ショートショート ロック

僕の街はドラゴンに襲われた。
助けなど、どこからも来なかった。

僕の父はドラゴン退治に参加し、
帰ってこない。

母も食べ物を探しに出掛けて、
やはり帰らない。

僕は一人になってしまった。

そんな僕を助けてくれた人がいた。

礼儀正しく、頬に傷のある、
体の大きい人だ。

その人は僕以外にもたくさんの
子供の面倒を見てるといっていた。

僕たちはその人をロック(岩)
と呼んだ。

けれども、
ロックをこころよく思わない人たちがいて、
僕たちをいつも狙っていた。

ロックが僕たちの食べ物を
調達に出かけたとき、僕たちは襲われた。

僕はそのとき水汲みの当番で、
近くの川に出掛けていたので、
助かった。

でも助かったのは僕一人だ。
他の子は皆連れていかれた。

ロックが帰った時、
僕は混乱してうまく話す事が出来なかった。

ロックは椅子に深く腰掛けて、
しばらく、うなだれていたけど、

一人残った僕が心配そうに見ているのに
気がつくと、

とてもやさしい眼差しで僕を見つめ、
僕を抱きしめてくれた。

一晩中、
ロックは見張りのために起きていた。

そして、翌日荷物をまとめると、
もうここにはいられないと、
僕に告げ、ふたりで旅に出た。

ロックはどこに行くかをいわない。

僕もどこに行くかを尋ねない。

僕はロックがいれば十分だし、
ロックも僕の手をにぎってくれていた。

大きくて、ゴツゴツして、暖かい手。

僕はロックの手が大好きだ。

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