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音楽の祝福の連鎖 〜米津玄師さんについてつらつらと〜

映画「シン・ウルトラマン」の主題歌として作られた「Mハ七」。

米津さんはこの曲について「多義的な何かを含ませて…」と言っていた。
ほんとにいろんな意味にとれるし、どれも正解な気がする。

映画を観て、「Mハ七」はまさにウルトラマンの歌だと思ったし、感動した。
ウルトラマンに感情が入り、エンドロールで曲が流れたときは鳥肌が立ち震えた。


でもやっぱり、繰り返し聴くほどに、私にはこの曲は米津さん自身であるように聴こえるし、米津さんと重ねながら聴いてしまう。


“遥か空の星が ひどく輝いて見えたから 僕は震えながら その光を追いかけた”

星は、子供の頃に聴いた音楽かもしれない。
あのようになりたいと追いかけた。


“割れた鏡の中 いつかの自分を見つめていた 強くなりたかった 何もかもに憧れていた”

やっぱりすぐにこの歌詞が浮かんだ。
“生きられないなって トイレの鏡の前で泣いてた”
(米津玄師「Neighbourhood」)

実際の米津さんとどれだけリンクするのかはわからないが、
絶望感の中で、音楽に憧れ、星を見つめる少年の姿が浮かぶ。


米津さんが「M八七」に、「祝福の連鎖」というものを落とし込みたかったと話していた。(GINZA(WEB))

「子どもの頃の体験が土壌になって、その上に色々な体験が積み重なり、豊かな人間性に発展していく…
祝福を受けて、与えていく、という関係性が人間同士の営みの中には明確にあると思うんです」

祝福…
楽しさを与えてくれること
元気をもらえること
大丈夫だよと言ってもらえること
自分を肯定してくれること
…という感じだろうか。

忘れてしまっていても、残っている。

米津さんもウルトラマンが好きだったらしいと話していた。
ウルトラマンからも祝福を受けてきたと。

川で遊んだ体験もそうかもしれない。

子供の頃に聴いた音楽からも祝福を受けてきたのだろう。

そういうものが重なって人間性ができていくと。


もちろん人間性は、痛みや苦しさからもできていく。

米津さん自身、生きるうえでの苦しみや戸惑いがあったことを語っているが、
わかり合えない、人と繋がれない…苦しさを抱え、深い孤独感や焦燥感に苛まれながら…
それでも前を向いて進めたのは、やはり音楽からの祝福、というのが大きかったのかもしれない。


米津さんは、多大な影響を受けたというBUMP OF CHICKENやRADWIMPSについて、アルバム『Bremen』発売時のインタビューで次のように語っていた。(cakes)

「暗いところをちゃんと見つめた上で明るいところに出ていこうとするような姿勢を感じる」
「ネガティブな部分を見据えた上で、それでも前を向いて生きていかないといけないという姿勢がある…すごく美しいし、…普遍的だなと」

米津さんの音楽と共通したものを感じる。

10代の頃の自分の気持ちを代弁してくれる存在だった彼らの音楽に自分が救われてきたように、そういう存在に自分もなりたいということも話していた。

「脈々とした流れがあって、自分もその流れの中の末端としてここにいるという感じはあります」
「その辺は自覚的に繋げていかなければならないとも思います」

音楽が自分にしてくれたことを、今度は自分が次の世代に音楽で返す…
救いたい、誰かのために音楽を作りたい、肯定したいとも話していた。

音楽を届ける、祝福を与える立場になった米津さん。


「静かな隙間で音楽を聴いていた記憶が今なお自分を定義づけている。音楽がきっと許してくれる。大丈夫、大丈夫、大丈夫。」
(米津玄師ブログ「隙間」)

祝福や痛みの中で考え考え、人との繋がりを探し続け、いろんなものを吸収し築かれた人間性は、
人間の弱さ醜さ儚さ可愛さ…いろんなものをわかったうえで人を愛し、
自分や周りを常に冷静に見渡し、対岸の人をも肯定する…
そんな大きな愛そのものであるようにも感じる。

自分の弱さを見つめ、それを認め、肯定する強さ…
それが優しさになっていくのだろう。

絶望的な感覚と向き合い、自分にしかわからない痛みを人に明け渡さず、メッセージとして歌で届ける。

米津さんの紡ぐ歌詞には、聴く人の心に寄り添う言葉がいっぱい。


音楽という形で私達に愛を届けてくれる、祝福を与え続けてくれる、
そしてそれは若い世代だけでなく、いろんな世代の人に広く届いていると感じる。


“くだらない世界でも「愛おしいよ」と君が言うこの世界がいい ああ それくらいでいい だから届いて欲しい”

“懐かしい音楽が頭のなかを駆け巡る
お前は大丈夫だってそう聴こえたんだ ”

(米津玄師「Nighthawks」)

BUMP OF CHICKENやRADWIMPSへのオマージュとして作られた曲。

彼らは米津さんにとってほんとにとてつもなく大きい存在だったんだろうな…

そして今も変わらずあのときの音楽に祝福されながら進んでるんだろうなあと。

同じ形で祝福を与える側に立つことを望み、選び、強い意志で進んできた米津さん。
想いが繋がり、大きな力になっていく。

音楽の祝福の連鎖…

美しいなぁ…と。


米津さんの道のりと
ここまで来たんだなぁ…という米津さんの気持ちを想像すると胸が熱くなる。


あのとき憧れた大きな星…
音楽を届ける側になり、自身の存在が大きなものになっても、
これからもずっと好きであり続けるんだろうな☆

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