夕暮の路地の雨の中
貴女の踵の折れたハイヒールを見つめ
わたしは薄紫に咲いたのでした
白い少女のときもあったけど
わたしはあのときから貴女の雨を聴くようになりました
悲しい夜の腎臓にしとしと浅緑の雨が降り
憂鬱な朝の子宮にじとじと浅黄色の雨が降り
淋しい胸にひねもすしくしく青褪めた雨が降り
そして わたしは貴女の心の雨になりました
だけど 昨日の貴女は なぜか
知らない人の夕焼け染みついて
今朝は素敵な雨上がりの濃紫
さようなら
お別れに 私の匂い
薬指につけてあげましょう
貴女とのほんの少しのおつき合いの形見です
#詩 #現代詩 #自由詩 #紫陽花