約束

むかしむかし、神様がお屋敷に十二の動物を招いて宴を開きました。
神様は動物たちを歓待する代わりに、その忠義を見込んでひとつお願いをしました。
曰く、それぞれの出来ることをもって、他の生き物たちを見守りなさい。
鼠は機を見る俊敏さを
牛は農耕の術を
虎は立ち向かう牙を
兎は子の繁栄を
竜は雨の恵みを
蛇は大地の巡りを
馬は風の守りを
羊は包み込む暖かさを
猿は生きる知恵を
鶏は時の報せを
犬は真摯な眼を
猪は突破する力を
それぞれもってして、ほかの生き物たちを見守りなさい。ただ、共に在って欲しいのだと。
獣たちは喜んで引き受け、ありがとうと神様は微笑みました。
神様は知っていたのです。
いつか、地上の生き物たちが自分の存在を信じなくなる時が来ること。その時神様は、消えてしまうこと。だから十二の獣を神獣とし、見守る役目を与えたのでした。
神様はその後、屋敷の外に居た十三匹目の獣に気付き、手招きしました。
猫でした。神様は鼠の計略も全て知っていて、速度も知恵も公平に図るべく、言わずにいたのでした。
神様は猫を抱き上げると、額を撫でて言いました。曰く、お前にもひとつ頼みがある。
猫は常なる安穏を
「お前がいつも私と共に居てくれるように」
猫は神様の手のひらに額をこすりつけると、行儀よくひとつ鳴きました。

かくして、神様はご自身の予知した通り、下界には身をおくことはなくなりましたが、十二の神獣と、十三匹目の親友がいまもこの地を見守っているのでした。
遠い昔の、約束のお話。

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