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老後レス社会

今までフルタイムで働いていた時は、「定年」がゴールで、なんとかそれまでは頑張ろう、と思っていた。

「老後レス社会ー死ぬまで働かないと生活できない時代」(朝日新聞特別取材班 祥伝社)を読んだ。

今までと違って、これからの「定年後」は「何も仕事をしないで、悠々自適に過ごす」などと言う人が少なくなってくるだろう、と思い知らされた。

「私たちの人生から、老後という時間が失われようとしている。」
「高齢化は2040年に35%、60年に40%になる」
「2040年問題:団塊ジュニアが高齢化し、老年人口が最多となる。」
(2040年には、高齢者人口が3900万人台まで増えると推計されている。一方で、現役世代はそれまでに1700万人も減ると見られている。)

そんな中で、「働き盛りの人が自分以外に何人支えなければならないか」と言えば、「2065年には従属人口指数が94.5%まで上がり、一人で一人を支える」ことになる。(肩車型)

これでは支える方がつぶれてしまいかねないだろう。

そこで、「カギとなるのは、高齢者そのもの」ということになる。

実際に、定年後もさまざまな仕事で働く人々は、
「働く場所があるというのは、高齢者にとっては救いです。」
「働く時間だけでなく、気心の知れた仲間や親方と一緒かどうかが、仕事の疲れ具合を決めるんです。」
仕事があることは人間の魂を救う」とも言っている。
人によっては、働きたくなくても、「貯蓄も年金もほとんどなく、働き続けることでしか生活の糧を得られない高齢者」も多い。

一方、「生活資金に不自由しているわけでもないのに、自ら働くことを選んでいる高齢期の人」もいる。
2017年、76歳の時に、市内の特別養護老人ホームに「就職」した鎌田勝治さん。(取材時:78歳)
仕事っていうのは楽しいもんだねえ。人と接して、仲良くするというのがいい。70歳を過ぎて、ようやく気付いたよ。
給与はせいぜい、月に5, 6万円ほどだという。
「50年以上仕事を続け、それが日常となった鎌田さんにとって、何もしない日々はあまりにも物足りなかったのだろう。加えて、自分が必要とされているという実感は何歳になっても大切だ。仕事は確かに、人に役割と居場所を与えてくれる。」
鎌田さんは取材の半年ほど前、精密検査で胃がんが見つかり、進行がんだということを示す「ステージ4」だった。手術はしない。抗がん剤を月に一度投与されており、副作用で体がだるい。
「働いて誰かと話していないと、もう死ぬんじゃないか、とかつまらないことを考えてしまう。いまは医師からも良好だと言われ、元気に働いています。いや、働いているから元気なのかな
(その数日後、体調を崩し入院、取材から数週間後で亡くなった。)
「鎌田さんは亡くなる直前まで、元気に仕事を続けていたことになる。」「働くこと」イコール「生きること」だった。

鎌田さんの生き生きと働く姿を写真で見て、本当に「死ぬまで働く」ことが幸せだと感ずる人もいるのだ、と驚く。

何もしないで悠々自適の時間を幸せと感じる人はそうすればいいし、鎌田さんほどでなくても「働けるうちは働く」ことが幸せと感じる人はそうすればいい。いろいろな選択ができる「老後」があることが、「老後レス」にならない社会なのではないだろうか。

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