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ゴールデンカムイの世界を深掘りできる東博16室〜冬のアウトドア編〜

アイヌの人たちは、四季をとおして山野、海、川での狩猟、漁労、植物採取によって営まれました。

前回は、東京国立博物館の16室の展示品から、主にマキリ(小刀)や弓、矢、釣具などの道具を紹介しました。なお、東博16室は、アイヌと琉球の民俗資料が展示されている室です。

今回は、靴や長靴など、冬のアウトドアでの防寒具を紹介していきます。

鮭皮製長靴(樺太アイヌ・19世紀)徳川頼貞氏寄贈
鮭皮製長靴の拡大

東博の鮭皮製の長靴については、パネル等での解説は皆無でした。そこで、ネットで調べてみると「北海道からサハリンおよび一部は本州の東北北部で鮭皮靴 も知られている鮭皮靴は、アイヌ名で チェブ・ケリchep-keriと 呼ばれる冬季の履き物」と、同志社大学歴史資料館の学芸員が記していました

同志社大に所蔵されている鮭皮靴と、東博のそれとが、どれだけ類似しているかは分かりません。ただし、添付資料の図絵を見る限り、似通っていることも多いかと推測できるので、以下に同学芸員の記した資料から抜粋しておきます。

資料によると同志社大所蔵の「鮭革靴」には、素材として鮭皮だけでなくます皮を使用しているようです。

同志社大学 歴史資料館 館報より

名称から知られる様に、この靴はアイヌの人々にとって「神魚」とも呼ばれた鮭の皮によってつく られることが本来の姿であるが、履さやすさや機能性を求めて、底に丈夫な鮭の皮を、甲に比較的 軟らかなアメマスなどの皮を用い、また甲の両側の前半部だけを縫いつける事例のあった

同志社大学 歴史資料館 館報より

同資料は、福岡イト子さんの研究を引用し、どのように鮭皮靴を履いたのかも記していました。まず素足に靴下keri-or-un-pを履き、靴底にはkeri-o-munを敷き、さらに上には木綿地の脚絆hosを巻いたとされます。なお、雪原にでる際には、これに桑の木でつくったかんじきtesma-niをつけたそうです。

東博16室には、鮭皮靴と一緒に履いたと思われる靴下も展示されていました。靴下の素材は、解説パネルによれば「シナ」だそうです。これは、北海道に自生していた植物で、靴下以外にも衣類を作る際に使用していました。

靴下(北海道アイヌ・釧路・19世紀・シナ製)
靴下の拡大
脚絆(北海道アイヌ・19世紀・木綿)徳川頼貞氏寄贈

靴下の上に巻いたという、木綿地の脚絆きゃはん・hosもありました。今で言うとゲーターやゲートルといった感じでしょうか。足袋の上部のような仕組みになっていて、複数の金属の“こはぜ”で留めていたようです。そのほか、下写真の「靴巻」というものも展示されていましたが、調べてみても、用途が分かりません。

靴巻(北海道アイヌ・19世紀・シュロ製)徳川頼貞氏寄贈

桑の木で作ったかは分かりませんが、カンジキも展示されていました。今でいうスノーシューですね。ただし、解説パネルには「鹿の毛皮で作った靴を履き」とあるので、鮭皮靴だけでなく鹿毛皮の靴も冬は活躍していたのでしょう。

カンジキ(北海道アイヌ・19世紀・木製)

かんじきとは雪上を歩くために用いた歩行具です。本例は一木を曲げて、瓢箪形に仕上げており、硬くしまった雪や斜面でも滑りにくくなっています。鹿の毛皮で作った靴をはき、中央のくびれに結んである皮紐で固定しました。

解説パネルより

冬に使われていたと思われるものとして、木綿の頭巾コンチも展示されていました。展示品が日用品としての頭巾コンチだったのかは分かりませんが、後頭部に配した刀剣形の装飾や、テキスタイルを見ると、アイヌの人たちはオシャレだなと思います。

コンチ(頭巾)(北海道アイヌ・19世紀・茶地縞木綿製)

冬以外に使っただろうブドウ蔓で作った靴もあります。

靴(北海道アイヌ・19世紀・ブドウ蔓製)

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