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Mさん、ありがとう!

 昨日は今年の7月に入学したばかりのクラスで、とても嬉しいことがあった。
「連体修飾」を学ぶ課で、「都合がいい・悪い」という言葉がでてきた時だった。
「違う予定があります。一緒に行けません」という意味です、ということをパワーポイントなどを使って頑張って説明していたら、一番前の席にいたMさんが大きな円を描いて、「学校で勉強します」の時間と「友だちと映画に行きます」の時間が同じです、という動作と説明をしてくれたのである。
 「そうです!同じなんです」
私は思わず大きな声で言ってしまった。
そうなのだ。わたしは時間の概念でばかり捉えていたのだが、未来ある若い彼らにとって、「都合」は時間だけでなく、別の空間、別の体験をも含んでいるのだ!
 そう思った時、Mさんが全身で表現してくれた「同じです」のことばに、ものすごく奥行きの深い「時間」を感じて、そのことを教えてくれたMさんに思わず「ありがとう!!」と言ってしまった。
 ほかの学生たちは楽しそうに笑っていた。
 もっと後の課で「都合がいい」が詳しく出てくるので、もしかしたら、Mさんの国の先生がそういう教え方をしてくれたのかもしれない。
が、その時彼が全身で表現してくれた姿に私は感動したのだ。
 曲りなりにも日本語教師として何年か外国人留学生と接していて、「(私語ではなく)日本語で自由に話ができる教室がいいな」と思っていた。
 種々な国から集まった1クラス20人の中で、まだ初級レベルの学生が自由に日本語で発言することは難しいかもしれない。日本人も、いくら英語を習っても会話が思うようにできない人が多いと言われている。留学生も同じだと思う。
 「間違ってもいいんですよ。ここは学校ですから」と常々言って、学生たちがなるべく発言しやすいように心がけていた私にとって、Mさんの表現は「このクラスなら、できる」という希望を与えてくれたのかもしれない。

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