ショートショート この世の果てで
*はじめに
このショートショートはフィクションです。
読んで頂き、ありがとうございます。
今回のテーマはホラーにしてみたのですが、
僕は怖い話が苦手なので、ホラーというより
怪奇モノになってしまいました。
爽やかな物語を期待されている方には、
ご期待に沿えず申し訳ありません。
*
『この世の果てで』
俺は山奥にある泉に来ている。
濁った緑色の泉は霧の中にあって
泉のそばにある小屋はいまにも
崩れそうだ。
なぜこんなところに俺はいるのか
わからない。
*
俺は山奥にある泉にいた。
どうやってここに来たのか、
覚えていない。
気づくとこの場所に立っていた。
周りには誰もいない。
深い霧に覆われていて
あまり周りが良く見えない。
うっすらと小屋のようなものが
見えて
でも人の気配はしない。
なぜこんなところに俺はいるのか
わからない。
*
俺は山奥にある泉を見てた。
そしてすぐそばの小屋を見てた。
小屋を覗くと、
真っ暗な闇しか見えない。
そして闇の先には、
俺を招くようにポッカリと
暗い穴が空いている。
ときどき聞こえる
地の底からのうめき声のような音に、
俺はあわてて耳を塞ぐ。
俺はジッと眺めるだけで近づかない。
俺はこの小さな小屋の
出口が分からなくなっていた。
*
暗い穴の入り口あたりで
ボウっと、白いモノが浮かび上がる。
男なのか、女なのか、わからない。
表情の希薄な青白い顔と、
真っ白な着物が揺れていた。
その青白い口から声がする。
「この部屋からは出られない。
この穴は地獄に行く路。
この部屋はサンズノカワ。
あなたはどうしてここにきた?」
「@¥!^>¥@*@@*<ー」
「そうか、あなたは言葉を失くしたか。
では、それだけのことをしたと
いうことだ。
あなたはいつまでもここにいることは
出来るが、どこにも行く事が出来ない。
わたしとの話も終わりだが、
最後になにか望みはあるか?」
「#$%&’)(====~」
「いいだろう。」
*
永遠とも、一瞬とも
思える時間が過ぎて、
俺には選べる道などなくて、
仕方なく穴に近づくと、
穴の中から無数の手が現れて、
俺を中に引きずり込んだ。
穴の中は深い深い縦穴で、
うめき声や、
叫び声が、響く中を、
どこまでも、
どこまでも、堕ちてゆく。
終りなどないかのように堕ちてゆく。
堕ちてゆきながら、
俺のからだは、
まとわりつく手のようなものに
引き裂かれ、
何もかも、
食べ尽くされて、
後には何も残らない。
ただ、
俺の右の目だけが、
地の底にころころと、
転がっていた。
*
俺の望みはこうだ。
『この世界の終わりを
俺の右の目で見させて欲しい。』
それだけを望んだ。
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