箱森裕美

俳句をつくっています。

箱森裕美

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最近の記事

【俳句連作5句】そのあなた

そのあなた 村すべて蓋をしており夏の雲 知る顔の現れ消える祭かな 熱帯夜サイレン近く遠くなる 夏の霧きみ笑うたび痩せてゆく 向日葵となりカンバスのそのあなた 夏の暁咳ひとつ響きけり 朗読劇『顎門の如き、雲の峰』 二次創作俳句

    • 【俳句14句】満月を撮る

      賢者 満月を撮る指先を静めつつ シャイロック 闇夜汁だからあなたを食べてしまふ 冬林檎やさしい口調まねてみる パイプふと吹けば次々寒牡丹 ムル 銀河どこまでも帽子の内側に うたいたくなるね 寒月飲み込めば ラスティカ 鳥籠のポインセチアをいつくしむ クロエ 刺繍して手袋あなただけのもの ファウスト 冬の雨夢のすべてに色ついて 抱き上げる猫ふうわりとショールごと 落葉追うとき指先のやや踊る リケ 冬ひなたオムレツ甘くしてあげる フィガロ 北吹くや聴診器手であ

      • 【俳句連作20句】果て

        果て きちかうを切れやすき刃と思ひけり 見開きにあふるる曼殊沙華の昼 秋園をなぞりて疎なる竹箒 蛍草半身づつ傘溢れをり 身にしむや線路を挟み草と草 とろろ汁河馬の強さを教へらる 笹鳴や栞代はりに挟む箸 四肢ソファを少しはみ出し雪催 枯芙蓉どの鏡にもあなたかな 鏡餅撫でつつ通話してゐたり 水温む鳥のことばの文字化けす ひこばゆるひとつ離れて小さき墓 伏せて置く電話に春日及びをり 春の雨猫に及ばぬ乳の数 俯いて避ける口づけ鳥雲に 香水の香の混ざり合ふ喧嘩かな 薔薇くづれけりひ

        • 【俳句連作24句】笑う

          笑う うすばかげろうアパートに集う靴 長き名のもの食べている夜の秋 唇が言葉話して月涼し 天井の木目ゆらゆら鉦叩 海面を色なき風の撫でて来る 花野なら笑える跳躍もできる 天の川淡いね ありがとう  明ける 友の気配薄れつつある冬館 冬帽子深く被りて見る夜景 空港の知らない匂い冬あたたか 冬の雷泣きながら怒られている 地吹雪や会話拒んでいて背中 開くのを強く望まれ冬薔薇 高台に見下ろす故郷寒日和 枇杷の花母泣くときに幼くて 冬の浜なにもかもなにもかもなにもかもあふれてカレー

        【俳句連作5句】そのあなた

          【短歌連作5首】新聞ラジオ

          野良猫と原付のあふれる街だ拾い煙草にまた火をつけて 長葱がペンキの空き缶から伸びてみんな折れてる 怒鳴らないでよ 人の死ぬ新聞人の死ぬラジオ鹹豆漿に浸す揚げパン 明日には他人になるのかもしれない君のほくろにピアスを開ける 泳げない海その先の淡い虹同じにおいになりゆくふたり

          【短歌連作5首】新聞ラジオ

          【俳句・短歌・自由詩】生活/排水

          【俳句・三句】 流されて雛体温を失ひぬ 蛭のゐる淀みじつくり乾きけり 真鰯は光の束や切り開く 【短歌・三首】 陽に濡れて女が二人もたれ合う生活福祉一課のベンチ 「ありがとう」と言われ続けた生水を飲んだら春の海ばかやろう Hey Siri 今日は何人救ったの 卵白絶え間なく泡立てる 【自由詩】 おとといの回鍋肉がいつまでもにおい続ける 1LDKで トートバッグをまさぐれば指先にたれ瓶 たれ瓶は魚を模して 仁丹がきしきし詰まっている 市役所の第二庁舎に行く日はいつも下腹部

          【俳句・短歌・自由詩】生活/排水

          【俳句連作30句】かく・きく

          梅一輪落ちて淀みを私す ふらここのよぢれて戻らない鎖 作業着に血液型を書く四月 春はあけぼのボールペンシャープペン 満天星の花等しくは愛されぬ 絵本から羽ばたく音のする午睡 白繭のわづかな重さおそろしく あぢさゐや曲線多き試し書き 野茨が視覚をずらしつつ咲きぬ 北海道と書いて冷蔵庫に入れて 花石榴注射の前の脱脂綿 手の甲のつめたしさうめんと書けば 背泳ぎのはじめ人体畳まれて 日盛りやぽつりぽつりと豚の乳 遠雷や波に鱗の逆らはず 初秋の砂すべり来る滑り台 あふむけにこはれロボ

          【俳句連作30句】かく・きく

          【短歌30首】生きてゆこうね

          生きてゆこうね 太陽の顔に似ている拗ねた頬おいで一緒に映画を見よう 自転車を静かに濡らす雨のようでしたあなたの零す米粒 紙ナプキン丸めて突っ込まれているおそらく牛丼を食べた器 ああそうだよ運動会やりたかったし俺が念じて雨を止ませた 秋の雨長くて起承転結の転いつまでも来ない小説 小間切れにされてちらし寿司の具になる程度には役立ちたかった 学校の図書室の本返すのを忘れたまま今日廃校になる モーキミハドーデモイイ共和国へと亡命したい 泣かずに寝たい 大北海道展で買った食べ物持ち

          【短歌30首】生きてゆこうね

          【俳句連作15句】傾いて点く

          傾いて点く 噴水の果ててこれより夜となる 提灯の傾いて点く夏の暮 ラーメンの伸び膨らむや遠花火 誘蛾灯踊つてゐるときはひとり 蟻地獄ゆくらゆくらと母眠る 町に煙突卓上に香水瓶 秋ちかし始発電車の音だらう ペットボトル外階段に沿ひ溽暑 網戸破れてカーテンの奥にゐて 座したまま西日の国の長となる サンドレス・ショーツ擦れ合ひつつ干され 金魚屋を父だと思ふ午の雨 いちにちを玻璃に触れたる土用かな 置いてゆくものを数へて夏館 枯れぬまま乾いてゐたり水中花

          【俳句連作15句】傾いて点く

          【俳句連作20句】ぐるり

          ぐるり いづこより迷ひ来た麦かと思ふ 野茨が視覚をずらしつつ咲きぬ 蛇動きけり水の中蓮の中 萍の犇めき合ひて微動して 白繭のわづかな重さおそろしく 夏帽子から夏の日の匂ふなり たとふれば夏野に拾ふ首飾り 毛虫焼くゐたかもしれぬ姉のため 硬き草連なりてをり夏の風邪 青葉靴乾いた音を立て止まる 夏雲のいま木を人を追ひ越して 葉を虫は食み進めたり日の盛 ほそく息吐けばつめたき青田かな 緑蔭や平行四辺形に家 ががんぼと呼んでやうやく結像す 土手に日の名

          【俳句連作20句】ぐるり

          【川柳16句】ムーンライト

          ムーンライト サファイヤかアームカバーか選びなさい 寂しさが集まりすぎている岬 メビウスのねばねばとして左の輪 右心房だけが世界と揉めている 骨箱にミートボールのぎっしりと 生意気なコップだ水を入れてやる ハンカチが鳩になるまで待っている 月光に晒されているEM菌 人形がとりのこされる三角州 よくしゃべる車だったね特に朝 モモンガに棲み着かれたるスマートフォン 折り紙の袴をいつまでも愛でる 朧夜に象形文字が立ち上がる 仮想空間にて伸ばすアキレス腱 キャットタワー崩れて地球

          【川柳16句】ムーンライト

          【俳句連作12句】9は夏野に並ぶ

          9は夏野に並ぶ 炎天に刃を薄く薄くせり 蛇交尾みくらき斜塔となつてゐる 旋律の裸に染むや横たへば 蟬蟬蟬 生命線を揺さぶられ 百年後に浴びた朝焼かもしれず 花合歓や心願として弾くピアノ 渇きつつ露台に鳥を数へたる 網戸からいろどり年取らぬ僕ら 峰雲となるまで走らせる車 後の世に会ふほの青きバナナ食み 熱帯夜ぎちぎちと縄照り光る 風濡れる大瑠璃に声聴こえたか イエローモンキーシングル、「DANDAN」リリースおめでとうございます。 『9999』発売のときにつくった連作で

          【俳句連作12句】9は夏野に並ぶ

          【短歌28首】誰だったっけ

          誰だったっけ カーテンの重なる箇所がゆれている再び肉を凍らせねむる 新聞紙ほそくこまかく八月に生まれた君へ降らせる雪だ どうしようミロに注ぐミルクがないわたしはつよい子にはなれない みずたまりみたいに消えた猫がいてでもカメラには写る気がする ピノキオのこれは鼻先あたりだろうキオのあたりは棄てられるだろう 死ぬときに後悔できるように今海へ来ている友達として いつだって君の料理はおいしくて眠気が強 烈にきてし まう ならば聞くけどどうやって忘れたら こっちの平凡まで壊してさ

          【短歌28首】誰だったっけ

          【俳句連作5句】エレクトリックドルフィン

          エレクトリックドルフィン 長き夜水槽の灯の明滅す 水澄んで鉄琴の音空のぼる 三日月の端が紅茶に溶けてゐる 少し遅れて白桃のひかりだす 話しながら眠らう銀河もう落ちる 近藤花ちゃんの新曲「エレクトリックドルフィン」が好きすぎたのでつくりました。 ポップでキュートでくるしい名曲ですーほんとうにー。 音楽をテーマに俳句をつくるのがとっても好きです。 つくるときは、イヤホンをセットして句が出来上がるまでずっと1つの曲をリピートし続けます。

          【俳句連作5句】エレクトリックドルフィン

          【俳句連作50句】塩化ビニル

          塩化ビニル 指は三つ編みを続ける立夏かな 背泳ぎのはじめ人体畳まれて 万緑の中や閉ぢたるリカの口 ソーダ水あやふやに立つ電波塔 目高の群ひるがへりをり糞もまた 誰も右前方を向く揚花火 蛇衣を脱ぐ年表に火の付いて 総身の軟らかくなる劫暑かな 熱帯魚寝てゐるときも目をあけて 塩化ビニル含羞草何度も触れる からだとは白玉何個分のこと 日盛やリカの両脚やや粘る 八月の肉塊串に刺さりけり 初秋の砂すべり来る滑り台 靴一歩動かして立つ秋気かな 天の川名前なければ抱くなにか 柘榴ことの

          【俳句連作50句】塩化ビニル

          【俳句連作10句】みんなゐなくなる

          みんなゐなくなる 花の兄はじめに見つけたのは我 諫言の声うつくしや蝶の昼 青年と翁春星呑ませ合ふ 満身創痍炎帝が噴き出してゐる 風死してふしあはせなからだふたつ 夏雲の話をしてゐた 別の 自白するまで食べさせる葡萄かな 龍潜む淵にひそひそ酒こぼす 手紙から秋思が糸として流る さむいから昔のよびかたで呼べよ 「BL俳句誌 庫内灯3」に、三国志BL俳句として寄稿させていただいた連作です。 三国志はこころのふるさと。誰が、どれ、というのはご想像にお任せいたします。 「庫

          【俳句連作10句】みんなゐなくなる