見出し画像

超絶技巧の「根付」コレクション @東京国立博物館/2024年1月上旬

これまで何度かnoteしてきた東京国立博物館(トーハク)の高円宮さんが残してくれた根付コレクションを中心に紹介していきます。前回、根付をnoteしたのが11月中旬。それから展示品は変わっていませんでした。

今回もあまり考えずに良いなと思った根付を撮っているのと、前回、ピンや露出を失敗したものを改めて撮ってきているので、前回noteとかぶっているものがいくつかあります。

なお、現在展示されている高円宮の根付コレクションは、1月21日まで見られます。隣の浮世絵の部屋に展示されている江戸&明治時代の根付については、3月3日までの展示となります。


■昭和時代以降に作られた根付(高円宮コレクション)

いやぁ〜、サッカー男子の日本代表の試合を、ここ最近は欠かさずに見ています。先日のタイ戦で9連勝と、森保ジャパンは連勝記録を更新中。明日、1月9日の練習試合、ヨルダン戦は非公開となるということで残念ですが、アジア杯に向けて弾みとなる戦いになってもらえればと……あとは怪我がなければ良いと思います。

ということで、《八咫烏》の根付を見てきました。なぜ八咫烏? といえば、日本の神話に出てくるカラスですね。神武天皇が東征した時……ということは、近畿の方から関東甲信越へ攻め込んでいたのか? ……なんて、根っからの関東出身のわたしは身構えてしまうのですが……これも諸説はあるものの九州を出発して近畿あたりまで東征したというのが……関西地方の方々からすると遺憾のようですが、有力説と言ってよいようです……と言ってもあくまでも“説”なのでね。

《八咫烏》斎藤保房作・平成14年(2002)

それでなぜ八咫烏がサッカーボールの上に止まっているかといえば、日本サッカー協会(JFA)のエンブレムは、三本足の八咫烏が用いられているからでしょうね。で、この根付が制作された平成14年(2002年)と言えば、日韓共催のワールドカップが開催された年です。そのことに由来するのではないかと思います。

ちなみに、「八咫烏」とは「超デカいカラス」というようなイメージのようです。「八咫」の「咫(あた)」とは、長さの単位を言うそうで、烏のほかにも、三種の神器の「八咫鏡」でも使われる言葉です。「咫(あた)」の具体的な長さについては、諸説の中の1説として、手を広げた時の親指と人差指の長さというのがありますが、そうするとわたしの場合だと「十数センチ」という感じです。となると「八咫」は1mくらいでしょうか。1mのカラスとなると……あまり巨大な感じはしませんね……。

古事記では八咫烏と八咫鏡をそれぞれ「八尺烏」や「八尺鏡」と記しているそうで……一尺は30センチ前後なので、この場合は、2m40cmの烏や鏡ということになるので、かなり巨大な感じがしてきます。

《八咫烏》斎藤保房作・平成14年(2002)

下の《かっぱ》については、撮り直しました。今回は、けっこうビシッとピンがあっている気がします。拡大して見ると、やはりすごく精巧だなぁと改めて感じ入ってしまいました。

《かっぱ》小野里三昧作・平成11年(1999)
《かっぱ》小野里三昧作・平成11年(1999)
《貘喰らい》ガイ・ショー作・平成6年(1994)

ガイ・ショー(Guy Shaw)さんは、イギリス出身の根付師です。オークションのサザビーズやクリスティーズでの紹介文を統合すると、彼の略歴は以下のようになります。

《貘喰らい》ガイ・ショー作・平成6年(1994)

ガイ・ショウ(1951年 – 2003年)は、2003年10月に52歳で亡くなりました。彼は西洋で最も有名な現代の根付彫刻師の一人でした。ショウは興味深い素材の使用と自然環境への魅了で知られています。
ショウはボーンマス美術学校に通い、卒業後、大家であるフランシス・ディンリーのコレクションを通じて根付に触れ、その後彼は根付彫刻の道を歩みました。彼のキャリアの終わりまでに、ショウの作品は数多くの国際的な主要展示会で毎年数回紹介され、日本の高円宮殿下からも称賛を受けました。
彼は自然への深い愛を持っており、その情熱は彼の作品に反映されています。彼の彫刻は、自然、場所、そして時間の視覚的な再現を試み、その中でショウは自らの使命を見出しました。

《ハンプティ・ダンプティ》リン・リチャードソン作・平成10年(1998)

Lynn Richardsonさんは、1942年生まれのアメリカ出身の根付師……という以外の情報は、分かりませんでした。もちろん根付専門誌などを読めば出てくるのでしょうけど……まだネット上には載っていません。

《ハンプティ・ダンプティ》リン・リチャードソン作・平成10年(1998)

駒田柳之さんの《お願い》は、前回、白飛びさせてしまっていたので、再度しっかりと撮ってきました。改めて写真を拡大して見ると……わたしは近眼なので、肉眼だとディテールが全く見えません……精巧な作りですねぇ。この素材が何なのか分かりませんけれど、とても柔らかい雰囲気に仕上げられているのが、その題材の和装の女性とぴったりです。“とろん”とした目の雰囲気とか、やばいですね。

《お願い》駒田柳之作・平成元年(1989)
《お願い》駒田柳之作・平成元年(1989)

下の写真は、松宮雲舟さんの《恋に落ちて》。猫ですよね? 真っ白なので、ピンを合わせるのが難しい……。また、本当はもっと真っ白なのでしょうけど、撮った写真を白く調整すると、凹凸が分かりづらくなってしまい……まぁわたしの腕が悪いからなのですが……やっぱり肉眼で見るのが一番良いですね……と言いつつ、その肉眼でもわたしの場合はボヤケてよく見えないのですが……。もっと展示ケースの手前において欲しいw

《恋に落ちて》松宮雲舟作・平成9年(1997)
《恋に落ちて》松宮雲舟作・平成9年(1997)

下の写真は、東声方さんの《還城楽》。こちらも以前のnoteに載せたのですが、今回は正面ピンだけでなく、鏡に写る背中にもピンを合わせたものを撮ってきました。まぁわたしの自己満足の世界ですね。

《還城楽》東声方作・平成2年(1990)
《還城楽》東声方作・平成2年(1990)

■江戸〜明治時代に作られた根付

以下は浮世絵の部屋にある主に江戸時代の根付です。根付だから高さは大きくても5センチ程度で、たいていは2〜3センチほどです。それなのに、展示ケースのガラスから根付までの距離は30〜50センチくらいで……遠い……。しかもこの部屋の照明は、浮世絵や漆の印籠があるからでしょうが、全体に暗く、ケース内の明かりも本当に暗いです。さらに根付自体も濃い茶色なので、陰影が見えづらい……と、鑑賞するのにも、撮影するのにも悪条件が揃っているんですよね。なので、根付の細部までを堪能するのには、単眼鏡もしくは、それなりの焦点距離のあるレンズが必須です。

《胡蝶夢木彫根付》線刻銘「光谷 光谷(方印)」
江戸時代・19世紀
《福禄寿唐子木彫根付》線刻銘「花春」
江戸時代・19世紀
《猿廻牙彫根付》江戸時代・19世紀
《鬼扇面木彫根付》線刻銘「正之(花押)」
江戸時代・19世紀
《狸腹鼓据文根付》金蒔銘「寿象」
明治時代・19~20世紀
増井光子氏寄贈 H-4651
《石橋木彫彩色根付》線刻銘「杜園」
明治時代・19世紀
上田令吉氏寄贈 H-1016

先日、根付の隣に展示されている印籠を見ている40代くらいの夫婦がいらっしゃいました。びっくりしたのは、スマホのライトで印籠を見ていたこと。「ライトで照らすとよく見えていいねぇ」なんて言っていて、しばらくすると、奥さんがスマホのライトで印籠を照らして、夫の方がスマホのカメラで撮影していました。博物館や美術館でなければ、夫婦が仲良しで微笑ましい情景なのですが……。それは駄目でしょ……と思ったのですが、そうして堂々と違反行為をされる方って、なぜか監視員さんから注意されない印象があります。なんででしょうね……。お前が注意しろよ! と言われるかもしれませんが、そういう方を注意するのって、鉄道カメラマンさんの行為が時々ニュースになりますけど、逆ギレとか怖いじゃないですか。時々、間違えてフラッシュ撮影してしまって「あっ、ごめんなさい」っていう顔をする方を時々見かけますけど……普通は、そういう反応だと思うんですよね。でもその夫婦は、ライトをつけても何とも思わない人たちですからね……。なので、何も言わずにその場を離れました。

というのとはまた別の話ですが、今展示されている展示品の中で、昨年は撮影禁止ではなかったものが、今回は「撮影禁止」になっているものがあり……そんなこともあるんだなぁと思いました。以前、X(Twitter)を見ていたら、トーハクで、いつも撮影禁止になっている国宝の展示品の写真をアップしている方がいて……色んな人に「それは撮影禁止ですよ!」って、複数のコメントが書き込まれていました。写真をアップしていた方は「私が行った時には撮影禁止のマークがなかったんです!」って言い返していましたけど……それを読んだ時には「いや、この作品は、ほぼ常設なうえに、いつも撮影禁止になっているから、そんなわけないよなぁ」と思いました。でも今回、昨年は撮影禁止ではなかったのに……というものがあったので、もしかすると「撮影禁止」マークを付け忘れることがあるのかも……と思い始めています。個人的には、トーハクに置いてあるものは、作品自体の著作権は切れまくっているのだから、撮影禁止とか無しにしてほしいなぁとは思いますけどね……。まぁ色んな事情があるでしょうから……ルールは守りたいものです。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?