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料理本リレー、私の3冊

好きな本のことを書けるのは嬉しい。それも古い本のことを書いていいなんて、実に嬉しい機会だ。主婦と生活社の料理編集部さん @ryourinohonから始まった #料理本リレ - 、素敵なことをなさいますね。山田友理子さん @zittozittozitto から受け取りました。では、早速。

◇その1
『ソフィア・ローレンのキッチンより愛をこめて』
ソフィア・ローレン著
1974年 サンケイ新聞社出版局

母の本棚にはたくさんの料理本があり、小さい頃からそれらを眺めるのが好きだった。この本はそのうちの一冊、イタリアの大女優ソフィア・ローレンによるレシピ本で、日本発売は昭和49年。母は映画『ひまわり』にいたく感動したらしいので、その影響で買ったのかもしれない。ソフィアが妊娠休養中の無聊なぐさみでまとめた料理ノートがベースとなっているそうで、かなり本格的な内容。レシピはもちろん、折々で挟まれるエッセイがいい。

忘れがたい食の思い出として、第2次大戦中、母親が調達してきたしぼりたての山羊の乳を挙げている。「毎朝、毎夕爆撃の危険にさらされながら生きていた」あの頃に「命を与えてくれた」と。五臓六腑に広がったであろう乳の栄養、その温かみが伝わってくるかのようだった。作中のところどころで、飢えを知っている人の言葉だな、と思わされる。

もちろん、楽しさもいっぱいだ。「もしあなたがマストロヤンニ(当時の大人気俳優)のファンで彼に近づきたいと思うなら、彼の好物であるインゲン豆と豚皮の煮込みをマスターすべきです」なんてイントロのレシピ、素敵だねえ。いつまでも読み飽きない一冊。
今も健在の彼女、きょうは何を食べただろうか。

◇その2
『おもしろいよ、アジアの調味料は』
ハギワラトシコ、平松洋子 著
2000年 マガジンハウス

大学時代、いきなりタイ料理にハマった。ちょっと中毒症状じゃないか、というほどに。現代なら「タイ料理沼の住人」なんて呼ばれただろう。まだ今ほど手軽にタイ料理は食べられず、レトルトやらで買える時代でもなかった。「そうだ、自分で作れるようになればいいじゃないか」と思ったのが、料理にのめり込むひとつのきっかけに。

当時「参考書」的に買い求めた本だが、今も定期的に読んでいる。開くたび、あのころ読んで興奮した気持ちがよみがえる。聞きなれぬ調味料の数々、そしてそれらをなんとも自由に扱う平松さん、ハギワラさんのアイディアにもう…ワクワクした。「あなたはどう使ってる?」「それ面白いね、じゃあこんなのもいいかも」なんてやり取りにも興味津々で。
この後、私はベトナムにもハマり、鈴木珠美さんのレシピ本を熟読して実践したり、詳しい友人に習ったり。ああ、よみがえる我が料理史。

◇その3
『全国から集めた伝統の味 お雑煮100選』
文化庁 編
2005年 女子栄養大学出版部

イタリアやアジアの食に興味をもって、あれこれ食べて飲んでの二十代、三十代。四十代にさしかかるころから、思いは日本へ。各地の郷土料理やローカルフードの面白さ、多様さよ。それらを知り、食べ、現地でお話を集めることが現在の活動の中心となっている。

お雑煮は地域の食嗜好や文化の集大成だ。この本は現地の人々の声、そして実際の写真を集めているところが貴重。プロが作ってスタイリングしていない生々しさと臨場感がある。ごく伝統的なものから、ハイブリッドというか、独自発展してるものまで収録されているのがいい。
郷土料理がどんどん一般的に作られなくなっている今、もっとも作られる郷土料理は雑煮である。どうか継がれていってほしいし、また同時にもっとカジュアルに正月以外にも雑煮が楽しまれてほしいとも願っている。

もうだいぶまわっているようなので、バトンはいったん置かせていただきます。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。


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