見出し画像

東京国立博物館の庭園で、池大雅『楼閣山水図屏風』を鑑賞してみた……もちろんニセモノです

東京国立博物館トーハクの本館の裏手には、大名屋敷にあったような庭園があります。江戸時代にもともとあった、東叡山寛永寺の本坊の庭園も、同じ位置にあったようですが、現在の庭園には往時の面影はほとんど残っていないそうです。

それでも賑やかな上野公園やトーハク各館の中に比べると、自然を感じられるうえに、のんびりとすごせる空間です。

そんなトーハクの庭園には、江戸期の建物が5つ移設されています。その1つが「九条館」と呼ばれる建物です。もと京都御所内にあった公家の九条さんの邸宅の一つだったようです。明治になって、九条さんが東京へ引っ越した際に、一緒に赤坂へ移築。当主の居室として使われていました。

トーハクの庭園に建つ九条館
手前の大きな灯籠とうろうは、京都の四代の清水六兵衛さんが、トーハクへ寄贈したもの。大きく6つのパーツに分かれていて、総重量は1トン超だと言います。デカい!

九条家からは昭和9年(1934)に寄贈されて、トーハクの庭園に移築されました。床張付や襖などには狩野派による『楼閣山水図』が描かれていて、欄間にはカリンの一枚板に藤花菱が透かし彫りされているそうです。

前回、外から覗き見たのが狩野派による『楼閣山水図』なのかもしれません

以前、この九条館の縁側の近くに、与謝蕪村の『山野行楽図屛風』が置かれていました。もちろん複製ですが、いつもは館内でしか見られない作品が、アウトドアで観られる貴重な機会だった気がします。

そして11月15日からは、池大雅の『楼閣山水図』が、同じように九条館の縁側近くに展示されていました(もう終わってしまっているかもしれません)。

相変わらず、わたしはこの『楼閣山水図』の良さは分かりませんが、庭先から覗き見る感じが、なんだか高貴な行ないをしているようで良いです。まぁ博物館や美術館などは、自分にフィットした作品ばかりが展示されているわけでもないので、作品を観て「わぁ〜」っと感動するよりも、「わたしってインテリだよね」って自己満足することの方が重要な気もしてきました(笑)

池大雅『楼閣山水図』(複製)

できれば中に入ってじっくりと観たいところですが……なかなか難しいのでしょうね。縁側で座って眺める……なんてことも人が少ないのでできそうですが、そういうルール違反をすると、今後、こうした展示ができなくなってしまうだろうから、自粛しました。

池大雅『楼閣山水図』(複製)

庭から観ていて思ったのですが、館内で本物を見るよりも距離が遠いなと。意外と細部まで観られないので、気になる部分をスマホで撮影して、それをアップにして観るということをしていました。

わたしが観ている間に、60代後半くらいの夫婦が、散歩で迷い込んできました。屏風の前を通っていくときに、男性の方が「おぉ、池大雅の絵だってさ」と女性に話かけました。すると女性が「えぇ……どうせニセモノでしょ?」と言いながら解説パネルをチラッと見て「ほらやっぱり」と言って、ほとんど立ち止まらずに通り過ぎていきました。

まぁそういう人が大半だよなぁと思いながら、わたしは「本物と高精細な複製って、何が違うんだろう?」って改めて思いました。例えば、ここにある複製を「本物ですよ」と偽って展示しても、ほとんどの人が、その真贋を(この距離では)見分けられないと思います。でも「本物だよ」って言って展示すれば、「これが国宝の『楼閣山水図』なのか!」と感動する人が、「ニセモノだよ」と言って展示した場合よりも多いわけですよね……きっと。そうであれば、本物ともニセモノとも記さずに展示しておけばいいのに……とも思います。だって、感動する人が多い方が良いじゃないですか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?