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無人店舗の仕組みをグッドデザイン賞に応募。そして受賞。


この度、無人店舗の仕組み<マドカイ>がグッドデザイン賞2021を受賞したので、その経緯を書きたいと思う。僕自身が、この賞の応募過程などの記事を探したのだけれども、数点しか見つからなかったので誰かの役に立てるのではないかと思い。


マドカイとは

熊本市実証実験<五感散歩>を契機に無人店舗マドカイは生まれた。仕組みとしては、空き家となっている建物のファサード(表面)から90cmの奥行きまでをショーウィンドウのように改装し本物の店舗のように見せる。そこにECを組み合わせた仕組み。

これまで他の地域でも聞いた話ではあったが、奥の仏壇が残っている。人が住んでいる。といった理由で、空き店舗を貸すことができないという。だが、多くの家主はシャッターが降りたままではいけない・・・という思いと葛藤を続けている。そのモヤモヤと街の景観、小さな企業が実店舗を持つ工夫、それがマドカイが生まれた背景だ。

大切なのは世界観

店舗をデザイン上するうえで心がけていること。それが、世界観を表現すること。並んでいる商品を作ったり、セレクトしたのには理由がある。その理由が表現されるのが店舗ファサードである。お客様は、見た目で店舗の世界観を感じ、自分が行くべき店なのかそうでないのかを直感的に判別している。そうすると、自ずと客層も揃ってくる。

町の歴史、店舗の世界観を考慮したファサードが並ぶ町は、歩くだけでも楽しい。晴れた日に限らずとも、雨の日は昼から照明演出を感じられ独特の雰囲気が生まれる。これが町の世界観も演出することになり、まちづくりにも通じていくのである。

グッドデザイン賞への応募

応募する予定はなかったのだが、さまざまな予期しない出来事が重なり締め切り数日前にグッドデザイン賞を応募することとなる。まずは、思いのたけを綴り撮っていた写真を添付し1日で応募手続きは整った。その後、何度か推敲を繰り返し最終完了となる。良い思い出にはなるだろうという感覚で。。。

1次選考通過

なんと!

一次選考通過である。

実は全く予期しておらず、この先どうしようかとここから考え始めるのであった。幸い、今度は僕らに2つの武器がある。

①2次選考までの時間

②デザインファームである

この利点を最大限活かし、2次選考の準備に入るのだが、色々と検索しても2次選考への準備や心構えなどが書いてあるサイトがなかなか見つからない。。。。そこで、いずれ本記事を書こうという決意に至る。

2次選考に向けて

さて、何を準備しようか。

マドカイは、「仕組み」である。従って、何もモノが無い。・・・ということは、仕組みがわかるモノ(説明パネル)を準備する必要があるというわけだ。

ここで僕らの武器が役に立つ。

デザインファームなので、パネルをキチンとデザインしよう。誰にも直接説明できない2時選考では、パネルを一瞬みただけでも仕組みと利点が理解できるプレゼンボードが必要だ。しかも、1枚で。

グッドデザイン賞は、お金を払えば受賞できると揶揄する声もあるが、実際にこのあと行くことになる2時選考会場に行くと受賞率が27%あったのも納得だった。なにせ、カテゴリーが多いのだ。デザインという概念が、見た目だけでなく仕組みなどにも及んでくる時代になると、対象カテゴリーが膨大に増えてくる。雑貨・エレクトロニクス・どう活用されるのかは未来に託す技術・車・建築・仕組み・ITなどなど。

これらを3日で審査して回るのだから、1点あたりの選考時間はきっと何時間も取れない。そうなると、パッとみて理解してもらう説明の手法が大切になる。ここも、グッドデザインでなければならないのである。

2次選考

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2次審査ブースの設営

そして出来上がったものが、コレ。

実際に、無人店舗を構えるわけにはいかず、体験をしてもらうような仕組みも用意した。(お古の)携帯をカメラ起動させたまま準備し、(現役の)iPadを現場に残しテザリングで携帯と繋げておく。これで、擬似ウィンドウの商品窓横に設置するQRコードから商品ページを取り込んでもらおうというわけだ。しかも、体験してもらえないことも想定し、体験がわかるパネルも準備しておく。

2次選考最大の恩恵

会場は、撮影禁止。

自分のブースについては、許可をとって撮影している。

つまり、サービスが世に出る前の秘密情報が満載の会場である。

グッドデザイン賞における最大の利点といっても過言ではない。ここに集まるものに、知恵が絞られてないものはない。どれを見ても、今後の参考になるし、自分がグッドデザイン賞を受賞できる気がどんどんなくなってくるほど秀逸なサービスやモノで溢れている。審査台の設置は、20分ほどで終了したが、その後何時間も会場を回り勉強に明け暮れた。受賞を狙わなくても、2次審査会場に行くことだけでどれだけの価値を得られることか。なにせ、ここの集う人々は応募者である。知恵の限りを絞り出し試行錯誤を繰り返し費用も投じ開発をこなった人々である。彼らがここに来て何も感じないということは万に一つもないと確信する。

そして受賞

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グッドデザイン賞受賞のリリース

会場で打ちのめされただけに、受賞通知が来た時は、驚いた。
受賞ページ

記事が書きやすいシンプルなリリースを出し、実証実験元である熊本市長定例会見でも白青社グッドデザイン賞受賞の発表をしていただけた。

受賞の反応

最初は、リリースがそのまま転載されるネット記事(ニュース)が大部分を占めた。

だが、ここから様々な媒体よりご連絡を頂き記事にして頂き、それを見てまた記事になるという連鎖が半年ほど続くことになる。

無人店舗マドカイは、仕組みであり商品にはしていない。これは、誰かが独占するのではなく、地方活性化の一翼を担ってほしいとの思いからオープンソース化を宣言している。従って、何か大きく売り上げに貢献するようなことは無く、受賞により店舗デザインやWebデザインの依頼が爆増するということも無い。

ただし、創業2年目の組織が他者から信用を得るには十二分な効果を発揮する。他県のデザイン事務所や銀行などから、詳しく話を聞きたいという連絡が相次いだのである。それは本当であれば出会えなかった人々が向こうから来てくれたことになる。

受賞の産物

これらの反応により、マドカイをより充実させるための決済ツール「マドカイ決済」の開発に着手することになる。

ところが

マドカイ決済は、当初の目的を逸脱し、どんなWebページにも決済機能を付加するツールとしての開発方針に代わり、システム内を横断した会員機能を持ち、今後のバージョンアップも可能とする新しいWebツールとして開発が続けられローンチに至った。 マドカイ決済のサイト

更に更に

マドカイ決済を使った、半無人店舗コンテンツの計画も進んでいる。

遠隔地での、マドカイを使ったまちづくり計画(銀行や商工会と進める計画)にも参画している。

グッドデザイン賞の副産物は、受賞後1年をかけてじわりじわりと効いてくる。

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