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鬼才の読み切り、エクソシズムオーバーナイトフィーバーについて語る①「物語における"出逢い"の重要性」


ご存知だろうか、エクソシズムオーバーナイトフィーバーという作品を。「少年ジャンププラス」の次世代少年漫画賞でなんと大賞を獲った作品であり、作者の雄鶏先生は後に別の作品で連載していた。
(ディアスポレイザー/温井雄鶏)。
こちらももちろん素晴らしいのだが、今回はこの読み切り(エクソシズムオーバーナイトフィーバー)について語らせて欲しい。端的に言うと面白いからみんな読んで。

まずタイトル。タイトルがいいよね。エクソシズムオーバーナイトフィーバー、声に出して読みたい日本語。なんだか陽気そうなタイトルだが、内容はそこまで明るくない。サムネの画像を見ると「なんだこの…明るい…タイの青年?」となるのだが、レオくんはわりかしアンニュイな顔もするし、第一印象で読むと予想が90%くらい裏切られると思う。良い意味で。

おっと失礼、つい君付けをしてしまいました。いやでもね…愛おしいんすよ…まじで……。読み切りでこんなに愛着の湧くキャラ、なかなかいないよ!?ってくらいキャラの魅せ方がうまい。登場人物全員大好き。

話の筋は、アルバイトを掛け持ちしつつ喧嘩代行で夜な夜な金を稼ぐ青年・レオが、一人のエクソシストからある依頼を受ける…というものである。今回はネタバレなしでべらべら喋りますので、とりあえず聞いてつかあさい。

このマンガの良いところを上げるとキリがないのだが、ずば抜けているのが構成力である。最近のジャンププラスの読み切りが長くて60〜80pもあるのに対し、このマンガは50p。割と平均的なページ数ではある。しかしそれを補う程の密度で展開するため、全体的に話が濃い。難点を上げるとすればコマ数が多いため読む人を選ぶところだろうか。それでも読んでほしい。

Twitter2ページマンガが跋扈する昨今においては忌避されるタイプかもしれない。が、だからこそ!一コマ一セリフ漏らさず読んでみてほしい!!我々(勝手に一括りにしてすんません)が忘れかけていた、マンガの持つパワー、熱量を思い出させてくれること請け合いである。

この話は主に青年レオとエクソシスト、メリィの二人で進んでいく。登場人物を最小限に抑えたからこそ、ドラマが際立つ。始めは反発し合いながらも、最終的にはコンビとなりそれぞれが抱える問題に華麗にアンサーを出していく。それらの過程を、とても爽やかかつ濃厚に描いているのだ。
スピード感は抑え目ではあるものの、バイクにはできない、いわばトラックで壁をドーン!破壊!みたいなパワータイプである。丁寧に読めば読むほど、ラストの重みが効いてくる、そんな作品である。

次に画力。次というか、やむなく次にしちゃったけど、画力が一番すごいと思っている。どっちかにできない。いや〜すごい。うまい。画力高い。この密度の濃さは連載作品に受け継がれ、かつコマ割りが大胆になったことでよりパワーアップしているので、気に入った方は「ディアスポレイザー」もぜひ読んでみてほしい。上下巻なのでお求めやすいよ!!!(2024.3.4下巻発売予定)

キャラがいい。2p目のレオくんに惚れない人間はおるんか??私はあれで落ちましたね……。表情の引き出しが多いため、見ていてすごく楽しい。くるくる変わる。コミカルではあるものの作品のぶっ飛んだ設定や暴力要素と掛け合い、独特な味を出している。クセになるんだな〜これが。

回想で過去のエピソードが描かれているものの、読み切りゆえに全ては語られていない。レオの父親はどんな人物だったのか、メリィはいつからエクソシストをしているか、等々。そこらへんを妄想できるのも読み切りの楽しいところである。

二人のキャラデザに差があるので読みやすい。体格差もある。レオくんの方がデカい。筋肉質八重歯属性、おいしすぎる。デザインのクセは『ディアスポレイザー』やそれ以降の読み切り(特に『赤錆森』)のが強いので、画風が好みな人はこちらをオススメする。なお性別が「どっちだ…?」となるようなキャラが多いのでそこらへんのヘキの人にぶっ刺さる。作者の温井雄鶏先生は俺っ娘好きだそうですよ。


だいたいここまで読んで気になった人は今すぐジャンププラスをインストールして下さい。もうちょい語りますんで。

演出もいい。最初の1ページがすごい。うまい。主人公の過去と現在の対比をこんなにもくっきりと、かつ説明臭くなく簡潔に読ませられるなんて。すげえ。

個人的には擬音(オノマトペ)が好き。手描きなのだが種類が豊富。演出のためあえて均一に抑える作品(ヤマシタトモコ/『異国日記』)もあるが、温井先生はいろんなペンで描いてくれてる。字ってその人の性格とか出て良いよね。余談ですが私は字だけで作者を判別できる程の書き文字フェチなんで……。へへ……。全国の書き文字フェチの皆さん、ここですよ!

そして脚本!!ドラマ!!!いや〜〜〜〜〜〜
スーーーッ(呼吸)……………良い!

もうね、何回も読み返したくなる。いや読み返してる。私の好みでもあるのだけれど、人と人が「出逢う」ことによる化学変化がね……癖でして……。

芝居の教本に「すべてのドラマは反応(アクション)の応酬の連続である」みたいなことが書かれていまして。一人で芝居って続かないんですよ。空が曇る。犬が吠える。外界や他者の刺激に反応することによって、はじめて物語は動くんです。

一人だった世界がひっくり返り、影響し合う。それってすごく尊いことなんです。説教臭いかもだけど、誰とも会えない期間を過ごした経験のあるニートの言葉なんで耳を貸してくれい。

どんなマンガにも共通して「他者の必要性」が描かれている。私はそう思う。「エクソシズムオーバーナイトフィーバー」は、そんな他者の尊さを感じさせてくれる作品です。私はこれに影響されて疎遠だった兄と連絡をとりました。


読むと少し元気になり、他人に優しくなれる。ジャンプならではの暴力表現はあるものの、根底には「優しさ」が丁寧に描かれている、
そんな作品です。

ここまでオタクの早口ムダ語りを聞いてくれてありがとうございます。できたらスキしてくれると飛び上がって喜びます。

エクソシズムオーバーナイトフィーバー、ああエクソシズムオーバーナイトフィーバー。
未だに略称分かんないけど!!略せないところに現代作品のアンチテーゼを感じて好き!みんなッッ読んでね〜〜〜!!!


おしまい

「エクソシズムオーバーナイトフィーバー/次世代少年漫画賞 大賞」 #ジャンププラス https://shonenjumpplus.com/red/content/ec169780


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