ショートショート この世の果てで

*はじめに
このショートショートはフィクションです。
読んで頂き、ありがとうございます。
今回のテーマはホラーにしてみたのですが、
僕は怖い話が苦手なので、ホラーというより
怪奇モノになってしまいました。
爽やかな物語を期待されている方には、
ご期待に沿えず申し訳ありません。

『この世の果てで』

俺は山奥にある泉に来ている。

濁った緑色の泉は霧の中にあって
泉のそばにある小屋はいまにも
崩れそうだ。

なぜこんなところに俺はいるのか
わからない。

俺は山奥にある泉にいた。

どうやってここに来たのか、
覚えていない。

気づくとこの場所に立っていた。
周りには誰もいない。

深い霧に覆われていて
あまり周りが良く見えない。

うっすらと小屋のようなものが
見えて

でも人の気配はしない。

なぜこんなところに俺はいるのか
わからない。

俺は山奥にある泉を見てた。

そしてすぐそばの小屋を見てた。

小屋を覗くと、
真っ暗な闇しか見えない。

そして闇の先には、
俺を招くようにポッカリと
暗い穴が空いている。

ときどき聞こえる
地の底からのうめき声のような音に、
俺はあわてて耳を塞ぐ。

俺はジッと眺めるだけで近づかない。

俺はこの小さな小屋の
出口が分からなくなっていた。

暗い穴の入り口あたりで
ボウっと、白いモノが浮かび上がる。

男なのか、女なのか、わからない。

表情の希薄な青白い顔と、
真っ白な着物が揺れていた。

その青白い口から声がする。

「この部屋からは出られない。
この穴は地獄に行く路。
この部屋はサンズノカワ。
あなたはどうしてここにきた?」

「@¥!^>¥@*@@*<ー」

「そうか、あなたは言葉を失くしたか。
では、それだけのことをしたと
いうことだ。
あなたはいつまでもここにいることは
出来るが、どこにも行く事が出来ない。
わたしとの話も終わりだが、
最後になにか望みはあるか?」

「#$%&’)(====~」

「いいだろう。」

永遠とも、一瞬とも
思える時間が過ぎて、

俺には選べる道などなくて、

仕方なく穴に近づくと、

穴の中から無数の手が現れて、

俺を中に引きずり込んだ。

穴の中は深い深い縦穴で、

うめき声や、
叫び声が、響く中を、

どこまでも、
どこまでも、堕ちてゆく。

終りなどないかのように堕ちてゆく。

堕ちてゆきながら、
俺のからだは、

まとわりつく手のようなものに
引き裂かれ、

何もかも、
食べ尽くされて、

後には何も残らない。

ただ、
俺の右の目だけが、

地の底にころころと、
転がっていた。

俺の望みはこうだ。

『この世界の終わりを
俺の右の目で見させて欲しい。』

それだけを望んだ。

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