
HELLO, DESIGN:石川俊祐
世界観をつくる:山口周、水野学
↑ ビジネス名著と感性や心理的側面の大切さを説く本を組み合わせて読むのがオススメとのこと。